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次世代AIリーダー人材育成のためのAIフロンティアプログラム第二期始動

2020.03.02

Updated by Ryo Shimizu on March 2, 2020, 11:51 am JST


一般社団法人未踏(以下、未踏社団)が主催するAIフロンティアプログラムの第二期募集が開始された。

AIフロンティアプログラムとは、AI領域における未踏スーパークリエイター(天才プログラマー)級の人材を10ヶ月かけて育成し、その結果を踏まえて人材適正を判断し、AIパスファインダーの称号を与える。ものだ。支援期間中は最大300万円までの支援金が得られるほか、産総研の誇る深層学習クラウドABCIの利用なども可能になる。

第一期は全員がAIパスファインダーに認定され、それぞれ専用の称号を与えられた。

筆者は第一期のメンターを拝命したが、物凄く大変だった。自分の体力的にも精神的にも限界まで追い詰められたが、それ以上に四名の育成対象者たちの熱意が凄まじく、僕と同様にメンターを拝命した吉崎航(アスラテック取締役)も彼らの熱意に応えるべく、同じく限界まで追い込まれた。

これはあまりに大変な仕事だということで、二人ではせいぜい四人育成するのがやっとだった。一人でも多かったら無理だったと思う。

第二期からは新たにメンターとして東京大学の暦本純一先生と東京工業大学の中原啓貴先生が加わり、もう少し多くの育成対象者を許容できそうだ。

AIフロンティアプログラムでは、研究の内容が高度であるかどうかよりも、急速にAI化が浸透していく現代において、AIの社会実装のためのリーダーシップをとれる人物であるかを重点的に審査される。

例えば、AIパスファインダー(救命)の称号を与えられた岡田直己氏は、現役の救急救命医であり、AIの専門家ではない。しかし、救急救命の現場の過剰な労働時間と、それに起因するCTの見落としによって7割の患者を救えないという現実を変えるため、一日平均16時間勤務という激務のさなか、実際にCTを人間よりも早く正確に読むAIを開発した情熱が評価された。

同様に、AIパスファインダー(共創)の称号を与えられた筑波大学の大曽根宏幸氏は、GPT-2というアルゴリズムに全く手を入れず、クラウドソーシングを使って日本語版Wikipediaの6倍規模という、世界最大規模の日本語データを大量に収集して独創的な方法でと訓練することにより、あらすじ生成や執筆支援といった新しい領域を切り開いたことが評価された。あらすじ生成エンジンは現在、Twitterボットの「ひびのべる」として活躍中である。これについては別途考察したいことがあるので稿を改めて紹介したい。

他にも、AIパスファインダー(共働)を与えられた長岡技術科学大学の片岡翔太郎氏は、工場などの現場で実際に必要になる作業工程分析の自動化を実現し、AIパスファインダー(創造)を与えられた電気通信大学の藤元陸氏はAI自身に想像力と創造性をもたせることによって、人間が想像できない新しい道具を発明できることを証明した。

通常の大学などの評価軸では、AIの専門家ではない岡田氏や大曽根氏を評価する仕組みがない。しかし彼らの情熱は間違いなくAIの発展にとって必要不可欠なものであり、こうした、専門外であってもAIによって具体的な社会課題を解決したいという情熱を持った人材をより多く育成することが、国益に叶うと信じて一年間頑張ってきた。

称号の認定は公正中立な審査委員会での合意のもと決定されるので、我々メンターだけがいくら努力しても勝ち取ることはできない。四人の熱意と努力の賜物によってそれぞれが勝ち取った結果であると解釈している。

前期の反省としては、PM、およびメンターが多忙すぎて合宿などの開催が最後の最後になってしまった。合宿を経たあとの四人の成長ぶりは目を見張るものがあり、合宿がこうした人材育成に対して非常に効果的であるということを思い知らされた。

したがって、第二期では、育成対象者が決定したできるだけ早い段階で合宿を実施し、早期から育成対象者にこのプログラムへ参加することの意識あわせを図るようにしていきたい。

また、合宿以降に関しては、やはり全国に散らばる育成対象者との面談や会議を実施するのにZoomが役立った。

第二期AIフロンティアプログラムでは、募集対象年齢が40歳以下まで引き上げられた。これは、岡田氏の例を鑑み、AIの専門家ではなくとも他分野の専門家で、なおかつAIによって社会課題を解決する情熱を持った人物をも対象とするためである。

第二期の募集は3月末日17時まで。
https://www.mitou.org/projects/ai_frontier/index_2nd.html

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清水 亮(しみず・りょう)

新潟県長岡市生まれ。プログラマーとして世界を放浪した末、 '17年にソニーCSLとWiL LLC.とともにギリア株式会社を設立し、「ヒトとAIの共生環境」の構築に情熱を捧げる。 '17年より東京大学先端科学技術研究センター客員研究員を兼務。著書として「教養としてのプログラミング入門(中央公論社)」「よくわかる人工知能 (KADOKAWA)」「プログラミングバカ一代(晶文社)」など。

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