エリクソン、商用化間近の仮想化パケットコアをデモ、新しいスモールセル運用スキームも提案
2014.02.27
Updated by Naohisa Iwamoto on February 27, 2014, 07:54 am JST
2014.02.27
Updated by Naohisa Iwamoto on February 27, 2014, 07:54 am JST
スペイン・バルセロナで開催されているMobile World Congress 2014(MWC 2014)のエリクソンのブースでは、商用間近のvEPCや新しいコンセプトの「Small Cell as a Service」、将来の5Gのリサーチ状況など、盛りだくさんの展示やデモがなされていた。
▼Virtual EPCのデモ。左上のカメラで撮影したデータは、ローカルに設置した仮想化したパケットゲートウエイだけを通って右下の端末に表示されている
事業者のネットワーク仮想化の1つとして現実のものになってきたのがパケットコアを仮想化するVirtual EPC。エリクソンでは2014年末までに商用ネットワークで稼働、2015年には大規模な展開を目指している。MWC 2014では、スエーデンに設置したデル製のブレードサーバーのOpenStack上でVirtual EPCを動かし、通信するライブデモを実施した。Virtual EPCの利用ケースの1つとして、仮想化したパケットゲートウエイをローカルに設置する「Local Connectivity」のデモを実演した。これは、スタジアムで会場の動画を来場者に配信するような場合に、その通信をローカルで完結させられるもの。仮想化したEPCからパケットゲートウエイ機能の一部を切り出して、一時的なトラフィック増加に対応することが容易になるという。
▼「Small Cell as a Service」は利用する技術によりBASIC、ADVANCEDなどの構成が考えられている
今回、新しいコンセプトとして提案されたものの1つに「Small Cell as a Service」がある。これはショッピングモール、スタジアム、市街地の中心部などの高トラフィックな場所にスモールセルを設置・運用するためのソリューション。通信事業者が個別にスモールセルを構築するのではなく、3G/LTE、Wi-Fiによるスモールセルのインフラをエリクソンが提供し、通信事業者がシェアして利用する事業となるや個別に投資するリスクやランニングコストを抑え、スモールセルを展開していくスキームとして注目したい。
▼2020年の商用化を目指す5Gのタイムテーブル
5Gのビジョンは、エリクソン リサーチが展示していた。モバイルコミュニケーションの拡大に対応する技術が5Gと位置づけて、高速化だけでなく今後登場する新しいデバイスやサービスに対応できる要件を盛り込むことが必要という。その要件とは、安くてシンプルであり、高い信頼性、極限までのリアルタイム性、大容量といったもの。急ブレーキをかけたことを後続のクルマに伝えるような利用法では信頼性とリアルタイム性が高く要求されるようになる。2018年からトライアル、2020年には商用化といったタイムテーブルで検討を進めていくという。
▼街灯の中に基地局がある様子がよくわかる「Zero Site」
展示の中で面白かったものを2つ紹介する。1つはフィリップスと共同で開発しているという街灯一体型の基地局「Zero Site」。街灯に基地局を組み込むことで、スモールセル化により多くの基地局が必要になる通信事業者は、基地局のサイトを確保しやすくなる。街灯を所有する自治体なども基地局への貸し出し収入が得られる。
▼水槽の左右にマイクロウエーブリンクの機器があり、降雨状況を測定した結果が右のディスプレイに表示される
もう1つはマイクロウエーブによる降雨状況の測定ソリューション。展示は傘と大きな水槽が目立っていた。これは通信事業者がバックホールに利用しているマイクロウエーブの通信で、降雨による電波の減衰から降雨量を推測するもの。日本ではあまり普及していないというが、マイクロウエーブリンクを張り巡らせている通信事業者も世界には多く、レーダーよりも正確で緻密な降雨状況を通信事業者が提供できるようになるという。通信事業者が、洪水の予報や避難勧告を出す時代が来るかもしれない。
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