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DNP、インドネシアでICカード発行に向けて新会社設立:インドネシア人の財布の中はカードでいっぱい

2016.03.08

Updated by Hitoshi Sato on March 8, 2016, 07:28 am JST

大日本印刷(DNP)は2016年3月2日、インドネシアのキャッシュカード製造・販売最大手であるPT. Wahyu Kartumasindo International(WKI)と、ICカード発行を行う合弁会社PT. Wahyu DNP Bureauを設立することを発表した。

PT. Wahyu DNP Bureauは、インドネシア市場向けにICキャッシュカードなどの発行サービスを提供していく。DNPは日本のICカードトップメーカーとして、金融、通信、流通、交通など、さまざまな分野にICカードおよび関連システムを提供してきた。

DNPはインドネシアを重要市場と捉え、インドネシアのキャッシュカード分野でトップシェアの実績を持つカードメーカーWKIと提携し、ICカード発行を行う合弁会社を設立する。WKIはICカード、SIM製造を行っており、VISAやマスターカードの認定時工場にもなっている。

今後DNPは、日本国内のICカード事業で培った技術力と、WKIのインドネシアにおける営業・製造体制に加え、新会社としてICカード発行の機能を整備することで、インドネシアにおけるカード事業を拡大していく予定。インドネシアでのICカードおよび関連製品について、2020年までの累計で20億円の売上を見込んでいる。

増加しているインドネシアでのカード

インドネシアではたしかにICカードが増加している。ジャカルタではコンビニにもATMが設置されているし、街では多くのATMを見かける。そしてジャカルタの公共バス「トランスジャカルタ」の「コタ~ブロックM」区間の路線などでも、ICカードによる乗車を開始した。現金の利用は不可で、強制的にICカードで支払わなくてはいけない。まだ慣れていないのでちっとも混雑は解消されていないが、現金で払っていた方が便利でよかったという人もICカードでないと乗車できないので、必然的に普及している。

インドネシアではさまざまな店舗がICカードだけでなく紙やプラスチックで多様なカードを発行している。一番人気あるのはレストランやスーパーマーケットでスタンプを押してくれるカードで、スタンプが貯まったら何かサービスでもらえたり、割引されるカードである。インドネシアのローカルのヌードルショップ「BAKMI GM」もポイントカードを提供しており、利用者の人気も高い。

格安のAndroidスマホが主流のインドネシアでは、それらの端末は当然NFCには対応していないので、「モバイルウォレット」などというスマートなサービスはほとんど使われていない。今でも紙カード・プラスチックカードが主流であり、インドネシア人の財布はカードでパンパンに膨れ上がっている

たしかにインドネシアではICカードの需要も高いだろうが、この大量に財布の中に溜まっているカードをなんとかしてほしいと思っているインドネシア人も多いのだ。

▼ICカードでの乗車がはじまった公共バス「トランスジャカルタ」の駅
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▼ICカードの乗車は開始したものの、混在は解消されていない。
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▼インドネシアのローカルのヌードルショップ「BAKMI GM」
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【参照情報】
インドネシアのWahyu Kartumasindo InternationalとICカード発行の合弁会社「PT. Wahyu DNP Bureau」を設立

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佐藤 仁(さとう・ひとし)

2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。