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自己組織化(self-organization)の「自己」って何だ?

自己組織化(self-organization)の「自己」って何だ?

Self or Autonomous, That is the Question

2022.06.13

Updated by Schrodinger on June 13, 2022, 15:01 pm JST

冒頭の写真は、「自己組織化現象」の例としてよく挙げられる、ベロウソフ・ジャボチンスキー反応(Belousov-Zhabotinsky Reaction:BZ反応)という化学反応による、時間的に発展する模様です。最初はシャーレの中の溶液は赤一色なのですが、青の点が現れ、円環状に広がっていきます。これが同じ点で繰り返されて、青の円環が同心円状に形成されます。複数の物質の濃度が周期的に変化する非線型的振動反応の代表的な例としてよく知られています。

このような自発的な秩序形成現象は、「自己組織化」あるいは「散逸構造形成」などと呼ばれています。これまでにも数多くの研究が進められ、生命現象にみられる秩序形成現象の一側面の理解は進んだといえますが、無生物と生物の溝は未だに大きく、無生物で形成される秩序構造に「生物らしさ」は認められにくいのが現状です。これは、システムの複雑さや階層性によるものであろうという考えから、研究を進めているところです。

生物は、階層性の高い構造体をうまく構築することで、分子の機能性から巨視的なレベルでの多様なアクティブ機能を実現することに成功しています。一方、数学的にこの自己組織化が表現できる生態系(e.g. ボイドモデル:鳥が群を作って空を飛ぶときの様子)も(さほど多くはないですが)存在します。

私の研究では、この生物系と数学系の中間に位置するはずの物質系による階層性の高い構造に現れる機能を人為的に作り出し(我々は「モデル実験系」と呼んでいます)、その本質を統一的に理解する理論体系の構築へとつなげていくことを目指しています。

階層性の高いモデル実験系を実現するためには、着目している系に加え、その外部環境における現象も同時に考慮することが求められます。通常、外部環境はシステムの現象に関わらず一定であると考えますが、システムで起こる現象に応じて外部環境(境界条件)も時々刻々と変化します。この考え方は、システムで起こる現象と外部環境で起こる現象の時定数が近い値の場合に必要となります。

この様な条件下で、多数の自己駆動粒子(システム)の集団運動を考えると、自己駆動粒子は周囲の環境を局所的に変化させることになります。この局所的な環境変化が別の自己駆動粒子の境界条件を規定するため、自己駆動粒子は間接的に相互作用することになります。

このように相互作用する自己駆動粒子の集団挙動を観察し、動的な階層構造の自己組織化の実現および機構解明を目指しているのですが、ここで改めて、自己組織化の自己というのはselfでいいのだろうか、ひょっとしたらautonomous(自律)が相応しいのではないか、という少し根源的な疑問が生じます。今週の「シュレディンガーの水曜日」では、このあたりの皆さんのご意見をお聞きしたいな、と考えています。(末松)

募集要項
6月15日(水曜日)19:30開始
自己組織化(self-organization)の「自己」って何だ?

末松信彦(すえまつ・のぶひこ)末松信彦(すえまつ・のぶひこ)
明治大学 総合数理学部 准教授
2003年東京理科大学理学部応用化学科卒、2008年筑波大学大学院数理物質科学研究科・博士課程 修了、東京農工大学大学院・共生科学技術研究院非常勤研究員、広島大学大学院理学研究科・数理分子生命理学専攻グローバルCOEプログラム研究員を経て、2017年から現職。

・日程:2022年6月15日(水曜)19:30から45分間の講義(その後、参加自由の雑談になります)
・Zoomを利用したオンラインイベントです。申し込みいただいた方にURLをお送りします。
・参加費:無料
・お申し込み:こちらのPeatixのページからお申し込みください。


「シュレディンガーの水曜日」は、毎週水曜日19時半に開講するサイエンスカフェです。毎週、国内最高レベルの研究者に最先端の知見をご披露いただきます。下記の4人のレギュラーコメンテータが運営しています。

原正彦(メインキャスター、MC):東京工業大学・物質理工学院応用科学系 教授原正彦(メインコメンテータ、MC):東京工業大学・物質理工学院・応用化学系 教授
1980年東京工業大学・有機材料工学科卒業、1983年修士修了、1988年工学博士。1981年から82年まで英国・マンチェスター大学・物理学科に留学。1985年4月から理化学研究所の高分子化学研究室・研究員。分子素子、エキゾチックナノ材料、局所時空間機能、創発機能(後に揺律機能)などの研究チームを主管、さらに理研-HYU連携研究センター長(韓国ソウル)、連携研究部門長を歴任。現在は東京工業大学教授、地球生命研究所(ELSI)化学進化ラボユニット兼務、理研客員研究員、国連大学客員教授を務める。

今泉洋(レギュラーコメンテータ):武蔵野美術大学・名誉教授今泉洋(レギュラーコメンテータ):武蔵野美術大学・名誉教授
武蔵野美術大学建築学科卒業後、建築の道を歩まず、雑誌や放送などのメディアビジネスに携わり、'80年代に米国でパーソナルコンピュータとネットワークの黎明期を体験。帰国後、出版社でネットワークサービスの運営などをてがけ、'99年に武蔵野美術大学デザイン情報学科創設とともに教授として着任。現在も新たな表現や創造的コラボレーションを可能にする学習の「場」実現に向け活動中。

増井俊之(レギュラーコメンテータ):慶應義塾大学環境情報学部教授増井俊之(レギュラーコメンテータ):慶應義塾大学環境情報学部教授
東京大学大学院を修了後、富士通、シャープ、ソニーコンピュータサイエンス研究所、産業技術総合研究所、米Appleにて研究職を歴任。2009年より現職。『POBox』や、簡単にスクリーンショットをアップできる『Gyazo』の開発者としても知られる、日本のユーザインターフェース研究の第一人者だがIT業界ではむしろ「気さくな発明おじさん」として有名。近著に『スマホに満足してますか?(ユーザインタフェースの心理学)(光文社新書)など。

竹田茂(司会進行およびMC):スタイル株式会社代表取締役/WirelessWireNews発行人竹田茂(司会進行およびMC):スタイル株式会社代表取締役/WirelessWireNews発行人
日経BP社でのインターネット事業開発の経験を経て、2004年にスタイル株式会社を設立。2010年にWirelessWireNewsを創刊。早稲田大学大学院国際情報通信研究科非常勤講師(1997〜2003年)、独立行政法人情報処理推進機構・AI社会実装推進委員(2017年)、編著に『ネットコミュニティビジネス入門』(日経BP社)、『モビリティと人の未来 自動運転は人を幸せにするか』(平凡社)、近著に『会社をつくれば自由になれる』(インプレス/ミシマ社)、など。

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