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欧州評議会の「AI条約案」、世界の人権/民主主義/法の支配に影響

2024.08.15

Updated by WirelessWire News編集部 on August 15, 2024, 14:51 pm JST

欧州評議会で交渉が進んでいるAI条約(案)の正式名称は、「FRAMEWORK CONVENTION ON ARTIFICIAL INTELLIGENCE, HUMAN RIGHTS, DEMOCRACY AND THE RULE OF LAW」(「人工知能/人権/民主主義/法の支配に関する枠組条約」)です。

同条約案は、欧州評議会において2022年に設立されたAI委員会(Committee on Artificial Intelligence: CAI)において起草、交渉されており、2023年1月に改訂版ゼロドラフト、同年7月に統合版ドラフト、同年12月に枠組条約ドラフトが発表されました。2024年1月からは第9回目の会議が開催され、交渉は最終の詰めの段階まできています。2024年3月には内容を確定し、2024年5月に採択されています。

米国が批准となれば日本も批准の検討が必要に

このAI条約案を発案した欧州評議会(Council of Europe; CoE)は、人権、民主主義、法の支配に関して国際基準の策定を主導する汎欧州の国際機関であり、欧州を中心に現在46カ国が参加しています(ロシアは2022年に除名)。日本は参加国ではありませんが、オブザーバー国として、CoEが主催する会合への参加、条約の批准等を行っています。オブザーバー国としては他に、米国、カナダ、メキシコがあります。

CoEが起草した条約で有名なものは、サイバー犯罪条約です。サイバー犯罪条約は、欧州諸国に限らず、日本や米国も批准しており、日本では同条約を批准するために刑法の改正が行われました(いわゆるコンピュータウイルス作成/提供罪にあたる不正指令電磁的記録に関する罪の新設や記録命令付き差押えの新設など)。

AI条約案のオブザーバー国としては、通常のオブザーバー国に加えて、アルゼンチン、コスタリカ、イスラエル、ペルー、ウルグアイが参加しています(オーストラリアは申請中)。

上述のサイバー犯罪条約の経緯を考えると、AI条約案について、欧州での議論であるから日本には関係ないと無視することはできません。米国が批准することになれば日本も欧米の枠組みに後れを取らないように批准を検討せざるをえないと思われます。したがって、今後日本にどのような影響がありうるのかを見極めるためにも、どのような交渉がなされているのかを把握しておくことが重要です。

※本稿は、モダンタイムズに掲載された記事の前半部分です。
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