ミャンマーの携帯電話事情(3) - スマートフォン市場はファーウェイがトップに
2015.01.15
Updated by Kazuteru Tamura on January 15, 2015, 16:00 pm JST
2015.01.15
Updated by Kazuteru Tamura on January 15, 2015, 16:00 pm JST
ミャンマー連邦共和国(以下、ミャンマー:旧称、ビルマ)ではSIMカードがようやく買い求めやすくなり、それと同時にスマートフォン市場も活性化している。通信方式の影響もありスマートフォンのバリエーションは豊富で、解放された市場にビジネスチャンスを求めて大手のグローバルメーカーではないメーカーまでも相次いでミャンマーに参入している。今回はそんな熱いミャンマーのスマートフォン事情にスポットを当てる。
ヤンゴン市内では独立した携帯電話販売店が非常に多く、屋台でも多くのスマートフォンが販売されている。販売されている端末はスマートフォンが多く、意外にもフィーチャーフォンは少ない。実は中古品であればスマートフォンとフィーチャーフォンで大きな価格差はなく、スマートフォンがよく選ばれるのである。中古品の状態によってはスマートフォンよりもフィーチャーフォンの方が高い場合もある。ミャンマーの一般市民でも手が届く価格でスマートフォンが販売されており、実際に街を歩くとあちこちでスマートフォンを手にするヤンゴン市民を見かける。
新品ではなく安価な中古が主流であるが、ミャンマーではスマートフォンが本格的に出回り始めたばかりであり、中古品の多くはミャンマーで使用されたものではなく中国から入ってきたものである。その証拠に、中国の移動体通信事業者のロゴが入った中古品が非常に多い。
ミャンマーでは、移動体通信に使用されている通信方式はW-CDMA/CDMA2000/GSM方式であり、Myanma Posts and Telecommunications(以下、MPT)がW-CDMA/CDMA2000/GSM方式、Ooredoo MyanmarがW-CDMA方式のみ、Telenor MyanmarがW-CDMA/GSM方式、Myanmar Economic Corporation(以下、MEC)が提供するMECTelがCDMA2000方式のサービスを提供している。W-CDMA/GSM方式は多くのスマートフォンが対応しているものの、CDMA2000方式は対応するスマートフォンが少ない。
MPTとMECTelのCDMA2000方式はSIMカード(R-UIMカード)を採用しているため、SIMカードを採用するCDMA2000方式に対応したスマートフォンが必要となっている。中国の移動体通信事業者である中国電信(China Telecom)がCDMA2000方式でSIMカードを採用しており、かつ周波数帯も800MHz帯(Band Class 0) で両社と共通している。そのため、多数の中国電信向けスマートフォンの中古品がミャンマーで流通している。CDMA2000方式も採用していることは、中国から輸入された中古品が多い理由の一つである。
また、ミャンマーでは据置型電話もモバイルネットワークを利用している。そのため、携帯電話販売店では据置型電話もしばしば見られる。
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▼屋台にはスマートフォンが無造作に並べられており、道行く人々が足を止める。
▼中国から輸入された中古のスマートフォンが非常に多い。化粧箱には中国電信のロゴを確認できる。
▼デュアルディスプレイを搭載したKyocera Echoの中国電信版もミャンマーに流れている。
▼携帯電話販売店で売られているZTE(中興)製の据置型電話のZTE WP826A。通信方式はCDMA方式に対応している。
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ミャンマーのスマートフォン市場のシェアは中国のHuawei Technologies(華為技術)がトップで、2位が韓国のSamsung Electronicsである。ただ、Huawei Technologiesが2位を大きく引き離しており、街で見かけるスマートフォンの多くがHuawei Technologies製である。Huawei Technologiesは2013年から、Samsung Electronicsは2012年からミャンマーに参入しており、2014年以降に相次いで参入したメーカーと比べてミャンマーでの地位を固めつつある。
また、2014年以降に参入しているメーカーの多くはW-CDMA/GSM方式に対応したスマートフォンを投入しているが、Huawei TechnologiesやSamsung ElectronicsはCDMA2000方式に対応したスマートフォンも正規に販売している。ただ、Samsung Electronics製のスマートフォンは全体的に価格が高く、低価格帯のスマートフォンが求められるミャンマーではHuawei Technologies製のスマートフォンが多い。Huawei Technologiesはラインナップの面でもSamsung Electronicsより優位であり、Huawei Technologiesがミャンマーのスマートフォン市場でトップのシェアを確保できたことは当然の結果と言える。
ミャンマーでは台湾のHTC(宏達国際電子)も忘れてはならない。シェアこそ決して高くはないが、2013年の初めにミャンマーに参入しており、早い段階からミャンマーで展開している。HTC Concept Storeとしてヤンゴンとマンダレーに旗艦店を設けており、ミャンマー向けに専用の化粧箱を用意するなど、ミャンマーへの力の入れ具合は他社以上である。ミャンマーでCDMA2000方式に対応したスマートフォンを正規に販売する数少ないメーカーでもある。しかしながら、HTC製のスマートフォンは全体的に価格が高く、低価格のスマートフォンが求められるミャンマーでは販売台数を伸ばせない状態である。
ミャンマーには韓国のLG Electronicsも参入している。ミャンマーの公用語であるビルマ語に対応したスマートフォンの投入や、LG Electronics製品を専門に取り扱う販売店の設置など、ミャンマーにおける展開は積極的である。スマートフォンの販売だけではなく、ミャンマーの大学を支援するなどミャンマーにおける活動の幅を広げており、多方面からイメージの向上を狙う。
