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コロナ追跡アプリで考える政府とテック企業の関係

Relation of tech companies and government over Covit

2020.06.26

Updated by Mayumi Tanimoto on June 26, 2020, 07:00 am JST

イギリス政府がコロナ追跡アプリの自国開発を諦めて、AppleとGoogleのアプリを導入することになった件が大きな話題になっているわけですが、イギリスに先駆けて他の国でも導入を進めているところが増えてきています。

最初に導入を決めたのは、実はプライバシー保護や国民の権利保護などに大変敏感なスイスでした。これは非常に注目するべきことではないかと思います。

特にスイスは、イタリア系、フランス系、 ドイツ系、 その他にも様々な人々が住むところではありますが、文化的には欧州大陸系でかなり保守的な面があります。

市場経済主義を好むイギリスとはかなり違い、大きな政府による厳しい規制を好む傾向があります。

企業は政府により規制されて市場が正しく機能するべき、という考えの人が多いのです。

ですから、市場主義経済を好むイギリスに比べると様々な規制が細かく、普段の生活でもイギリスではあまり考えられないような罰則があったりします。街の様子も、イギリスに比べるとなんとなくギスギスした感じです。

人々もかなり保守的ですし、イギリスやアメリカに比べるとオープンとは言い難い気質です。移民に対しても非常に厳しく、市民権の取得は欧州でも最も厳しい国のひとつです。

こういった気質の国でありますから、特定の民間企業が一般市民の情報を大きく把握してコントロールするようなことを嫌います。

ところが、そんな気質の国が欧州では最も早くAppleとGoogleが開発したAPIベースの追跡アプリを導入し、分散型の方式を採用したというのは非常に興味深い点です。

スイスには大手テック企業の開発拠点もあることでも知られており、実はGoogle Mapの開発でも重要な役割を果たしたエンジニアが住んでいたりするのですが、規制を行う一方で非常に現実的なところがあります。自国政府では効果的なアプリの開発は難しいので、AppleとGoogleの方式に沿うべきだといち早く決断したということです。

このようなスイスの決断というのは、大きな国家を信条とする欧州各国の非常に頑固な国でさえも転換期に直面している、ということの象徴でしょう。

つまり、情報化社会において政府の力というのはより弱くなっており、民間企業の活力に頼らざる得ないわけです。政府は、企業に規制の力を及ぼす存在ではなく、ともに協業していくパートナーであるということです。

このような関係性の変化は、テック企業に対する規制だけではなく、租税などに関しても大きな影響を及ぼしていくでしょう。つまり、これまで強硬姿勢だったフランスやドイツの態度も軟化していく可能性が高い、ということです。

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。