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オリンピック開催議論から分かる日本の科学思考のなさ

Olympic discussions reveal Japan lacks scientific thinking

2021.06.21

Updated by Mayumi Tanimoto on June 21, 2021, 12:11 pm JST

日本では、オリンピックを開催するかどうかということで大議論が起きているわけですが、オリンピックで大騒ぎしているのは、日本だけなんですよ、はっきり言って。

イギリスでは、そもそもオリンピック自体が報酬の面では全く注目されないイベントで、競歩や重量挙げのようなマイナーな競技に至っては存在すら知らないという程度の人が多く、サッカーの「UEFA EURO 2020」の方が一万倍盛り上がっています。

このような盛り上がり方は、日本では全然報道されておりませんね。

ロンドンオリンピックのときも、地元民にはほとんど見に行く人はおらず、オリンピックを理由に海外に遊びに行ってしまう人がたくさんいたため、ロンドンの街中は今日のコロナ禍以上にガラガラという状況でありました。

しかしまあ、そんなコロナ禍でも、イギリスではコンサートを開催したり入場者数を制限してスポーツイベントをやったりしているわけですが、いきなり開催したわけではありません。まず、トライアルになるイベントを何回か開催して、そこにサンプルとしてワクチン接種済みの人や未接種の人を入れて、感染実績のデータを収集をし、科学的に分析をした上でやっているわけです。

科学的にこういう結果になったから、という裏付けの下で開催するかしないかということを決めるので感情的な議論とは無縁です。この辺は非常に実証主義で、データ主体のイギリス的な冷静な思考が感じられますね。

もっとも、サンプルになる人が逃げられない状況の国立病院の医療従事者などですから、非常にイギリス的なやり方であるなぁと感じたわけですが。

ワクチンの接種の優先順に関しても、国民の医療データを基に統計解析をして機械的に決めていました。この辺はまったくブレることがありません。

普段のシステム開発運用に関してもDXに関しても、イギリスの場合はまずは戦略を立てて、やるべきかやらざるべきかということを半年くらいかけて検討します。収集したデータを基にしてコストベネフィットがある場合は実行します。

裏付けとなるデータがないと、株主や投資家などにボコボコにされますので、数字で説明できる証拠が必要なのです。データを集めるために結構なコストをかけます。

そういう証拠を収集したりするのも、私の仕事のひとつなのであります。

しかし、こういうデータ 主義は、日本では主流ではありません。議論の多くが感情論で、エイヤで決めることが多いのです。実は我が国ってのは「ロジカル」じゃないんですよね。

外の人が指摘しないと気が付かないことが多いんですけれども、 日本人は割と感情的で情緒で重要なことを決めている場合が多いものです。

これは、オリンピックやコロナ対策に限った話ではなく、DXでも全く同じなのです。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。