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ネットのノイズの多さをビジネスチャンスに変える

Noise of Internet is a new business opportunity

2020.08.21

Updated by Mayumi Tanimoto on August 21, 2020, 12:29 pm JST

前回の記事では、イギリスではソーシャルメディアがニュースソースとしてユーザーの信頼を失いつつあり、伝統的なメディアの価値が高まってきているというイギリス通信庁(Ofcom)の最新調査を紹介しました。

この調査結果は、在宅勤務の人や自宅学習の生徒が激増し、家でインターネットを使う人が増えていることからすると、意外な結果という印象もあるものの、それだけ人々がソーシャルメディアをはじめとするインターネット上の情報について、そのノイズの多さや選択の難しさに不満を抱いているということを示しています。

しかし、これを裏返してみると、大きなビジネスチャンスにつながるということもいえるでしょう。

多くのユーザーが、質の低い情報が蔓延していることにイライラしているということは、質が高く信頼するに値するコンテンツを提供すれば、多くの人々の期待に応えることができる、ということです。ネット上の「シグナル&ノイズ」問題は、ここ5年ほど特に問題になっていたわけですが、コロナで命に関わる情報を多くの人が求めている状況で、それがはっきりと可視化されたのです。

数年前からアメリカやイギリスでは、有償でニュースレターを配信するジャーナリストや専門家の個人メディアが人気になってきており、ソーシャルメディアの時代にも関わらずメルマガが人気だったりするのですが、これも情報の質の高さと信頼できる情報を買う、お金を払ってノイズを避けるという動きです。

企業が販促のために提供するブログやソーシャルメディア上のコンテンツなどについても、全く同じことがいえます。無償であっても、質の高いコンテンツを提供することができれば、顧客のスティッキネスを高めることが可能となり、他社との大きな違いを打ち出すことができます。

それだけ、質の高い情報をに飢えているお客様が大勢いるということですから。そしてこれは、コンテンツに限らず物理的な商品に関しても同じことでしょう。

コロナ禍でネットを介して通販を使う方が増えているわけですが、やはりここでも、商品の選び方と信頼性がネックになってしまいます。メディアで紹介された商品はタイアップ企画であったり、品質が良くない場合もあります。インフルエンサーによる紹介も、どの程度まで信頼できるのかがいまいち分かりません。

以前、New York Timesは、ステマなしの商品レビューを提供する「Wirecutter」を買収しましたが、非常に先見性のある動きであったといえるでしょう。ウィズコロナで通販を利用して物を購入する人が増えると、こういった信憑性の高いレビューを実施する企業や個人の需要が高まるはずです。

コンテンツにしろ商品にしろ、今後はますます有償でメンバーを囲い込むビジネスが伸びていくでしょう。

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。