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ノキアの記者会見:概要と所感

2011.02.14

Updated by Tatsuya Kurosaka on February 14, 2011, 18:41 pm JST

MWC開幕に先立ち、日曜夜にノキアのプレス・ブリーフィングが開催された。すでに第一報は海部さんからご報告があった通りだが、同社のエロップCEOと記者等との質疑応答も含め、気になった点をまとめておく。

【マイクロソフトと提携した理由】
WindowsPhoneは魅力的なプラットフォームであり、先進的である。またMSにはbing等のネットワーク上の資源もあり、iPhoneやAndroidとの戦いにおいて競争力がある。

【HTCとの差別化】
ノキアには強力なエコシステムがある。またWindowsPhoneはiPhoneやAndroidと戦えるエコシステムである。ストアやMarketplace等のプラットフォームの観点においても、仕入れの共同化や統合も視野に入っている。

一方ノキアとMSはモバイル分野で強固な知的所有権を互いに有している。これを活用することのできる提携であると理解している。このように、強力な両者のタッグによって、コンシューマから信頼と選択を得ることができる。

【Symbianの将来】
基本的に継続していく。WindowsPhoneとの棲み分けは市場分野に応じて可能だと考えている。Symbianのコスト優位性や柔軟性、また既存のデベロッパーコミュニティには、引き続き重要な役割がある。

【MeeGoの将来】
こちらも継続する。少なくとも今後プロダクトを1つ発表する予定である。

【提携の将来】
資本面も含めて、現在の関係が現時点では双方にとってベストであると理解している。

【端末のリリース時期】
まだ明らかにはできないが、年内のリリースに向けて鋭意準備を進めている。

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【筆者の所感】
第一印象は「準備不足」というものである。すでに報道されているように、今回は十分なプランやロードマップの提示がないままの発表となったため、ノキアの株価が下落するなど、市場からは手厳しい反応が事前に示されていたが、プレス・ブリーフィングでも状況は変わらなかった。

特に、SymbianとMeeGoの行く末については、いずれも継続とされたものの、会場でも質疑が多く寄せられていた。前者については、市場ごとの役割分担という説明自体は理解できるものの、それが新興国等の低付加価値市場を意味するのであれば、昨今の業績悪化の要因を分析しきれていないことになる。また後者についてはWindowsPhoneと完全にバッティングするため、本当に継続できるのかは懐疑的である。

また、両者の関係が今後株式の持ち合いや、場合によってはMSを含めた他のプレイヤーによるノキア買収につながる可能性もある。すでに資本市場では、ノキアの行く末について数年前から噂話が絶えない状況だが、こうした背景もあり、「今回の提携が終着駅とはとても思えない」という意見が、会場を支配していた。

エロップCEOは、会場からの意地悪な質問にも、極めて誠実に回答していた。ただそうした質疑応答も含め、全体に「強固なエコシステム」という言葉だけを強調する光景が目立ち、今回の提携が十分な準備期間を得ていないであろうことが、改めて浮き彫りになった。

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クロサカタツヤ(くろさか・たつや)

株式会社企(くわだて)代表。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)在学中からインターネットビジネスの企画設計を手がける。三菱総合研究所にて情報通信事業のコンサルティング、次世代技術推進、国内外の政策調査・推進プロジェクトに従事。2007年1月に独立し、戦略立案・事業設計を中心としたコンサルティングや、経営戦略・資本政策・ M&Aなどのアドバイス、また政府系プロジェクトの支援等を提供している。