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コロナ ワクチン 注射 イメージ

「目的」と「手段」を取り違えている日本のマスコミ

Japanese media does not understand the purpose of the Covit booking site

2021.05.21

Updated by Mayumi Tanimoto on May 21, 2021, 13:39 pm JST

防衛省が開設した新型コロナウイルスワクチンの大規模接種会場向け予約サイトが、架空の番号などで予約できてしまう件が新聞や雑誌などで報道され話題になっています。

取材目的であっても、架空情報の入力で予約を取ったり、大量にデータを送信してシステムの稼働を邪魔した場合は、偽計業務妨害罪(刑法233条)もしくは電子計算機損壊等業務妨害罪(刑法234条の2)に問われる場合があるわけですが、それ以前に、報道したメディアにしろ、報道を支持した有識者にしろ、今、何をしなければならないかという「目的」を全く理解していません。

今、とにかくやらなければいけないことは、ワクチン接種の数を増やすことであって、システムの正確性の追求ではありません。

今は、正直言って戦時です。

そもそも、元々担当ではなかった自衛隊が短期間で作ったシステムで、時間もリソースも限られています。接種券の予約番号とのすり合わせができていないのも仕方がなく、これは設計側もどう考えても織り込み済みでしょう。スピード重視なので、いちいち読み合わせしていたら間に合いません。

さらに、会場で接種券を提示して接種を受けるようになっているわけで、最終確認は物理的に行うのです。架空の番号で予約しても、ワクチン接種は受けられないわけです。

システムに瑕疵があっても、「ワクチン接種」という目的は達成できるわけで、問題ないでしょう。

しかも、報道したメディアは、脆弱性を事細かく説明してしまっているので、模倣犯が出ているわけですから、思いっきり公益に反しているわけです。

この件を批判している人は、日本のシステム開発の典型的な失敗を体現しています。システムの細部や正確性にばかりこだわり、結局「一体何をシステムで達成したいか」ということが分かっていないわけです。

手段と目的が反対になってしまっているのです。

これは、日本のシステムを見ていると本当によくあることで、例えばインタフェースが複雑になり過ぎていたり、 業務用システムを使うのに数十ページにも及ぶ紙のマニュアルを読んで入力方法などを理解しなければいけなかったりします。 目的と手段が反対になっていることが本当に多いんですよ。これ、凄く日本人的です。

今は、とにかくワクチンを接種しなければいけないので、このシステムのエラーがなぜ起こったかとか、設計がけしからんなどということを議論している暇はないはずです。こういう有事の際に、各国の国民性が明らかになりますね。

因みに、1日に80万人接種しているイギリスも、政府のコロナ追跡アプリは思いっきり失敗していたりしますが、事情が事情だけにマスコミもほとんど取り上げていません。この辺は、やはり大人だなあという気がします。まあ、コロナ収束の邪魔をしたら、最終的に国民からボコボコに叩かれますからね。マスコミも、そこはよく分かっています。

日本のマスコミの諸氏には、もうちょっと大人になっていただき、広い視野を持ってほしいものですね。

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。