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ScoreCardの7つのカテゴリー

Netflix日本上陸で、ネットワーク評価にも「黒船」がやってくる〜速度と価格にとどまらない、「カスタマー・エクスペリエンス」を測る指標を導入するには

Netflix with ISP Speed Index will bring big impact to Japan

2015.08.25

Updated by 特集:トラフィック可視化で変わるネットワークの姿 on August 25, 2015, 17:16 pm JST Sponsored by プロセラネットワークス ジャパン

9月2日、日本でもNetflixがサービスを開始します。膨大なビデオコンテンツと一緒に上陸するのが、Netflixがサイト上で公開している「ISP Speed Index」。これは日本のネットワークサービス評価に大きなインパクトを与える可能性を秘めています。「カスタマー・エクスペリエンス」によるネットワーク品質の可視化を可能にする新たなソリューション「ScoreCard」について、プロセラネットワークス プロダクト&ソリューション スペシャリストのアントン・グンナーソン(Anton Gunnarsson)がご紹介します。(構成:WirelessWire News編集部 板垣朝子・写真:須賀喬巳)

アントン・グンナーソン

OTTによるユーザー体験評価の落とし穴

菅野:Netflix上陸にあたってプロセラネットワークスがぜひご提案したいのが、「ネットワークサービスの、スピードと価格以外の評価基準の導入」です。そのために有用な弊社の新しいソリューションをアントンに紹介してもらいますが、その前に、Netflixの「ISP Speed Index」によって、今、海外のオペレーターにどのようなことが起こっているのか、簡単に私からご説明します。

「ISP Speed Index」は、ユーザーがNetflixのサービスをどのぐらいの通信速度で利用しているかをISP別に集計し、国ごとにランキングしたものです。

▼ISP Speed Indexの例
ISP Speed Indexの例

これは、Netflixのユーザーにとってみれば、従来のオペレーターごとの「回線速度」と「価格」ではなく、実際にNetflixをどのくらい快適に利用できるかを判断できる、全く別の側面から見たオペレーター評価の指標になります。しかしオペレーターにとっては、大きな落とし穴です。

その理由は、これがあくまでも「Netflixを現在利用しているユーザーが、実際に接続している速度」に基づくランキングだということです。もしも自社ユーザーでNetflixを利用しているユーザーの多くが「低速で安いプラン」の加入者であった場合、当然、Netflixへの接続速度も遅くなり、順位は下がってしまいます。しかしそのようなことは、ISP Speed Indexの画面からはわかりません。

オペレーターにしてみれば、「安いプランでNetflixを使っている加入者には、プランを変更することでより快適に利用できることをお知らせして、アップグレードしていただく」ようにしたいですし、そうすることでISP Speed Indexの順位も上がるチャンスがあるはずです。しかし実際には、加入者は、Netflixのウェブサイトを見て、「他社に乗り換えればもっとNetflixを快適に利用できる」と考え、乗り換えが発生してしまいます。

グンナーソン:Netflixの例に見るように、ここ数年のトレンドとしては、コンテンツプロバイダー、OTTプレイヤーなどが、「顧客がどのような体験をしているか」によってオペレーターにグレードをつけるようになっています。そして実際に海外では、それらのグレードで「劣っている」とされたことが原因で加入者が減少してしまったオペレーターもあります。とても大きな問題です。

速度と価格だけではなく、かといってOTTによる一方的な評価でもなく、加入者がさまざまなサービスを利用するときにどのような体験が得られるのかを明らかにする、わかりやすい指標の確立が急務となっているのです。

CEMのためにはサービスカテゴリーごとの測定が重要

グンナーソン:このような課題にまさに応えられるのが、今日紹介させていただく私達の新しいソリューション「ScoreCard」です。これは、ネットワークのクオリティをユーザーの用途に合わせて測定して、カスタマー・エクスペリエンスをわかりやすくスコア化するというものです。固定ネットワークもワイヤレスネットワークも、両方診断できます。まさしく、「加入者がサービス利用時にどのような体験を得られるか」の指標としても機能します。

アントン・グンナーソン

元々のソリューションの目的はカスタマー・エクスペリエンスについて、深い洞察を得ることです。その背景には、ここ数年のトレンドとしてCEM(Customer Experience Management)が重要な課題になっており、事業者も投資を始めているということがあります。その投資に見合った形でどのようにしてベストなカスタマー・エクスペリエンスを与えるかが課題となっています。

投資分野としてはネットワーク構築、最適化ツールの導入などがありますが、それが必ずしもカスタマー・エクスペリエンス向上につながっているとは限りません。投資の優先順位を決めるためには、CEMの中で優先する項目が何かを理解する必要があります。そのために、ネットワーク測定をすることが必要なのです。

