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イギリスの新移民法がテック業界に及ぼす影響

Impact of UK's new immigration law to tech industry

2020.02.25

Updated by Mayumi Tanimoto on February 25, 2020, 16:42 pm JST

イギリスでは、相変わらずコロナウイルスがニュースのトップですが、ここ最近話題になっているのが移民法改正です。

今回の改正は、Brexit後の最も大きな出来事の一つになります。

EUがここ20年で行ったことで、加盟国間に影響が最も大きかったことの一つが、域内の国籍保持者は、他の加盟国での居住も就労も自由である、という「移動の自由」の合法化でした。

加盟国の国籍を持つ人は、イギリスに住むのも就労するのも自由で、資格や年収などに関する制限は一切ありませんでした。

これは、EU域内の経済を活性化させ、労働力を効率に活用することでアメリカと対抗する、という意識の表れでありました。しかし結局は、域内の豊かな国に労働者が集中し、南部や旧東欧では頭脳や若い労働力が流失して過疎化するという、大陸規模での過集中と過疎化の問題を引き起こしました。

国内ですら、都会への集中と過疎化の解決は難しいわけですが、国境を越えてしまう場合は解決がより困難です。

労働力が集中した国の一つがイギリスでした。

英語が通じますし、賃金が高く、外国人にはオープンな環境なので、人が来ないほうが不思議なくらいです。

テック業界にとってこれは恩恵で、EU中の優秀な人材を自由に雇えるというメリットがありました。

ところが今回の移民法改正では、イギリスに来て就労する全ての外国人に対してポイント制でその資格を審査するというものとなり、EUの国籍がある人も、加盟国以外の国籍の人も全く同じように審査されることになりました。

仕事のスポンサー、年収、学歴、英語力などで審査が行われ、合計ポイントが70以上になるとビザ審査に応募できます。このような審査基準ではありますが、ポイントの配分などを見ると、 テック業界にとっての影響はそれほど大きくはないといえるでしょう。

まず、審査基準の最も大きな部分となる年収の下限は25,600GBP(約360万円)ですが、業界標準ではエントリーレベルの報酬になりますから、クリアできる企業が多いです。ただしスタートアップに関しては、支払いが厳しい場合もあるかもしれません。

2点目としては、イギリス政府が不足していると定義する職業に関してはポイントが提供されますが、この職業のリストには テック関係の業種が多数含まれています。 ポイント加算なので、テック業界の人が応募する障害にはなりません。

高い報酬を払えない業種の場合は、ビザを取得できません。つまり今回の改正は、農業や介護、サービス業界といった、低賃金の外国人労働者に対する依存度が高い業界を狙い撃ちしたものです。

イギリス政府が知識産業をより強化し、低賃金外国人労働者への依存を解消したいという姿勢がよくわかります。

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。