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遠隔型自動運転は経済性だけなく働き方改革など社会的な効果で考えるべきだ──ソリトンシステムズ

2020.01.14

Updated by WirelessWire News編集部 on January 14, 2020, 08:00 am JST

自動運転を実用化するために、遠隔型自動運転が課題解決の手段になるのではないか──。こうした視点から、株式会社ソリトンシステムズ 遊佐 洋氏は、『遠隔運転/遠隔型自動車運転システム-そのセーフティとセキュリティ』というタイトルで講演を行った。東京モーターショー 2019と併催の「東京モーターショーシンポジウム2019」で、「安心・安全なモビリティ社会の実現に向けて」(セキュアIoTプラットフォーム協議会が実施)をテーマとした回の講演である。

遠隔型自動運転は経済性だけなく働き方改革など社会的な効果で考えるべきだ──ソリトンシステムズ

ソリトンシステムズは同社の事業である、「映像コミュニケーション」「ITセキュリティ」「IoT・組み込み」の3つの技術を組み合わせて遠隔型自動運転に取り組んでいる。

「自動運転には、“安全・安心のためにはドライバーが同乗しないといけない”という根本的な課題がある。ならば、自動運転を実現するとき、『乗っていなければいけないドライバー』を車外に置く。すなわち、監視者が遠隔で部屋の中から車の状態を監視し、必要なときに遠隔操作で運転するという解決策が浮上してくる。これがまさに遠隔型自動運転の考え方である」と遊佐氏は説明した。

自動運転車の遠隔監視・操作の課題は遅延時間

すでに国内では無人の遠隔型自動運転車を公道で走らせる実証実験が認められている。日本が世界で先駆けになったガイドラインを制定した成果である。

遠隔型自動運転は経済性だけなく働き方改革など社会的な効果で考えるべきだ──ソリトンシステムズ

警察庁は自動運転車のガイドラインを2019年9月に改定した。最も大きな変更点は、「遠隔運転では遠隔からの操作に対する遅延時間が問題になるため、当面は時速20kmを超えない速度までを対象にする」と規定していることである。その上で重要なのは、「通信の応答が想定した一定の時間を超えた場合には自動的に安全に停止させること」と、「適切なサイバーセキュリティを確保すること」の2点が明言されているところであると説明した。

次いで遊佐氏は、ソリトンシステムズの遠隔運転システムのサービス構成について解説した。遠隔型自動運転車から、情報をセンターに映像などを送り、そこでオペレーターが監視し、必要なときに遠隔のドライバーに切り換える構成である。

遠隔型自動運転は経済性だけなく働き方改革など社会的な効果で考えるべきだ──ソリトンシステムズ

遠隔運転が対象となるのは公道上だけでなく、「閉空間、公道ではない閉じた領域での適用もかなり有望視されている」と遊佐氏。労働環境の大変厳しいところで運転者が作業しなければいけない、例えば空港の地上支援車、あるいは工場敷地内、さらには鉱山、建設地。ここでいちいち人間が鉱山まで出かけて作業するのは大変である。実際、重機を使った遠隔操作についてはソリトンも実証実験に参画している。

4つに集約される遠隔運転システムでの基本的技術要件

遠隔運転システムの技術要件についてそれぞれについて遊佐氏は解説した。「安全操作MMインターフェース」、「高信頼性・機能安全」、「短遅延伝送」、「高セキュリティ」の4つに集約できるという。

遠隔型自動運転は経済性だけなく働き方改革など社会的な効果で考えるべきだ──ソリトンシステムズ

「安全操作MMインターフェース」では、いかに遠隔のモニターに実体に即した映像を表示させ、かつ安全なマンマシン(MM)インターフェースを作るかが非常に重要だという。遠隔のモニターでも安全な視界を確保しなければならないので、死角を消さないといけない。これには画像処理がどうしても必要になる。

「高信頼性・機能安全」では、遠隔のモニターに表示させる映像について、品質はもちろん「絶対に」映像を途切れさせないことが重要だと説く。LTEに代表されるモバイル回線はいつも激しい電波の変動や揺らぎが発生している。そこで同社は3キャリアの回線を同時多重化して利用している。それでもいろいろ揺らぎはあり、帯域が小さくなったときには、自動で圧縮レベルを変える。「とにかく映像を切らないことを優先している」(遊佐氏)。

