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ZOOM時代の説得力は撮影環境に比例する

2020.07.31

Updated by Ryo Shimizu on July 31, 2020, 11:19 am JST

もはやZOOMで会議するのが当たり前になった。
「クリーニング屋に行かなくなったな」と思った。もともとスーツを着ることは滅多になかったが、大事な会議の時にワイシャツと上着だけ着たくらいでは、毎回クリーニングに出すほどでもない。

こうなると、選挙におけるポスターと同程度に重要なのがカメラと撮影環境である。
正直、最初は嬉々として撮影機材を揃えている同輩たちに「また散財の口実を見つけたか」といささか冷ややかな目線を送っていたのだが、実際に見てみると、「これはもう服を着ないのと同じくらいにはまずいことになりそうだ」と考えを改めた。

なぜスーツを着るのか。
スーツが苦手な自分が、敢えてここ一番の時にスーツを着る理由は「説得力を増すため」である。

基本的にスーツは仕立てている。筋トレして体格が変わったのが主な理由だが、スーツを仕立てることで求めているのはやはり説得力である。

「この人は特別な人なんだ」という説得力を増すために、鼻毛を抜いて髭を剃り、頭を整え、特別にしつらえたスーツを着るのだ。

ちなみにオーダースーツは生地にこだわらなければそんなに高くない。6万円くらいからでも十分立派なスーツが作れる。僕はスーツは消耗品だと割り切っているのでここにお金をかけない。滅多に着ない僕にとってスーツに求めるのは生地が丈夫であることではなくシルエットが自分に合っていることだ。

それと同じように、ZOOMにおいては画面の明るさ、表情の精緻さが益々求められる。情報(information)ではない非情報を、ノーレットランダーシュはexformationと呼ぶが、まさに画質をあげていくということは、exformationを高めていくことに直結する。

ZOOMでは、通常の会議よりも顔が極端に小さいか極端に大きく表示される。
しかしだいたいは、資料を共有するなどしている時は顔が極端に小さく表示され、ボディランゲージが伝わりにくい。

20世紀までのリーダーは自らリスクをとる人のことだった。つまり戦争に命がけで挑む軍人や資本家がリーダーであり、資本家がリスクをとって事業を拡大していった。21世紀のリーダーは説得する人である。ジョブズもザッカーバーグも、自分の手金だけでは足りないから、資本家を説得して資金を調達して世界最大の企業を作った。したがって21世紀のビジネススキルとして説得力を持つことほど重要なことはない。

説得力を増すために投資するのは非常に重要であり、理にかなっている。
そこでもともと一枚しか持っていなかったスタンド付きのグリーンバックをもう一枚買い足した。
ものすごく邪魔である。

ZOOMのバーチャル背景を使うと、輪郭がはっきりしなくなる。輪郭がはっきりしないと、説得力が低下する。

カメラも説得力を増すために、α7IIIからGH5Sに変更。レンズはLaowa 7.5mm/F2.0単焦点レンズ。光源を焚いて明るくすることでF4.0程度まで絞って被写界深度を深くし、exformationを伝えることに特化する。

配信ソフトにはmmhmmを使用。MacにはI/OデータのUVCコンバータ経由で入力する。

昼間は自然光を取り入れて光量アップし、ワンポイントでスポットライトを使う。

その結果はどうなるか。

これが普段着で光源も特に気を使わず、MacBookProの内蔵カメラで撮影した画像。
こんな人になにかを訴えられても、浪人生が実家の両親に生活費を無心しているように見えてしまう。

顔しか映らず、ジェスチャーが伝わらない

背景は動画。これはこれで顔が怖いが、格段に説得力が増す。こんな画質で叱られたら生身で怒られるより10倍くらい怖いはずだ。

重要なのは固定焦点の広角レンズを使ったことで腕まで写っていることで、こうすることで初めてノンバーバルなコミュニケーションが併用できる。ボディランゲージの重要性はこれから益々増してくるだろう。

スーツを着て動画を背景にすると「ちゃんとして見える」のは、ニュース番組などと同じフォーマットになるため。mmhmmが説得力があるのも、ニュース番組の形式を踏襲しているからだ。

スライドの横で腕を組むだけで、なにかものすごく深いことを考えているように見える。実際には昼ご飯を味噌ラーメンにするか生姜醤油ラーメンにするか考えているようには到底見えない。

さらにmmhmmでは、自分がスライドの中に入り込んでしゃべるような、テレビでしかみたことがないような効果を簡単に出すことができる。

これも説得力を増す効果を持っている。

このように、リモート時代には、説得力を増すために必要な設備投資は、自動車やスーツではなく、配信環境なのだ。当然、回線はnuro光にしている。今はまだ以降期だが、いずれデフォルトのカメラで細い回線だとだらしなく見える時代が確実にやってくる。

mmhmmもいいが、きっともっといい配信ツールもどんどん出てくるだろう。ビデオスイッチャーやVJ機材もいろいろ使いでがありそうだ。

こんな時代だからこそ、敢えて新しくできることを考えるというのは実にワクワクする。

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清水 亮(しみず・りょう)

新潟県長岡市生まれ。プログラマーとして世界を放浪した末、 '17年にソニーCSLとWiL LLC.とともにギリア株式会社を設立し、「ヒトとAIの共生環境」の構築に情熱を捧げる。 '17年より東京大学先端科学技術研究センター客員研究員を兼務。著書として「教養としてのプログラミング入門(中央公論社)」「よくわかる人工知能 (KADOKAWA)」「プログラミングバカ一代(晶文社)」など。

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