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読んでいない記事についてすら「知っている」つもりになってしまう人々

2023.12.07

Updated by WirelessWire News編集部 on December 7, 2023, 07:38 am JST


対面で誰かと話をするときに読んでいない記事を共有するか?

情報化社会という言葉が使われ出してから随分経ちました。今では、インターネットで情報を検索したり、その情報を他人とSNSを通じて共有したりすることが普通になりましたね。

さて、あなたのその「情報」、本当にあなたは「知って」いますか?

何を言っているんだ、と思われたかもしれません。しかし考えてみてください。あなたは、タイトルだけ読んだオンライン記事を他人に共有したことはないでしょうか?

そのとき、あなたはそのオンライン記事の内容をきちんと「知って」いたと言えるでしょうか。実は、とある研究によると、Twitter上で共有された記事リンクのうち、なんと半分以上が一度もクリックされておらず、当然、読まれてもいないというのです(注1)。

これはある意味ではDX化による罠でもあります。もし、対面で誰かに記事を共有するとしたら、タイトルだけ読んだ状態で共有しようと思うでしょうか?

一応、記事をざっと読んで、ふむふむなるほどこういうことが書いてあるのか、と他人に概要くらいは話せるように内容を確認して、それからようやく、誰かに共有しようと考えるのではないでしょうか。

ところがSNSでは、その共有ボタンを押せば、ほらすぐに、内容を正確には「知ら」なくても、気軽に情報を共有できてしまうというわけです。


共有しただけで「知っている」

ところが、私たちは、知らないはずのその記事の内容を、自分が他人に共有したというだけで、なぜか中身まで知っているつもりになってしまうようだ、というびっくりするような結果を、テキサス大学のウォード氏とその共同研究者らが示しています(注2)。

まず、ウォード氏は、大学生参加者にSNS上で記事を読んだり共有したりする機会を与えました。参加者によって共有された記事のうち4割は、最後まで読んだ上で共有されていましたが、2割は途中まで読んだ状態で、残りの4割は全く読まずに共有されていました。先ほど紹介した研究と似たような結果です。

その後、自分はどのくらいそのトピックについて知っていると思うかを主観的に回答してもらいます。同時に、トピックに関する客観的な知識もテストしました。

その結果、参加者らは、共有した記事のトピックについての客観的知識は決して多くはなかったにもかかわらず、主観的にはよく知っているつもりになってしまっていたというのです。

注1)Gabielkov, M., Ramachandran, A., Chaintreau, A. & Legout, A. Social Clicks: What and Who Gets Read on Twitter? in Proceedings of the 2016 ACM SIGMETRICS International Conference on Measurement and Modeling of Computer Science 179-192 (Association for Computing Machinery, 2016).

注2)Ward, A. F. , Zheng、 J. (frank) & Broniarczyk, S. M. I share、 therefore I know? Sharing online content ‐ even without reading it ‐ inflates subjective knowledge. J. Consum. Psychol. (2022) doi:10.1002/jcpy.1321.

※本稿は、モダンタイムズに掲載された記事の抜粋です(この記事の全文を読む)。
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