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メルカリが海外でうまくいかない理由

Why Mercari has tough time in overseas

2019.11.28

Updated by Mayumi Tanimoto on November 28, 2019, 14:07 pm UTC

日本では大人気のメルカリですが、黒字転換する先行きが見えないようで、今後どうなるのかということが最近は話題になっていますね。

最近の赤字は、米国事業が伸び悩んでいること、決済サービスの「メルペイ」事業の投資が理由です。

メルカリは、以前展開していた英国での事業でも巨額の損失を出してうまくいきませんでしたが、アメリカの方もなかなか先行きが見えないようです。

株式評価損14.4億円、メルカリがロンドン子会社を精算

ところで、どうしてメルカリは海外でなかなかうまくいかないのか、ということはあまり議論されていない気がするのですが、これはやはり日本の方々が根本的な問題を実感していないというのがあるのかもしれませんね。

ネットオークションやEコマースは、消費者が物を買う時点ではデジタルでありますが、最終的には物体を配送しなければなりません。

デジタルビジネスではありますが、ビジネスの成功を握るのは実際に人が手を動かして物を運ぶというアナログな部分です。

日本の場合は流通が発達しているので、物を運んでもらうこと、 受け取ることというのが大変容易です。

この流通の「発達」には

  • 送ったものを間違えずに「受付」してもらえること
  • 配達員が途中で逃げないこと
  • 配達員や第三者に物が盗まれないこと
  • 配送してもらうものを預けた店が強盗に襲われないこと
  • 配送車が事故を起こさないこと
  • 配送車が停車している間に物が盗まれないこと
  • 配達した品物を近所の人に預けていても盗まれないこと
  • 品物を物置に置いておいても誰も盗まないこと
  • 宅配ロッカーがこじ開けられないこと

などを含みます。

一体何が書いてあるんだ、と訳が分からない方が多いかもしれませんが、つまりアメリカやイギリスでは、これらがすべてクリアされることを前提にサービスが考えられている、ということを申し上げたいのです。

通販で物を買えば途中で盗まれることも珍しくないのです。

盗まれるのが前提なので、配送されなかった場合のカスタマーサービスが大変効率的にできています。 売る方もそれを承知しているので、すぐに返金してくれて、別の商品を送ってくれたりします。

事故が起きることが前提なので、それが最初から対応の仕組みやコストに入っているわけです。

どうしてこんなに事故が起きるのかというと、配送の管理システムがあまりよくできていなかったり、社会の中の格差があまりにも大きいためちょっとした窃盗が多かったり、配送員自体も教育レベルが様々でマナーが人によって全く違ったり、商品を投げつけたりすることに何も感じない人がかなりいたりする、ということです。

事故が多いこと、信用できないことが前提ですから、ユーザーの方も若干手数料がお得だからといって新しいオークションサービスに乗り換えようといったことはあまり考えません。

ちゃんと商品が届くのか、保障してもらえるのか、ということが分からないからです。

名前がカッコイイからとか、ちょっと安いからといったことでは、乗り換えのインセンティブとしてはかなり弱いわけで、新規参入はとても難しいということです。

だから、アメリカやイギリスの勝者というのは、実は案外保守的なんです。 優先順位の付け方が日本人とは違うからです。

どうしてそういう優先順位の違いが生まれるかというと、結局、社会の仕組みが全く違うからです。

メルカリは、アプリがとても使いやすくてインタフェースも良くて便利なのになかなか広まらなかった、というのは、こういった社会の違いというのが前提にあるわけです。

日本企業でも、自動車産業や家電の会社は海外市場の参入に成功してきたわけですが、メルカリと異なる部分は、そういった企業は規模が大きく、素材の搬入から品質管理、そして生産ライン、お客様に製品を届ける部分まで、これらすべてを自社や現地のパートナーでがっちり管理してきたということです。

ところが、ネットオークションやEコマースのようなビジネスだと、個人事業主の配送者や個人の販売者がサービスを提供することになるので、End to Endでバリューチェーンのすべてを自社でガチガチに管理することができません。 ここが、従来の日本企業のビジネスと全く異なるところです。 不確定要素があまりにも多いわけです。 どんな不確定要素があるかは、やはり現地の事情をよく知っていて、日本人としての視点で比較検討できる人でないと分かりません。

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。