しかし、ネットワークの測定は、ジャングルの中で動くようなものです。どのようなKPIにもとづいてアクションを取ればよいのか、理解することも難しいでしょう。NetflixのISP Speed Indexのようなスコアを提示されたとしても、問題がどこにあるのか――自社のネットワーククオリティなのか、加入者の利用しているプランなのか、それともロケーションなのか、端末なのか――それがわからないからです。対して、プロセラが提供するScoreCardは、わかりやすいスコアで表されていて、かつ理由を深堀りできる評価です。

ScoreCardは、オペレーターのトラフィックを常時監視しており、「ウェブ」「ストリーミング」「ゲーム」「ソーシャルネットワーク」「ダウンロード」「アップロード」「ボイス」の7つのサービスカテゴリーにブレイクダウンします。

▼ScoreCardの7つのカテゴリー
ScoreCardの7つのカテゴリー

菅野:サービスカテゴリーごとに良いカスタマー・エクスペリエンスを得るための要件は異なります。例えば、スループットが高くても遅延が大きいネットワークは、ゲームをしているユーザーにはストレスですが、ストリーミングユーザーは快適に利用できます。そうした要件を考慮して、加入者ごとにどのような体感が得られているかを算出するわけですね。

グンナーソン:そうです。そして個別のスコアを集計することによって、ネットワーク全体のカスタマー・エクスペリエンスにAからFまでのスコアをつけます。Aが最も良い評価、Fは悪い評価です。評価の対象となるのは全てのトラフィックで、サービス別、デバイス別や、時間帯別、場所別にブレイクダウンして集計することで、評価に影響を与えているのは何なのかを明らかにできます。

分析とアクションが連携してネットワークもサービスプランも最適化

グンナーソン:プロセラのソリューションの特徴は分析とアクションが連携できることです。ScoreCardで取得したデータから、ネットワークのある部分が過負荷になっていれば、NFVと連携してその部分だけスケールアップするといったことが自動化できます。

実際に適用してみると、固定ネットワークのユーザーは当然ですが同じ場所にいますから、だいたい毎日同じような変動があります。夜の時間帯がピークアワーで、スコアが下がります。モバイルユーザーは1日2回、昼の12時半頃と夜の7時から9時頃がピークアワーになります。ピークアワーのスコアをブレイクダウンして見ていくことで、特定のロケーションで問題が生じているのか、特定のデバイスに問題が生じているのか、といったことが分かり、お客様からクレームが入る前に対策が可能になります。

また、全てのトラフィックが観測対象になっていますから、個々の加入者のロケーションやサービスレベルも必要であれば見ることができます。コールセンターでクレームを受けた時に、お客様がどの場所でどのレベルのサービスを受けていたのか、同じロケーションにいた他の加入者はどのようなサービスレベルだったのか、あるいは他のロケーションではどのようなサービスレベルだったのか、といったことを確認できます。

菅野:同じ時間帯に同じ場所にいる人のサービスレベルが軒並み下がっているようであれば、ロケーションに問題があるので設備投資により増強する意味がある、と判断できますね。

グンナーソン:そうです。逆に、その人だけが不満を訴えていて他の人のサービスレベルが下がっていないようなら、端末に問題がないかチェックしたり、使い方をアドバイスすることができます。例えば、モバイルと固定をバンドルで提供しているオペレーターであれば、モバイルではなくWi-Fi接続で固定回線を使うようにお勧めして、ユーザー・エクスペリエンスを上げていただくことができます。

また、適用事例として、自社の加入者がどこのローミングサービスを利用しているのか、ローミングパートナーごとのScoreCardを明らかにできます。パートナーのネットワークから自社ネットワークへのトラフィックをモニタリングしてインターネットと比較することで、ローミングパートナーのスコアを測定できます。

菅野:オペレーターはローミングのために高いコストを払っていますから、どのようなサービスを受けているかを明らかにするのは重要なことですね。

用途の多様化にフォローアップできていないネットワーク評価基準

グンナーソン:ところで菅野さん、私に日本の市場のことを教えて下さい。オペレーターは加入者にどんなプランを提供しているのですか?速度別にグレードがあるのですか?それともデータ容量と価格をバランスさせるプラン?

菅野:基本はダウンロード速度・価格・容量で設計されていますね。速度は最大ダウンロード速度が注目されて、広告でも強調されていますが、ご存知の通り、常に表示どおりの速度が出るわけではありません。価格はもちろん重要です。

菅野

ScoreCardはCEMや投資最適化のための指標ですが、一般にも公開することで、オペレーター比較の新しい指標にもなるでしょう。雑誌などで公開されているオペレーター比較のほとんどはダウンロードスピードだけを指標にしていますが、どんなにダウンロードが早かったとしても、ネットワークに接続できるまでに数秒かかればユーザーの体感は悪いでしょう。ScoreCardの7つの指標でスコア化することで、ユーザーの選択基準は多様化するのではないでしょうか。

グンナーソン:OTTのサービスについてもお客様は注目されるはずですから、そこに着目して選択できるようにするのが重要でしょう。例えばゲームに特化した低遅延ネットワーク、ストリーミングに最適化したスループットが高いネットワークなど、「高速で大容量で安い」以外にも差別化のやり方はあると思います。

