WirelessWire News Technology to implement the future

by Category

「SEECAT(テロ対策特殊装備展)」イスラエルブース参加企業に見る最新技術

「SEECAT(テロ対策特殊装備展)」イスラエルブース参加企業に見る最新技術

2018.11.13

Updated by Hitoshi Arai on November 13, 2018, 11:35 am JST

10月10日から12日の3日間、東京ビックサイトでSEECAT(テロ対策特殊装備展)が開催された。警察・消防・自衛隊など、治安に関わる業務の関係者に入場を限定したクローズドの展示会であり参加登録には出展者からの招待が必要となる。

日本企業の参加は計128社、海外からは18の企業・組織が参加した。在日イスラエル大使館経済部は、毎年このSEECATでイスラエルブースを出展し、本国からも参加企業を募って有望な企業の紹介をしている。

今年参加したのは、以下の11社であり、海外参加企業の6割に達していた。

OCTOPUS
ASINE
RT LTA SYSTEMS LTD
VERINT
MAGNA
AGENT VIDEO INTELLIGENCE
SHILAT OPTRONICS
D-ID
CELLEBRITE
NETLINE
BRIEFCAM

各企業の展示概要を紹介する。

・OCTOPUS
Physical Security Information Management system (PSIM)と呼ばれる統合セキュリティ情報管理システム。監視カメラや火災警報装置、レーダーなど様々な既存の装置・システムをAPI連携し、統合して1カ所で運用管理することができる。「Vendor Agnostic(ベンダー非依存)」ということで、既存資産をそのまま使いながら、ビルや工場といったレベルから、より大規模のインフラまで管理することができるプラットフォームである。

・ASINE
航空宇宙や、自動車、医療機器などのミッションクリティカルな産業システム用のSSDメモリーやコンピュータボードを提供している。処理するデータの暗号化だけではなく、万が一ハッキングされた場合には、最終手段として自らデータを消してしまうself-distructionの機能を持っている。ノベルティの中に、実際のボードやチップが展示されており(写真参照)、今回の展示の中で最も興味を持たされた企業である。既に多くの日本企業も顧客であり、日立、東芝、三菱等の名前もあった。

▼写真1 組み込み用メモリーボード(写真中央のプラスチックケース内)
写真1 ダミーですダミーですダミーです

・RT LTA SYSTEMS LTD
監視用のバルーンを提供する。地上300mや500mの高度にバルーンを係留し、長時間安定して監視カメラや計測機器を運用することが可能。バルーンの素材に特徴があり、ヘリウムの漏れが最小化されているので、1週間連続で監視や計測に利用できる。既に多くの国々に配備されているという。

・VERINT
既に日本法人もあるセキュリティ・サービスの大手。今回展示していたのは、5年前にVerintが買収したSenseCyという企業が提供するCTI(脅威インテリジェンス)のソリューション。既に日本でも使われているKELAやIntSightはクローラーにより求める「情報を収集してくる」ツールだが、SenseCyはコンピュータに頼るだけではなく、アナリストの専門知識も併せるBoTとHumintが連携した分析サービスである。

・MAGNA
国境や沿岸の監視、ドローンの検知などを目的に、監視カメラの映像解析ソリューションを提供する。監視場所、対象に応じて、AIにより「正常状態」を学習し、それを元に「異常」を検出する。従って、個々の案件がすべてテーラーメードのソリューションとなる。何を「異常」として検知するか、も監視対象ごとの学習から個別に設定する。展示では、例として駐車場の監視をデモしていたが、夜間に複数の人間が一定時間以上集まっているような状況を駐車場という環境にはそぐわない異常として検出していた。

・AGENT VIDEO INTELLIGENCE
こちらも映像解析のソリューションを提供する。解析エンジンはAWS上にあり、Analytics as a Serviceを提供する。機械学習機能を応用して、様々なイベントをリアルタイムで検知する。セキュリティを目的とした異常検知をはじめ、道路交通量のモニター・解析、店舗内の顧客の動線解析などにより、ビジネスに反映できるインテリジェンスを生成する。映像を取得するカメラの数などはスケーラブルなので、大規模な社会インフラなどへの応用も可能。

・SHILAT OPTRONICS
監視用バルーンだけでなく、それに搭載するカメラ、ナイトビジョンのゴーグルなど、ホームランドセキュリティに利用する各種電子光学製品を開発。顧客のニーズに対応したテイラーメードのソリューションを提供する。

▼写真2 バルーンにぶら下げる監視カメラ
写真2 ダミーですダミーですダミーです

・D-ID
10月12日に公開した「サイバー・セキュリティ業界の鳥瞰図」でも紹介した顔認識アルゴリズムを提供する企業。独自のアルゴリズムと画像処理技術、ディープラーニング技術により、特定の顔写真を「保護されたバージョン」に再構築する。再構築された写真は、人間の目には違いが分からないが、通常の顔認識アルゴリズムでは認識されなくなる。欧州のGDPR規制では、顔写真も重要な個人情報であり、保護することが求められている。D-IDの技術を用いることにより、社員のIdentityの保護やバイオメトリック・データベースの保護に応用することが可能。

・CELLEBRITE
ソーシャルメディア、インスタントメッセンジャー、クラウドストレージなどの様々な公開データ、法的に承認された非公開データの情報源から、証拠保全、調査分析を行うディジタル・フォレンジックと呼ばれるサービスやツールが利用されている。これらのフォレンジック・ツールの管理を簡素化し、デバイスの設定変更や使用状況の自動収集を容易にすると共に、証拠の完全性を保証する。法執行機関、軍、情報機関等に利用されるディジタルインテリジェンス・ソリューション。

・NETLINE
4G/LTE技術に基づく、セキュアなプライベート無線通信ネットワーク(セルラー/IP)を構築する。音声やデータはすべて暗号化される。携帯式、車載式の独立した基地局を相互接続し、通信範囲の拡大も可能。また公衆網の加入者との通信もできる。また、カウンタードローンとして、検知やジャミングの技術も有する。

・BRIEFCAM
今年、キャノンが買収したことで有名になった映像解析ソフトウエアの企業。ビデオ映像を解析することで、消費者の行動を分析したり、トラヒックの最適化、大規模イベントでの群衆のマネジメントなどを可能にする。中核となる技術はVideo Synopsisと呼ばれる映像のサマリー機能で、これにより高速で効率よく映像を解析することができる。

イスラエルイノベーション イスラエルイノベーション特集の狙い

WirelessWire Weekly

おすすめ記事と編集部のお知らせをお送りします。(毎週月曜日配信)

登録はこちら

新井 均(あらい・ひとし)

NTT武蔵野電気通信研究所にて液晶デバイス関連の研究開発業務に従事後、外資系メーカー、新規参入通信事業者のマネジメントを歴任し、2007年ネクシム・コミュニケーションズ株式会社代表取締役に就任。2014年にネクシムの株式譲渡後、海外(主にイスラエル)企業の日本市場進出を支援するコンサル業務を開始。MITスローンスクール卒業。日本イスラエル親善協会ビジネス交流委員。E-mail: hitoshi.arai@alum.mit.edu