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IT教育において重要なこと

Important things for IT education

2022.03.07

Updated by Mayumi Tanimoto on March 7, 2022, 07:00 am JST

前回は、北米やイギリスにおける子供のIT教育について紹介しましたが、日本ではゲーム企業が世界を席巻するような実績を出しているのにもかかわらず、日本の教育現場はゲーム業界を重要視せずに教育の場でコラボしようという意欲が見られません。

さらに日本のIT教育における問題は、コンピューティングの前提となる考え方をかなり早いうちから教え込まないこと、楽しく体験できるようにするという思想設計がないことです。

この辺の様子は、私が2020年に出版した「世界のニュースを日本人は何も知らない2」さらに2021年に出版した「世界のニュースを日本人は何も知らない3」でも解説しました。

例えば、

・0と1とは何か?

・バイトとは何か?

・バイナリとは何か?

・データとは何か?

・そもそも通信とは何なのか?

・効率化とは何か?

といった概念を、日常生活に関連させて子供でも理解できるように説明し、なおかつ楽しく体験できるようにすることです。

こういった基礎の基礎が分かっていれば、もう少し大きくなってからアプリを開発したりサービスを設計したりする際に、「つまりこういうことか」ということが感覚的に分かるようになるのです。

今の日本の学校のIT教育では、これを教えるようにはなっていません。タブレットの使い方やアプリの使い方は「IT教育」ではないのです。

近年は、ちょっとしたコーディングやゲーム作成などを授業でやる学校がありますが、これもちょっとポイントがずれています。まずは「電算機」の概念を、概念として教えないと、基礎の基礎ができません。単にアプリを使えたりちょっとしたコーディングができても、土台が理解できていないとその先へ行けません。

その点でイギリスの学校や公共団体のやっている事はなかなか参考になります。

例えば以下の団体の動画は、子供にバイナリーとは何かということをトランプを使って説明しています。

Binary Playing Cards, How to Raise a Tech Genius - Computing at home with Digital Schoolhouse

バイナリの概念を教えるのは紙と鉛筆です。概念を理解することがポイントなので、華美な教材や教科書、アプリなどは必要ないのです。様々なコンピューティングの概念を、日常生活の中で教えるやり方です。

デバイスを使わないでITのことを教えるということにびっくりされる方もいるかもしれませんが、概念を学ぶのに別にコンピューターを使う必要はありません。

しかし、この「概念を理解しているかどうか」が、後々、非常に重要になってきます。これは子供だけではなく、大人で既に実務に携わっている方にも重要なのではないでしょうか。特に大学で電算機の学位を履修しなかった方、基礎の基礎をやっていない方だと、どうしても根源的な部分がわかっていないため、どこかで躓きます。

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。