菅野:昔の通信事業者が提供していたのは音声の電話サービスだけでしたから、音声品質だけが重要でした。そして次に、ネットへの接続サービスを提供するようになり、加入者がメールやウェブを使うようになったので、ダウンロード速度が重要な指標となりました。今はネットの使い方が変わってきているのに、評価指標はそこで変化が止まってしまっているんですね。

SNSを利用する人にとってはアップロード速度も重要ですし、Wi-Fiのアップロード速度が遅いスタジアムには若い人が観戦に来ない、という話もあるそうです。SNSやゲームなど、ユースケースが増えており、それぞれに対応するスコアを表示することでユーザーの選択肢が増えるし、オペレーターも適切にカスタマー・エクスペリエンスを評価できます。

自動車とくらべてみるとよくわかると思いますが、最高速度だけで車を選ぶ人はいませんよね。スピードを重視する人もいれば、足回りを重視する人、乗り心地を重視する人、燃費を重視する人、様々な人がいるはずです。通信サービスも同じように、好みで選択できるようになれば、オペレーターもそれに合わせてプランを設計し、ネットワークを構築できるようになるでしょうし、それはMVNOにとっても新たなビジネスチャンスになるでしょう。

グンナーソン:今は7つのカテゴリーで評価していますが、IoTをやM2Mなど、サービスが増えてくれば、当然カテゴリーは増やして行かなくてはいけないと考えていますし、メトリックス(尺度)もネットワークの進化にあわせてアップデートしていかなくてはいけないと考えています。今のところ、AからFの評価のうち「D」が中央値になるように指標化していますが、今の「D」評価のサービスも3年前の基準で見れば最高クラスのサービスです。主観的な使い方を基準に、毎年スコアは見なおさなくてはいけませんし、新しく誕生したサービスに適したネットワークの特性が既存の7カテゴリーと異なっていれば、新しいカテゴリーを作らなくてはいけません。

アントン・グンナーソン

ストリーミングについても、Netflixのような高画質の映画やドラマコンテンツだけでなく、Youtubeのかわいい猫の動画のように、自宅で撮影した短い動画がストリームされるようになっています。この分野でも、IoTが大きなパラダイム・シフトになると考えています。具体的にどうなるのか予測するのは難しいですが、例えば猫のビデオは「猫を撮ったビデオ」ではなく「猫が撮ったビデオ」になるかもしれません。猫の首輪に仕掛けられたカメラからのストリーミングのようなことが流行れば、それも帯域を使いますよね。

日本のマーケットではM2MやIoTの通信が活発になっていると聞いています。ScoreCardの常時全てのトラフィックをモニターしているシステムは良いと思います。ネットワークにつながっている自動販売機は、自分からカスタマーサービスに連絡して「つながりにくいんだけど」とクレームすることはできませんからね。モノのインターネットを動かすためには、ネットワーク品質を常時モニターしておくことが大事です。ネットワークが過負荷な状態になったら、ポリシーを追加して輻輳管理ができます。

ネットワーク評価の新たな基準を目指す

菅野:Netflixが日本でサービスを始めたら、日本でも「ISP Speed INDEX」が公開されるでしょう。これをきっかけに、ネットワークの「評価」のあり方が大きく変わる可能性があります。オペレーターは、トラフィック対策の投資だけではなく、一方的なスコアがひとり歩きすることがないよう、カスタマー・エクスペリエンスをわかりやすく提示する必要があると思っています。プロセラのScoreCardを使えば、サービスプランごとのScoreCardをウェブサイトで公開しておき、お客様が支払った対価に対してどのような体験を提供するサービスが受けられるかをわかりやすく提示することができますし、お客様の用途に合わせた新しい切り口のプランも提示しやすくなります。

また、比較の方法も、いくつかの場所で同時に条件を揃えてファイルをダウンロードするような形のもので、時々刻々と変わる生き物であるネットワークを比較し評価するには条件が限定されているし、サンプルも少ないと思っています。もしもScoreCardでオペレーターを比較することができれば、ネットワークの全トラフィックを元にしたスコアにもとづいているので、フェアな比較ができると思います。

グンナーソン:まだScoreCardのソリューションは新しいですが、多くの通信事業者様に導入していただき情報を共有していただければ、グローバルでの共通スコアを使ってアジア・ヨーロッパ・アメリカのネットワークを比較するようなこともできます。ネットワーク全体の状態のレポートを出すこともできるようになるでしょう。そのためにも、日本で多くのオペレーターに導入していただくよう、頑張らなくてはいけませんね、菅野さん。

菅野:そうですね。興味をお持ちいただいたオペレーターの皆様は、ぜひお問合せ下さい。お待ちしております。

アントン・グンナーソンと菅野

ネットワーク・スコアを可視化へ導く プロセラネットワークスのScoreCard
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