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グローバル化を無視したEUの地域主義

EU's regionalization ignored reality of globalization

2020.02.28

Updated by Mayumi Tanimoto on February 28, 2020, 22:00 pm JST

前回、前々回の記事(「イギリスの新移民法がテック業界に及ぼす影響」「カナダ人にさえ厳しかったイギリスの移民法」)でもご紹介しましたが、イギリスの旧移民法は、EU国籍保持者は自由に居住も就労もできる半面、非EU国籍者には審査が大変厳しい上に不公平で、テック業界だけではなく、ビジネス全体にとって大変に困った内容でした。

例えば、インドやアメリカ、日本、台湾などにスキルを持った人がいて呼び寄せたくても、EU市民優先で、イギリスの就労許可の審査が厳しいために働いてもらえません。

その代わりにEU出身者を採用せよ、と政府から言われるわけです。

企業の規模や業種によっては、イギリス国籍やEU国籍の従業員を何パーセント以上にしなさいという指導があることもありました。

これは、市場の自由な動きを阻害する共産主義的なやり方であり、イギリスらしい施策ではありませせん。しかし、EUから突っ込みが入ってしまうのでどうしようもありません。

EUから離脱して、イギリスはやっと自由に移民法をいじることができるようになったわけです。

テック業界やデザイン、CGなどの世界は工業製品ではありませんので、同じようなスキルを持った人がどこにでもいるわけではありません。

特にテック業界では、スキルを持った人が全世界で取り合い状態で、EU圏内は人不足なので、採用は簡単な話ではありません。

また日本や中国語圏は、ビジネスを行うにあたって言語や文化的なスキルが重要ですが、EU圏内では該当する人材を探すのは困難です。

プロジェクト管理や調整、マーケティング、またシステム連携などではかなり困ったことになります。私も、実際にそういう現場に何度も遭遇しています。

例えばシステム連携の場合ですが、現地にかなり複雑なシステムやベテランではないと状況が分からないレガシーシステムがあって、 それを新しいシステムと連携したり設計をし直したりする場合、プロジェクトはかなり長期になることもあります。

サポートも必要になるわけですが、 現地の技術者やスタッフとのコミュニケーションには言語スキルが非常に重要です。歴史的な事情の理解や現地語で書かれたドキュメントの理解などのスキルも大変重要になります。

システムの詳細やスペックがドキュメント化されていればまだ良い方で、 関係者を探し出してきてヒアリングしなければならない場合は、言語がネイティブでなければほぼ不可能です。通訳を入れればコストがかかりますし、守秘義務上通訳を入れたくないという現場もあります。

さらに、現地の政府や他の企業との調整についても、やはり現地語ができた方が有利です。

特にアジア太平洋地域は、非常に大きな市場ですが、イギリスの今までの移民法だとそういった業務をこなせる人を雇うことが簡単ではありませんでした。

これは、アジア太平洋だけではなく、新興市場であるブラジルやその他のラテンアメリカ諸国、さらにアフリカなどについても同様です。

ビジネスがグローバル化しているのにもかかわらず、これまでのイギリスの移民法やEUが強制してきた「地域主義」というものは、その流れを無視していたといえるでしょう。

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。