グーグルがGoogle App Engineの強化を発表、その一方で問題も抱える
2010.06.14
Updated by WirelessWire News編集部 on June 14, 2010, 11:50 am JST
2010.06.14
Updated by WirelessWire News編集部 on June 14, 2010, 11:50 am JST
グーグルは先月19日に米サンフランシスコで行ったイベント「Google I/O」で、同社のクラウドプラットフォームであるGoogle App Engineに関する大きな強化を2つ発表しました。
▼Google App Engine - Google Code
1つ目はVMwareとの協業です。Google App EngineがVMwareのJavaフレームワークであるSpringフレームワークに対応すること、そしてSpringフレームワークとグーグルのGWTフレームワークの統合を発表しました。
Google App EngineはJavaでプログラミングが可能ですが、専用のプログラミング作法が必要でした。Google App EngineがSpringフレームワークに対応することで、人気のあるSpringフレームワークに対応したJavaアプリケーションが、企業内のサーバでもGoogle App Engineでもどちらでも動作するという、オンプレミスとクラウドの互換を実現することになります。
また、Springフレームワークに統合されたGWT(Google Web Toolkit)を用いることで、データ構造などを設定するとユーザーインターフェイスまで揃った基本的なアプリケーション(スカッフォルド)まで自動的に生成する機能も提供されます。ユーザーインターフェイスはすべてHTMLとCSS、JavaScriptというWeb標準で生成されるため、どんなデバイスでも動作するアプリケーションを開発できます。
Springフレームワーク、GWTのどちらもオープンソースで提供されています。つまりグーグルは、VMwareのSpringフレームワークとGWTを統合することで、クロスクラウドかつ、クロスデバイスを実現するオープンソースレイヤでGoogle App Engineを覆うことになります。グーグルのクラウドはアプリケーションの互換性、そして開発生産性を一気に高めることになりそうです。
▼SpringSourceのSpringフレームワークを用いることで、VMwareで仮想化されたサーバ、とGoogle App Engineのどちらでも動作するJavaアプリケーションが開発可能
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もう1つの発表はエンタープライズ向けにフォーカスした「Google App Engine for Business」の発表です。
いままでのGoogle App Engineの機能に加えて「セキュリティポリシーなどを管理するコンソール」「プロフェッショナルサポート」「企業向きのSLA」「SQLデータベースのサポート」「分かりやすい価格」を提供します。
特に注目されるのはSQLデータベースのサポートです。いままでGoogle App Engineではキーバリュー型のデータストアしか使うことができませんでした。しかしほとんどすべてのビジネスアプリケーションはリレーショナルデータベースのうえで動作するようになっているため、Google App Engineはビジネスアプリケーションを動作させるクラウドとしては使いにくいものでした。
グーグルはその弱点を埋めるためにSQLデータベースのサポートに踏み切ったことになります。実際にSQLデータベース機能が提供されるのは後日の予定で、どれほどスケーラビリティがあり、どのような性能になっているのかについては触れられていません。
しかしグーグルが本気でクラウドをビジネスアプリケーションのプラットフォームにすることが明らかになったことは重要な出来事だといえるでしょう。
こうしたビジネス分野での本格的な取り組みへの表明とは裏腹に、現実のGoogle App Engineでは問題が起きています。この数週間データストアに問題が発生しており、深刻な性能低下に見舞われているのです。
この原因についてグーグルは、2カ月ごとに25%増のペースでデータストアの利用が拡大していることを挙げ、これを収容するためにデータセンターの拡張やデータセンター間での移動などの対応が行われているが、まだ追いついていないとのこと。
現在グーグル社内ではデータストアに関するほかのプロジェクトをいったん保留にし、この問題解決に注力しているそうです。それでもこの問題はあと2週間は続くだろうとの見通しをGoogle App Engineのブログ「Datastore Performance Growing Pains」で明らかにしています。
同社クラウドのビジネス利用が本格的に始まれば、こうした長期間の深刻な性能低下は許されません。ビジネス分野への本格参入の前にグーグルとしては必死になってこうした問題を解決し、同社のクラウドが安心して利用できるプラットフォームであることを時間をかけて証明しなければならないでしょう。
文・新野淳一(ブログ「Publickey」 Blogger in Chief)
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