ミャンマーのスマートフォン市場は本格的に熱を帯びてきたばかりであり、Huawei TechnologiesやSamsung Electronicsも決してミャンマーでの経験は豊富と言えない。そのため、現状はシェアが低いメーカーにもチャンスはまだまだあるだろう。
▼ミャンマーで圧倒的な強さを誇るHuawei Technologiesの広告が設置されている。
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▼ヤンゴン市内にはHuawei Technologiesの広告をラッピングしたバスが走っている。Huawei Technologiesの広告をラッピングしたタクシーも見られた。
▼ヤンゴン市内にはSamsung Electronicsの販売店が多く、ショッピングモールの中にも入居する。
▼ヤンゴン市内のHTC Concept Store。ミャンマーではヤンゴンとマンダレーにHTC Concept Storeが設けられている。
▼HTCが正規に販売するHTC Desire 600c dual simはCDMA2000方式に対応する。化粧箱はビルマ語で書かれている。
▼LG Electronicsも複数の販売店を設けている。LG Electronics製品だけではなく、移動体通信事業者のトップアップを取り扱う販売店も確認できた。
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ミャンマーには各国から様々なスマートフォンのメーカーおよびブランドが参入している。中国のOPPO(欧珀)やvivoブランドで展開するBBK(歩歩高)を筆頭に、中国のLenovo(聯想)、GiONEE(金立)、台湾のINHON(応宏)、シンガポールのSINGTECH、Cherry Mobileブランドで展開するフィリピンのCosmic Technologiesなどが相次いで参入し、ヤンゴン市内では各社の販売店や販売ブースも見られる。
これまでに中国やフィリピンなどで見てきたメーカーやブランドをまとめてヤンゴンで再び目にすることになったが、市場の開放とともにビジネスチャンスを求めて各国からミャンマーに集まっている。特に東南アジア市場を重視するOPPOやBBKは現地法人も設立しており、数多くの広告を出すなど力の入れ具合が見て取れる。様々なメーカーやブランドが参入する中で、JASやKENBOといったミャンマー発のブランドも誕生している。多種多様なスマートフォンを見られるミャンマーは、スマートフォンの楽園と言えるかもしれない。
▼東南アジア市場の強化を宣言しているOPPOはミャンマーにも進出している。
▼OPPOと並んで東南アジア市場における展開に積極的なBBKはショッピングモール内に販売店を設ける。
▼複数の東南アジアの国で展開するSINGTECHはミャンマーでも展開し、販売店も設置している。ヤンゴン市内ではSINGTECHの広告をラッピングしたバスも走っていた。
▼フィリピンからはCherry Mobileブランドで展開するCosmic Technologiesが参入した。
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ミャンマーでは2014年に新たな移動体通信事業者が参入した。新たに外資のOoredoo MyanmarとTelenor Myanmarが移動体通信サービスを開始している。MPTやMECTelが端末を販売することはなかったが、Ooredoo MyanmarやTelenor MyanmarはSIMカードやトップアップの販売だけではなく端末の販売も手掛ける。
Ooredoo Myanmarは複数のスマートフォンを用意しており、ローエンドからハイエンドまでラインナップは豊富である。低価格な端末としては中国のYulong(宇龍)が展開するCoolpad(酷派)ブランドのスマートフォンや、Cherry Mobileブランドのフィーチャーフォンも正規に取り扱う。Ooredoo Myanmarの直営店では様々なブランドの端末が並べられており、好みや予算に応じて選べる。ミャンマーの移動体通信事業者としては端末のラインナップが最も充実している。
一方で、Telenor Myanmarはラインアップが絞られており、Telenorブランドのスマートフォンとフィーチャーフォン1機種ずつを取り扱う。いずれもmaximus mobileブランドで展開するバングラデシュのQuartel Infotechの端末をTelenorブランドで販売している。スマートフォンはTelenor T200Mのみで、スペックは必要最低限に抑えられているもののシステム言語はビルマ語にも対応する。ビルマ語に対応した低価格なスマートフォンとしては良い選択肢になるはずである。フィーチャーフォンはTelenor T100Mのみが用意されている。こちらもビルマ語に対応する。ストレート式でテンキーを搭載したフィーチャーフォンで、キーパッドの言語までビルマ語対応という貴重な存在である。2機種とも低価格でビルマ語に対応している点は、ミャンマーで大きな強みとなるはずである。
Telenor MyanmarとOoredoo Myanmarは端末を購入した場合に付与する無料通信などのボーナスも用意し、端末の購入を促進する施策も見られる。ただ、ミャンマーではこれまで移動体通信事業者が端末の販売を手掛けることはなかったため、このような手法がミャンマーに根付くかは未知数である。
ミャンマーでは独立した携帯電話販売店が非常に多く、安価でミッドレンジクラスの性能を有するスマートフォンで溢れており、その選択肢は移動体通信事業者とは比べ物にならないくらい豊富である。MPT関係者によれば端末の販売を手掛けるかどうかは今後の動向次第とのことだが、スマートフォンのラインナップだけではなく販売方法も要注目である。
▼Ooredoo Myanmarの直営店に展示されているCherry Mobile M1。スマートフォンが多い中、フィーチャーフォンも販売している。
▼Telenor Myanmarの旗艦店ではTelenor T200Mが展示されている。Telenorブランドの低価格なスマートフォンである。
▼Telenor Myanmarの旗艦店に展示されているTelenor T100M。ビルマ語のキーパッドを備える。
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登録はこちら滋賀県守山市生まれ。国内外の移動体通信及び端末に関する最新情報を収集し、記事を執筆する。端末や電波を求めて海外にも足を運ぶ。国内外のプレスカンファレンスに参加実績があり、旅行で北朝鮮を訪れた際には日本人初となる現地のスマートフォンを購入。各種SNSにて情報を発信中。