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コロナ禍で必要性を実感したDX、元に戻さないためのポイントとは--BIT VALLEY 2021 #04

2021.10.15

Updated by Naohisa Iwamoto on October 15, 2021, 12:00 pm JST

DXで何が起きているか?現在のリアルな姿とはどのようなものか--。「BIT VALLEY 2021 #04 Power of Digital」 のセッションで、DXを実践する団体や企業から実際の声が聞こえてきた。BIT VALLEY 2021は、ミクシィ、サイバーエージェント、ディー・エヌ・エー、GMOインターネットという渋谷の4社のIT企業が共同で主催する全7回のオンラインカンファレンスで、今回が第4回目となる。

パネリストとして登壇したのは、渋谷区役所 経営企画部 副参事 スマートシティ推進担当課長の加藤 茜氏、ヤフー データソリューション事業本部 パブリックエンゲージメント部 部長の大屋 誠氏、東急 デジタルプラットフォーム 課長の乗松康行氏の3氏。モデレーターはサイバーエージェント 渉外室ゼネラルマネージャーの松尾 勉氏が務めた。

これまで進まなかったDXがコロナ禍でなぜ叫ばれるのか

まず、DXがコロナ禍で急速に進んでいる理由を尋ねた。渋谷区の加藤氏は、「差し迫った必要性がみんなに平等にやってきたことが理由として大きいのではないか。それまでは物理的に出勤できない人というのは子育てや介護などに関わる一部の人だったけれど、みんなが出勤できなくなった」と状況を分析する。実際にDXの広がりとしては、「コロナ禍前には人流データは(役所では使うことはなく)最先端のマーケティングという印象だったが、今では役所でも毎週のように人流動向を分析するようになり、最先端のデータを使う機会ができた」と説明する。

東急の乗松氏は、「例えば東急百貨店が休業要請されて、お店が開けなくなった。こんな形で商売ができなくなるとは想像もしていなかった。これまでと同じではいけないという意識が芽生えた。実際、以前はオフラインで商売している人は、ネット部門とバーサス感があった。しかしコロナ禍により、そのような対決感がくだらないと感じられるぐらいネット販売が社会全体で当たり前で必要なものになった」と語る。

ヤフーの大屋氏も「これほどまでにたくさんの人が仕事や生活で変化を迫られたことは、なかなかない」と前置きしながら、「コンサルティングは通常は課題をすり合わせるところから始めるけれど、コロナ禍以降は共通の課題がある。変えなければならないという共通の危機感がDXを推進させた」と分析する。さらに「自治体の首長も、自分の言葉で語り、住民に説明する必要が出てきた。やらなきゃならないという強い意識が、DXを推進させたポイントではないか」と見る。

DX化が進む中でサービスを提供する際に気をつけていることは

コロナ禍を1つの契機としてDX化が進展する中で、気をつけるべきことはあるだろうか。ヤフーの大屋氏は、「信頼」を挙げる。「例えば、プライバシーの部分で、いつのタイミングで許諾したかをちゃんとわかるといったこと。信頼を持ってもらって、データサービス全体を使ってもらうことを前提にサービスを作っていかないといけない」と語る。

東急の乗松氏は、「東急では、各事業でDXが進んでいるとは言えない状況」と前置きし、「デジタルであれリアルであれ、お客様に便利であることを忘れないように開発している」という。渋谷区の加藤氏は「行政に入ってびっくりしたのは、たくさん情報があるのに、何が書いてあるかわからない。これを全部伝えられるのか。情報を精査して減らしていく必要があるだろう」と指摘する。

DXの「改革」では既存の組織や意識をどうクリアしてきたか

DXは改革が伴う。その際には既存の組織や意識との関係が問われる。渋谷区の加藤氏は、「渋谷区は行政としては新しい取り組みをしていると思う。新しい技術を採り入れることが面白いと思う職員もいて、一緒にやっていく。仲間を増やしていくことが大切」と語る。

面白いのは東急の乗松氏のコメント。「東急ではLINEを活用したサービスを提供している。その時は、渋谷区がLINEを使っているのを1つのベンチマークにした。行政ですらLINEを使ってやっているんだよ、民間でそんなこともできないの?」とハッパをかけたという。

ヤフーの大屋氏は、「分析していると遊んで見られる。そう言われることのショックがあった。すぐに解がでないものに取り組んでいくことは難しい。仲間集めなどにもっと協力していかなければいけないだろう」と改革の難しさを語る。

DXでコロナ後に戻ってはいけないことは、未来は

コロナ禍で進展したDXだが、元に戻ってしまうリスクもある。元に戻らないためにどうしたらいいか、そして未来への展望について、パネリストはどう考えているだろうか。渋谷区の加藤氏は、「新しい技術やデータ活用は、採り入れてしまえば便利で日常になっていく。新しいものを採り入れること、そして今がベストではないという考え方が必要だろう」という。未来については、「人が無理をしないで使えるテクノロジーが増えるといいなと感じる。渋谷区では高齢者のスマホ教室も実施しているが、使うための努力が必要なところもある。音声や視覚などを使って使う人を選ばないDXを実現していきたい」。

東急の乗松氏は、「今までと同じではだめと考え、デジタルに限らずアップデートするスキルが必要だろう。例えばアクリル板の置き方でも日々工夫していくことで変わった。もう1つは、チャレンジするだけでなく、失敗を責めないという思考を得たこと。これはずっと続けていきたい」という。そして未来については、「デジタルが大前提になることでワンツーワンの取り組みができる。地域のまちづくりが、大きな地域のくくりではなく、小さな街などの単位になる。デジタルだから、ローカライズのサイズを小さくできる」とDXが進んだ世界の変化を指摘した。

ヤフーの大屋氏も「せっかくDX化へのアクセルを踏んだ後で、次につなげていくところは残したい」という。最後にコーディネーターの松尾氏が「DXは、デジタル化が先行するけれど、トランスフォーメーションと相まって社会が変わる。信頼、地域、人と人のつながり、参加といったキーワードが得られた。デジタルと離れたアナログの人間らしい側面が絡み合わないとDXにならないのかなと感じたセッションだった」と、DXのリアルを感じることができたセッションを締めくくった。

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。