先月に引き続き、長岡でイベントを行った。
今回の題材は「地方での起業」
筆者が共同創業者を務めるFreeAI Ltd.として、同じく共同創業者の海老根智仁と二人で長岡市の主に20代の若者を対象として起業の勘所について説明し、その場でビジネスプランをまとめ、磨き上げていくという「ビジネスアイデアソン」的なイベントで、二日間の日程で行った。
ビジネスプランの要諦は事業計画書にあるが、事業計画書の書き方を教えてくれる講座は少ない。
というのも、ほとんどの「起業講座」を開いているのは、税理士や会計士など、「会社のお金の流れのプロ」であって、「起業のプロ」ではないからだ。
事業計画書の内容は、大きく、「表紙」「コアメンバーの紹介」「注目してる社会課題」「課題解決のための方法(商品またはサービス)」「損益計算書」「この事業の独創性、チームの強み」の6つの要素から成る。
事業計画書というのは、長ければいいというものでもなく、適切な解像度(レゾリューション)がバランスよく配置されている必要がある。
最初のうちは、事業計画は全て「絵に描いた餅」である。
だが、「いかにその餅が旨そうか」食べる前に説明するのが事業計画書の役割だ。
今の世の中、新しい事業を起こそうと思ったら、まず試作品がなければ話にならない。
試作品とはほとんどの場合、アプリやWebサービスである。
これまではアプリやWebサービスを作る際、必ず外部の協力会社の協力が必要だった。
普通の人はアプリなど作れないからだ。
しかし、今、生成AIでその状況は大きく変わろうとしている。
Replit AgentやBolt.newなどのバックエンドを含めた自動開発サービスは、使い方にまだ癖はあるが、この先ある程度のプロトタイプはできるようになる。
現段階では使い物にならなくても、時間が解決するだろう。
今はAIが作ったものを人間がテストしてダメ出しして作り直させる必要があるが、この作業はもはや高度なエンジニアが行う必要はない。
アルバイトで十分開発できてしまう。
プロトタイプまで簡単に作れるとなると、次の問題は事業計画、とりわけ大事なのが損益計算書である。
事業計画は損益計算書とセットでないと絵に描いた餅未満である。餅に見えないからだ。
損益計算書とは、日々の出費や歳入をまとめた、「未来の預金通帳」である。
この損益計算書は、作るのが非常に難しい。
難しいというか、要は「何にいくらかかるのか」ということを自分で見積らなければならないわけだ。
自分の給料はともかくとして、家賃、光熱費といった比較的想像しやすいものから、宣伝費といった想像が難しいもの、さらに客単価、見込み顧客数など、想像もつかないものを一旦想像して数字として埋めなくてはならない。
ただ、これは必ず想像しなければならない。
未来の顧客を想像しなければ、そもそも事業というのは一歩も前に進まないからだ。
もちろんこの目論見は大体外れる。最初期は必ず外れるといってもいい。
外れることが前提で、それでも予想するのである。
いざ実際に事業が動き始めたときに、仮説が間違っていたことを知ることになる。
間違っていることが前提なので、間違っていても別に問題ない。AIだって、最初は適当な予測から始まって、だんだんと予測を修正していく。
ただ問題は、自分で作った損益計算書に自信が持てないときだ。
そういう時は、損益計算書のスクリーンショットをとって、ChatGPTに見せればいい。
そうすると、ChatGPTは損益計算書を見て色々とアドバイスをしてくれる。
ChatGPTに損益計算書を見せながら「この事業のリスク要因は?」「もっとこの事業で収益を改善するには?」「もっと確実性を高めるためには?」と質問すると次々と答えてくれる。
二年前にブームになったときに比べると、今のChatGPTはかなり賢くなっている。
アドバイスも的確になってきた。
ChatGPTをうまく使うためには、普段から色々とChatGPTになんでも相談しておくと良い。
今のChatGPTは過去の会話を覚えるようになっていて、過去の会話からユーザーの状況や興味のある内容などを把握するようになっている。
ある種の日記のようなもので、毎日10分程度でもChatGPTに音声で近況報告をしておくと、そのうちいいことがあるかもしれない。
最初は戸惑っていた参加者たちも、繰り返し同じ企画を別の視点から見たり損益計算書で実現可能性を検討したりを繰り返すことで、どうすれば自分のビジョンを実現していくことができるか、学べたのではないかと思う。
実際、回数を重ねるごとにメキメキと事業計画がブラッシュアップされる様には僕も海老根さんも驚いた。
今回のビジネスアイデアコンテストでは、わずかな時間で人間は驚くほど成長できることを実感した。
事業の立ち上げ前にはこういう感じで色んな人に事業の方向性をぶつけて揉んでもらうのがいいというのはよく知られた話だが、実際にそれができる機会はそれほど多くない。
彼らにとってなんらかの役に立てていれば光栄だ。
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登録はこちら新潟県長岡市生まれ。1990年代よりプログラマーとしてゲーム業界、モバイル業界などで数社の立ち上げに関わる。現在も現役のプログラマーとして日夜AI開発に情熱を捧げている。