遊佐氏が最も重要だと指摘したのが「短遅延伝送」である。特に上り映像の超短遅延が重要である。警察庁の旧ガイドラインでは、「規制速度で走行している通常の自動車の停止距離と同等の距離で停止することができる速度以下で走行すること」とされていた。遊佐氏はこれに加えて、カーブ走行における遅延短縮の重要性を強調した。通信にかかる遅延の短縮が安全走行のカギになる。

同社では、既存の映像伝送製品では約800ミリ秒あった遅延を、新製品で約40ミリ秒にまで短縮した。これを車に実装して、現在名古屋と東京との間をLTEで結び遠隔運転の実証実験を進めている。映像だけではなくて、走行中の揺れの情報や、ステアリングの反発力の情報も伝達している。

ただし、遊佐氏によると「他の機器の遅延に問題があるのが現実だ。要となる当社製品(エンコーダー、デコーダー)は40ミリ秒に抑えたが、画像処理エンジンやカメラそのもの、あるいは表示させるモニターにも遅延が大きい機器があったりして、現在は商用LTE利用の下、カメラ光入力からモニター表示までトータルで約200ミリ秒の遅延が生じている。あちこち縮めればLTEを使っても150ミリ秒程度まで短縮可能と想定している」とのことだ。

「トータルで150ミリ秒まで縮められると、時速20kmの場合に150ミリ秒で進む距離が1m以下となり、このあたり安全を確保するための遅延の限界だと思われる。1mを超えてしまうと、特にカーブではかなり危険な状況になると思われるので、150ミリ秒の遅延が想定に入ったことで、遠隔運転が実用段階に入ったといえる」と遊佐氏はアピールする。

遠隔型自動運転は経済性だけなく働き方改革など社会的な効果で考えるべきだ──ソリトンシステムズ

最後の項目の「高セキュリティ」では、3つ系統に分解して考える。(1)上りの映像系、(2)下りの制御系、(3)非常制動系──である。この3つのモデルで脅威分析を行い、そこから想定されるリスクを判定して、深刻度を計算した上で対策を打つ。

「上りの映像系と下りの制御系についての考え方は意外と単純である。認証と暗号化を極力、エンドツーエンドでかければよいが、映像系は遅延への配慮が必要だ」と遊佐氏は説明する。一方で、非常制動系についてはまだ分析が終わっていないのが実情のようだ。

遠隔型自動運転の経済合理性は、働き方改革の効果にあり

ソリトンシステムズでは、4~5年前から遠隔型自動運転の研究をスタートした。「その当時は遠隔運転には誰も取り組んでいなかったこともあり、経済合理性はどこにあるんだと社内ばかりか、社外からもかなり追求された」と遊佐氏は当時を振り返る。

経済合理性を実証するためにソリトンシステムズでは、遠隔型自動運転車に対して遠隔ドライバーの監視台、制御台を何台準備すればよいかを検証した。これによって経済性が判断できると考えたためだ。しかし、「実際は試算した途端に、検証困難であることがわかった」(遊佐氏)ようである。公道走行では前提となっている自動運転車のコストが算出できなかったために、解が出せなかったのだ。

しかし、「遠隔での運転は、経済的な合理性だけを追求するというのではなく、空港や鉱山などで運転手の労働環境を改善したり、労働拘束時間を短縮したりできる効果を考えるべきだ」と遊佐氏は述べる。オーストラリアの大陸の奥深い場所にある鉱山などは、行くだけで丸1日かかる。業務を行った上でまた帰るのに1日かかるのは非常にもったいない。それならば、重機は鉱山に置いておいて、運転手は都会で遠隔から運転する方法がはるかに合理的と考えられる。遠隔運転の導入意義を考えるときに、近視眼的に経済性を測るだけでなく、「より社会的な、例えば真の『働き方改革』実現の手段などと捉えるべきだろう」と遊佐氏は強調して、講演を締めくくった。

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