photo by 佐藤秀明
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あまりに西洋中心の見方をしていないか? 宗教改革は本当に大事件だったのか?
1517年、マルティン・ルターがカトリック教会の腐敗に対して発表した95箇条の論題をきっかけとして宗教改革がはじまり、世界史は大きく変わった。一般的にはそう考えられることが多い。
宗教改革のために、西欧世界はカトリック地域とプロテスタント地域に分裂した。プロテスタント地域はさらに細かな分派に分かれ、宗教戦争がナショナリズムを生み出し、国や地域によって奉じる宗教が異なる状況を生み出した。その終結は、三十年戦争の講和条約であるウェストファリア条約締結の1648年を待たなければならなかった。
上記の要約は、単にユーラシア大陸の西端にあるヨーロッパ世界の状況を述べたにすぎない。宗教改革は、始まった時点では、決して世界史的な事件ではなかった。にもかかわらず、それを当初から世界史を変えた出来事だと言うとすれば、あまりに西洋中心的な見方にすぎよう。
だが同時に、現在では世界中にキリスト教徒がいることも確かである。しかし、少なくともその出発点はカトリックの2カ国(スペインとポルトガル)の海外進出にあった。
ここでは、拙著(『迫害された移民の経済史 ヨーロッパ覇権、影の主役』河出書房新社)にもとづきながら、宗教改革の世界化について論じてみたい。
日本にキリスト教を広めたイエズス会。創始者はユダヤ人だった可能性
「コンベルソ」という言葉をご存知だろうか。コンベルソとは、ユダヤ教からカトリックに改宗したか、もしくは現在はカトリック信徒だが祖先はユダヤ教徒だった人々のことをいう。イエズス会創始者であったイグナチウス・ロヨラ(1491-1556)もまた、コンベルソの家系に属していた可能性がかなり高いというのが、スペイン史家ケヴィン・イングラムの主張である。
ロヨラ家は、家系的には13世紀にまで遡り、バスク地方の出身であった。イグナチウスの母方の家系は成り上がり者の家系であり、貿易によって巨額の利益を獲得し、それをもとにして社会階級を上昇させていった。
※本稿は、モダンタイムズに掲載された記事の抜粋です(この記事の全文を読む)。
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