photo by 佐藤秀明
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※本稿は、モダンタイムズに掲載された記事の抜粋です。脱炭素の問題点についてエネルギーアナリストの大場紀章氏が解説します。
脱炭素を進めているのは誰か
脱炭素を進めていくということは、すでに政治的には大筋で合意がなされている。しかし最近では国と国との間の約束ごとよりも、企業の活動に対しての世間の関心が高まっている。例えば、最近アメリカの石油会社・エクソンモービルがCO2の削減計画を発表したが、これは政府から要請されたわけではなく、むしろ株主からの要望で行ったものだ。
もはや脱炭素は政府が主導して企業に削減をお願いしたり命令したりすることで推進されるものではなくなってきている。例えば、環境団体が株主となって企業の行動を直接変えたり、企業を裁判で訴えたりすることで動きがあることもある。もちろん未だ政府は非常に重要なプレーヤーではあるが、その存在感は以前に比べれば徐々に小さくなっている。
排出の責任は誰にある?
大量のCO2は石油や石炭を掘って売り、それを誰かが燃やすという形で発生している。そうすると、このCO2排出の責任者は掘る人なのか、売った人なのか、燃やす人なのか、その先でそのエネルギーを使う人なのかという問題が浮かび上がる。
従来は「燃やした人が悪い(=責任がある)」、あるいは「エネルギーを使った人が悪い」という考え方で整理されていたが、最近は「掘る人が悪い」、「石油等を売る人が悪い」、「エネルギーを使う機械を売った人が悪い」といった主張が増えてきている。燃料の燃焼などによるCO2排出をスコープ1、電気や蒸気などのエネルギーの使用による間接排出をスコープ2、燃料の販売やエネルギーを使う装置の販売などその他関連する間接排出をすべてひっくるめてスコープ3というが、最近ではそのスコープ3も責任を全うすべきだという論調になってきたのだ。
面白いのが、実は産油国も脱炭素宣言していることだ。サウジアラビアやUAE、マレーシアといった産油国は2021年に次々と脱炭素宣言をした。しかし彼らのいう脱炭素というのは、掘った石油を燃やすときに出るCO2に対するものではなく、主に油田を掘っているときの経済活動に関するものである。「掘削作業をするときに出るCO2はゼロにします」(つまりスコープ1と2)というもので、彼らの主張では、輸出した石油がその先でCO2を排出すること(スコープ3)には自分たちは関知しない。当面石油は世界中で使われ続けるので、自国での脱炭素は大きな経済的損失にはならないと考えているのである。
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