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Googleの人材採用の変化から学ぶ有望な人材をつなぎとめる方法

Learning from Google - how to retain competitive people

2024.01.30

Updated by Mayumi Tanimoto on January 30, 2024, 12:00 pm JST

Googleに18年も勤務していた元社員の方が、Googleにおける人材採用や昇進の文化の変化について語っているブログが話題になりました。

https://social.clawhammer.net/blog/posts/2024-01-19-CultureChange/

Googleは、創業から10年ほどは従業員を大変大事にしていたというのです。福利厚生も素晴らしいのですが、何より興味深いのが、従業員を簡単には解雇しなかった点です。プロジェクトが失敗しても別のことを探してきて仕事してもらう。こういった失敗を問わない文化があったようです。

その代わりに従業員の採用は大変厳しく、採用プロセスは数カ月にわたり、能力から人柄までじっくりと精査し、面接する側も相当の労力を費やしていたようです。創業から10年ほどは従業員の数も少なかったので、少数精鋭で採用していたのでしょう。

これは、日本人がイメージするアメリカの外資系企業の姿とは大きく異なっています。また、イメージだけではなく、実際、他の多くの企業とも異なっています。

アメリカだけではなくカナダやイギリスの会社も似ているのですが、間口は広く採用は割とカジュアルです。とりあえず雇ってみて、期待する成果を出せばそのまま雇い続ける。ダメならすぐに首という会社が多いのです。また、プロジェクトが駄目になると解雇です。

これは、雇用規制が日本や大陸欧州より緩いので可能です。しかし、失敗すれば首になってしまうので、従業員は新しいことには挑戦しません。人事権限を持っている上司には服従で批判が許されません。批判したらありとあらゆる手段を使って解雇になります。人事が気を遣って別部署や別のチームに配属してはくれません。

ところが初期のGoogleでは、これらが全て逆だった、というのは非常に驚くべきことですね。あの初期の頃のGoogleが支えられていたのは、失敗を許され、雇用の安定が保証される「古き良き時代」の雇い方だった。

実は、アメリカやイギリスでも、1950-60年代はこういう採用や人事管理の方法だったのです。少なからぬ職場で採用は割と厳しく、転職は頻繁ではなく家族的な雰囲気もあったのです。

これは日本も同じで、昭和40年代から50年代の始めくらいまでは、大企業、特に技術系の企業の研究開発や実験部署の採用は恐ろしく厳しく、特定の大学からのみの採用で、開発部に配属の場合は実家の近所に興信所を派遣し思想背景や人柄、家族関係まで調べるほどでした。

しかし、プロジェクトが失敗しても責任を厳しく追求されるわけではなく、また別のことに取り組んでもらう。福利厚生は大変恵まれていて、会社主催でキャンプ大会や運動会、お見合いまであって、家族的な雰囲気に溢れていました。

当時の日本企業が生み出した製品やサービスは遊び心に溢れ、革新的で、雇用に満足していて会社に帰属心がある人々は、顧客サービスにも熱心に取り組んでいました。

世界最先端のITサービスを生み出していた会社は、昭和の日本の会社にそっくりだったわけです。イーロン・マスク氏は、日本の昭和のサラリーマンのような猛烈な働き方を推奨していますが、古き良き時代から学ぶことは多いのではないでしょうか。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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