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ジェームズ・ボンド イメージ

ジェームズ・ボンドがAmazonのAWSで仕事する

James Bond to use Amazon AWS

2021.11.19

Updated by Mayumi Tanimoto on November 19, 2021, 07:00 am JST

日本では、政府関係者がLINEを使って仕事をしていたことや地方自治体でもLINEを使用していたことが安全保障とセキュリティの観点から疑問視されているわけですが、最近のイギリスの場合、もっと度肝を抜かれることを政府がやっています。

イギリスの公安組織であるMI5とMI6は、最近はDXを進めており、業務のデジタル化でより効率的な業務の遂行を目標にしているのですが、 なんとAmazonのクラウドである「AWSに諜報関連の情報を含む機密情報を保存して業務に積極的に使う」と述べています。

Amazonと契約するのは両機関の親機関であるGCHQ(Government Communications Headquarters:政府通信本部)で、MI5やMI6がイギリスの軍と共同作戦を行う際などにAWSを活用するとしています。諜報機関までがAmazonを使うのにドン引きですが、その一方で、実は政府のセキュリティや防衛に関する情報は、日本よりもイギリスの方がはるかにコントロールが厳しいのです。

政府案件にかかわるとよく分かりますが、作業を担当する末端のオペレーターやプログラマのバックグラウンド・チェック、実際の作業の検査なども非常に厳しいのです。EU離脱しましたが、GDPRにも従わねばなりません。

日本で行政関連の案件にかかわりますと、そのユルさに驚くことが多いんですけども。

このAmazonとの契約に対しては批判がないわけではなく、イギリスの 国家機密に関わるデータをアメリカの大企業のサービスに保存して使用するという点で、国体の維持や防衛の観点からさまざまな疑問や批判が出ています。データ自体はすべてイギリス国内に保存することになっているとはいえ、Amazon依存であることは変わりません。

そもそも、セキュリティに対して大変厳しいイギリス政府がここまで大胆なことをするというのは、 懸念されるセキュリティリスクよりも複数の機関がクラウドを利用して共同で作業をし、 問題解決に当たる方が生産性が高いと判断したからでしょう。

これはイギリスだけではなくアメリカも同じで、 例えばCIAは既に2013年にAWSを導入しており、 このクラウド契約は、最近になってAWS、Microsoft、Google、Oracle、IBM​ が参画するコンソーシアムにアップグレードされています。

アメリカの場合も、諜報機関のクラウドを政府内で自作するのではなく民間企業のサービスを使った方が合理性があると判断したためです。

このような欧米の取り組みは、日本におけるDXというものへの示唆が数多くありますね。

DXを進める際に抵抗勢力の人々が懸念することは、やはり情報漏洩や自社でインフラを持たないことですが、デジタル時代においては自社で全て用意するのではスピードが間に合いません。業務をどんどんデジタル化して、付加価値の高い作業を行ったほうがベネフィットが高いということです。

DXを導入するに際しては、リスクばかりを考えるのではなく、導入コストやスピードも醜聞に考慮した上で、得られる付加価値を優先するべきなのでしょう。

しかし、ここで非常に心配な点は、MI6までがどんどんデジタル化するということは、ボンド氏のような昔風のスパイがデジタルサービスを使いこなせるかどうかが問われる、ということですね。

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。