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公的データ活用基盤整備を目指す、オープンデータ流通推進コンソーシアム設立

2012.07.30

Updated by Asako Itagaki on July 30, 2012, 08:00 am JST

7月27日、東京大学山上会館にて、「オープンデータ流通推進コンソーシアム」設立発表会が開催された。

公共機関等が調査・整備し保有しているデータは国民の貴重な資産、資源であるにもかかわらず、現在必ずしも有効に活用されていない。昨年の東日本大震災からの復旧、復興の教訓も相まって、主体、分野・領域に閉じない情報流通および利活用のための「オープンデータ」環境整備が必要であることが2011年7月に総務省情報通信審議会中間答申において提言され、またIT戦略本部では今年7月4日に「電子行政オープン戦略」が策定された。こうした背景のもと、オープンデータ流通環境の実現に向けた基盤整備を推進することを目的として、産官学が共同で立ち上げたのが本コンソーシアムになる。三菱総合研究所が事務局を担い、オブザーバーとして、総務省、内閣官房、経済産業省などが参加する。

設立発表会では、まず、会長の三菱総合研究所理事長 小宮山 宏氏が、同日午後開催された発起人会での理事会の承認とコンソーシアム設立を報告した。日本の現状を、「京コンピューターをはじめとするハードウェアやネットワーク環境では世界トップクラスにありながら、社会の中での情報活用は不十分」と指摘し。国のプロジェクトや官公庁、自治体、大学などが持つ情報を共有するところからまずはスタートして情報を皆で扱えるようにすることで状況は変わると挨拶した。

▼コンソーシアム設立を報告する小宮山 宏会長
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コンソーシアムの当面の主な活動は、オープンデータ推進に向け、委員会を設けて研究活動と普及啓発活動に取り組む。研究活動では、オープンデータ推進に必要な技術標準のあり方とライセンスのあり方を検討する。また、オープンデータ推進の普及啓発活動として、情報発信・情報共有を行い、またオープンデータ推進による新たなサービス等の検討を行う。

技術標準化については、技術委員会(主査:東京大学大学院情報学環教授 越塚 登氏)で、主にデータの形式とAPIをはじめとするデータの取扱についての標準化をはかる。ライセンスについては、データガバナンス委員会(主査:一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授 井上由里子氏)で、二次利用・商用利用を想定した標準的な利用条件の整備をめざし、まずは諸外国における公共データの利用ルールについて調査研究を行う。

普及・啓発については、利活用・普及委員会(主査:慶應義塾大学メディアデザイン研究科教授 中村伊知哉氏)による情報発信を行う。「積極的にデータを提供する、提供させる、利活用することがポイント」(中村教授)として、近日中にウェブサイトを立ち上げ、オープンデータの成功事例を発信していくこと、また9月にはシンポジウムを開催することを表明。オープンデータ活用のサービスコンテストなども企画中とのことである。

コンソーシアムは8月から順次活動を開始し、2013年3月以降には年次報告会を開催する予定。また、8月から広く会員募集を開始する予定である。

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発表会の後半は、会長の小宮山氏および顧問の坂村 健氏(東京大学大学院情報学環教授)、徳田英幸氏(慶應技術大学大学院政策・メディア研究科委員長)、渡辺捷昭氏(日本経済団体連合会副会長・情報通信委員長)によるミニ講演会が行われた。

▼小宮山氏は、次の時代を作る「プラチナ革命」実現のためには「オープンデータ推進によりデータコストが下がること」が重要であると指摘。
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▼坂村氏は、オープンデータ推進のために、技術標準化と同時に制度設計の見直しの重要性を訴えた。
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▼徳田氏はサービスの視点からオープンデータ活用のためのモデルを提示。
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▼渡辺氏は産業界からの期待として、二次利用のルール整備、ワンストップ化と、データ整備に今までお金をかけられなかった中小企業にも活躍のチャンスを期待すると述べた。
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また同じく顧問の村井 純氏(慶應大学環境情報学部長)からのビデオメッセージが寄せられた。

▼村井氏は、ネット上のデータが位置情報・タイムスタンプを通して現実空間と結びつくサイバーフィジカル空間を前提とした情報活用のプラットフォーム化の重要性を説いた。
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【報道発表資料】
「オープンデータ流通推進コンソーシアム」を設立
~公共情報等のオープンな利活用の実現により社会・地域・産業の活性化を推進~

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板垣 朝子(いたがき・あさこ)

WirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。