携帯キャリアは巨額の資金を投入し自社イメージの向上やブランディングに熱心です。しかし、ユーザーというのはキャリアが考えるよりも遥かにシビアで、おしゃれな宣伝やマスコットキャラクター、販促グッズでは簡単に騙されない様です。
MobileSquaredとGMIが四カ国(英、米、豪、南ア)30携帯キャリア、4000名の携帯電話サービス利用者に実施した調査の結果は、携帯キャリアが顧客ロイヤリティを高めるには何に投資すべきか、という答えを与えてくれます。以下は調査の概要です。
■デバイス
ー 顧客満足度が最も高いのはApple。70%の顧客が満足している
ー Appleは顧客リテンションが最も高い。75%の顧客は機種変更時に他のメーカーを選ばすAppleを選択する
ー 58%のユーザーが機種変更時にデバイスのブランドを変更する
ー Samsungの顧客リテンションは54%。他のブランドは40%程度
ー Samsungは新規顧客獲得率が最も高い。33%の顧客が機種更新時にSamsungを選択した
ー 46%は携帯キャリアからデバイスを購入
■携帯キャリアの顧客獲得
ー 顧客が重視するのは「サービスの信用度」「ネットワークのカバー率」「価格」
ー 顧客の年齢が上がるほど顧客サービス品質を重視。45歳以上の82%がキャリア選択にあたり重視
ー ヘビーユーザーは顧客サービス品質を重視。89%がキャリア選択にあたり重視と回答
ー 年齢が高くなるほど、キャリア選択にあたり、口コミや第三者の推薦を信用しない
ー 若い顧客ほどキャリアを変更する可能性が高い
ー 6年以上同じキャリアを使用する顧客は変更する可能性が低い
ー キャリア変更には家族や友人の影響が大きい
ー 使用料金が高い顧客ほどキャリア変更の可能性が高い
■顧客サービス
ー 伝統的なコールセンターが最も人気があるチャネル。51%の顧客が過去一年の間に使用
ー コールセンターや店舗対応など直接やり取りするほど満足度が高くなる
ー 年齢の高い顧客ほど顧客サービスへの要求が低く、コンタクトする回数が少ない
ー 16−24歳の顧客は最も要求が厳しい
ー 顧客サービスに電話をかける回数が多いほど、キャリアへの信用は下がる
ー キャリアからデバイスを購入した顧客ほど、顧客サービスの使用回数が多い
英、米、豪、南アではSIMフリー携帯が普通であり、キャリア以外の店舗で簡単に手に入ります。キャリア店舗で購入した場合、料金が割高なことが少なくないのですが、店舗での対面での顧客サービスが必要なため、わざわざキャリアから購入しているわけです。
これらの国では日本に比べると、キャリアの割引プランなどが少ないため、Appleのデバイスが高価なのですが、それでも顧客満足度とリテンションが最も高いのは注目すべき点でしょう。
使用料金が高く、若い顧客ほど、携帯キャリアのサービス品質にシビアであることがわかります。英、米、豪、南アでは多くのキャリアが、若者を獲得するために芸能人を使用した大規模なキャンペーンや、映画無料券をつけるなどの販促活動を行っていますが、顧客サービスや接続環境の向上など「品質向上」に親近を投入した方が、ロイヤリティの醸成に遥かに効果的なのかもしれません。
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