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「LTE展開は急ぐ必要なし」 - 欧州通信市場に関するレポート発表

2010.04.15

Updated by WirelessWire News編集部 on April 15, 2010, 11:22 am JST

戦略コンサルティング会社のアーサー・D・リトル(Arthur D.Little:以下、ADL)と証券会社イグザーヌBNPパリバ(Exane BNP Paribas)が共同でまとめた欧州通信業界に関するレポート"Mobile Internet: Blessing or Curse?"が4月13日(現地時間)に公開された。

このレポートによると、2015年までに欧州でのモバイル・データのトラフィック量がに30倍に増え、また市場の売上規模は270億ユーロに拡大するという。

この成長の主要因はスマートフォンの普及で、2015年までに携帯電話ユーザー全体の6割がスマートフォンを保有するようになるという。同時に、欧州の通信事業者は3G LTEネットワークの展開を急ぐ必要はなく、少なくとも2013年まではHSPA+やその他の手法で十分に対応できるとしている。

このための具体的な対応策については、HSPAネットワークからHSPA+ネットワークへのアップグレード、WiFiやフェムトセルによるモバイルオフロード技術、または従量課金やQoSによるプレミアムサービスなどさまざまな料金体系を導入、といった選択肢が上げられている。

このレポートに関して、ADLのディディエル・レヴィ(Didier Levy)氏は、無線LANやフェムトセルによって、モバイルのトラフィックを固定網へオフロードすることで、データトラフィック量を30%抑えることができるという米シスコシステムズ(Cisco Systems)の試算を引用しながら、こうした施策を実施すれば通信事業者はフリーキャッシュフローを最大で4%改善できるとコメントしている。

なお、先週には、関連通信機器メーカーの業界団体GSA(Global mobile Suppliers Association)が、現在世界31カ国で64の事業者が新たにLTEネットワークの展開を決めており、2010年中にはさらに22のネットワークが商用化されるとの見通しを盛り込んだレポートを発表していた。それに対し、今回発表されたレポートでは「欧州市場では、LTEネットワークの早期展開は必要ない」との見方が示されているが、このあたりの見解の違いには両者の立場が投影されているとみることもできる。

また、アップルのApp StoreやグーグルのAndroid Marketといったモバイル端末用のアプリケーション市場について、同レポートでは今後急成長が期待できるセグメントとし、たとえばApp Storeは2012年に40億ユーロ規模の市場になると予測。ただし、それでも携帯電話市場全体の売上の3%に過ぎないため、売上成長要因にはならず、むしろデータサービスそのものやモバイル決済、モバイル広告といったもののほうが売上増加に貢献できると述べている。

【参照情報】
Operators need not rush to deploy LTE - Arthur D. Little (total telecom)
Arthur D. Little and Exane BNP Paribas: Mobile Data Can Stabilize Operator Revenues by End of 2010 (EuroInvestor.co.uk)

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