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東京と静岡県東部6地点を結んだオンラインイベントで見えた「移住」の形

2020.07.30

Updated by Toshimasa TANABE on July 30, 2020, 13:32 pm JST

御殿場駅前には、2012年に閉館した映画館「マウント劇場」がある。ここは今、宿泊施設として生まれ変わろうとしている。将来は、映画館としての機能も復活させ、泊まって映画が観られる宿とする計画だ。

7月29日夜、東京大手町と静岡県東部の6カ所をZoomで結んだオンラインイベント「多拠点で働く新しいスタイル -静岡編- 地方と都市の関係を考え直す」が開催された。大手町の神田主税氏(3×3LabFuture)のコーディネートで、三島、沼津、熱海、伊豆、裾野、そして御殿場の6カ所がオンラインで結ばれた。この他に個人での参加者も、定員とされていた50名を超えていた。

参加した静岡県東部の6施設は下記の通り。御殿場の会場となったマンテンゲストハウスが、冒頭で触れた映画館をリノベーション中の宿泊施設である。

御殿場マンテンゲストハウス(Instagram)
裾野南富士山シティ
みしま未来研究所
熱海AtamiStayle
伊豆市ドットツリープロジェクト
沼津AntiqueDoor

マンテンゲストハウスでは、映画のスクリーンにZoomの画面を投影し、映画館の2階客席から参加する、という形態となった。御殿場市、裾野市、三島市、沼津市の後援を受けていることもあって、御殿場市企画部未来プロジェクト課からも担当者が出席されていた。

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イベントでは、まず、参加6地域から自己紹介とどんな活動をしているかについてのプレゼンテーションがあった。キーワードとしては、地域の未来、未来を担う人材、静岡県東部への移住とその支援、コワーキングスペース、イベント、副業、ワーケーション、東京との関係性などである。

その後、オンライン上で地域やテーマ性に応じたグループに分かれての討論とQ&A、最後に各グループでどんな話があったかを紹介し、全体での質疑応答を経て終了した。

静岡県東部の主だった地域で、それぞれがユニークな試みを実行していること、地域の将来を真剣に考えていることなどが伝わってくるとともに、人それぞれにとっての移住や東京との関係性といったことについて深く考えさせてくれる良質なイベントであった。

私は、札幌で育ち、東京、横浜で約30年過ごし、御殿場に引っ越して6年になるが、実は「移住した」という感覚はない。富士山麓で飲食店を始めるために御殿場に引っ越してきて、Webの仕事にはそれまで同様にほとんどをリモートで対応し、たまに東京に出張する、という生活を続けている(3月以降、コロナ禍で出張が無くなったため、コスト的にも時間的にも却って楽になった)。

私のような人間の場合、多拠点よりむしろ無拠点ではないかとさえ感じている。その時の仕事に便利なテンポラリーな拠点はあっても、人生は無拠点、不動産や出身地に縛られたくはない、という感覚である。地震や洪水などの自然災害のリスクもあるし、所有よりもその時々に好都合な場所を利用する方が快適だと感じられるのだ。拠点というものについての「プランB」ともいえるだろうか。

どうすれば自分が快適でいられるかを常に考えて、それに向けて動き続けること、プランBを考え続けることが「今日的な移住」あるいは「移住 プランB」なのではなかろうか。そしてそれは、人によってさまざまな形があるだろう、というようなことを今回のイベントを通じて考えさせられた。ちなみに静岡県東部は、熱海と三島には新幹線が停まるし東名高速や高速バスでのアクセスも良いため、東京からの距離感が比較的近いところである。コロナ禍も相まって、首都圏からこの地域への転居や移住を検討する人は増えているという。

御殿場のマンテンゲストハウスは、リノベーションの真っ最中である。早ければ8月中にも宿泊が可能になるようだ。先に紹介したInstagramで進捗が報告されるはずだ。Instagramの投稿を見ると分かるが、パーソナルスペースを重視した簡易な宿泊施設である。

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クラウドファンディングでの資金調達、映画館を宿泊施設にするための消防や保健所方面の基準のクリアなどをこなしつつ、オーナーの勝呂恒介氏(上の写真は今回のイベントでプレゼンする様子)がDIYでリノベーションに取り組んでいる。クラウドファンディングを実施した際に、私が運営しているサイトでこんなエントリを公開しているので参考までに(表記はマンテンが最新である)。

「万転ゲストハウス」が御殿場駅前に誕生します!

「映画が好きだから、御殿場に映画館を残したい。そのためにはどうすれば良いかを考えて、宿泊施設としても活用することにした」という勝呂氏の自分がやりたいことだから頑張る、という姿勢にとても共感する。

なお、マンテンのすぐ近くにコワーキングスペースを作るという、まったく別の計画もあるようだ。上手く両施設を使えば、仕事をしながら御殿場に滞在して、映画を観つつ、富士山や御殿場とその周辺の美味しいものなどを楽しむ、といった使い方ができるようになるだろう。映画が好きだという個人の情熱が、そんな形で地域に変化や相乗効果を及ぼしていくとすれば、それこそが「まちづくり」といえるであろう。

 

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田邊 俊雅(たなべ・としまさ)

北海道札幌市出身。システムエンジニア、IT分野の専門雑誌編集、Webメディア編集・運営、読者コミュニティの運営などを経験後、2006年にWebを主な事業ドメインとする「有限会社ハイブリッドメディア・ラボ」を設立。2014年、新規事業として富士山麓で「cafe TRAIL」を開店。2019年の閉店後も、師と仰ぐインド人シェフのアドバイスを受けながら、日本の食材を生かしたインドカレーを研究している。