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「40%のコスト削減も可能」- ノキア シーメンス ネットワークスCTOに聞くモバイル・ブロードバンド時代のキャリア経営のヒント

2010.08.10

Updated by WirelessWire News編集部 on August 10, 2010, 14:00 pm JST

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携帯通信事業者(以下、「キャリア」)にとって、スマートフォンの普及にともなうトラフィックの大幅な伸びは、回線利用の増加という収入増に結びつく面と、それに対応するためのインフラ増強に向けた投資というコスト増につながる面の、2つの面で影響を及ぼしている。

スマートフォンの契約者増加は世界的にみて不可避の流れだが、現在の主流である定額料金制によって収益側の伸びしろが限られるなかでは、利用者増、トラフィック増はキャリア各社の経営を圧迫することにもつながりかねない。

回線利用の主流が従来の音声からデータに移行しつつあるなかで、どうすればキャリアはこの変化の波を乗り切り、さらに利益を増やしていくことが可能なのか

WirelessWires News編集部では、先頃来日したノキア シーメンス ネットワークス(Nokia Siemens Networks:以下、ノキア シーメンス)アジア太平洋地域担当最高技術責任者(CTO)のマイケル・マーフィー(Michael Murphy)氏に、モバイルブロードバンド普及期においてキャリアの採るべき選択肢等について話を聞いた。

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1. 今後4年間で10倍に--伸び続けるモバイル・ブロードバンドのトラフィック

マーフィー氏はまず、モバイル・ブロードバンドの伸びについて、過去3年余りの間に年率100〜400%の割合でトラフィックが増加したと指摘。そして、この伸び率が今後も続くと仮定すれば、2010年初めに約400テラバイト(TB)/日だったトラフィック量が5年後の2014年には約10倍の4000TB/日まで増加する可能性があるとの予測を示した。

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また今後は回線でやりとりされるデータの種類も変化し、かつてはレイテンシーがあまり問題にならないトラフィックが大半を占めていたのに対し、10年後にはレイテンシー(の少なさ)が重要になるビデオが8割以上を占めるようになる、と付け加えた。

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2. 音声・SMSに比べて利益率が低いモバイル・ブロードバンド

いっぽう、収入源の変化については、これまで主流を占めてきた音声およびSMSが相対的に高単価(高マージン)であったのに対し、今後の主流となるデータ通信ではそれほど高い利益率は見込めない、と述べた。

これらの流れを受けて、現在のキャリア各社が置かれた状況を、同氏は以下のように要約した:

  • 音声およびSMSからの収入減少(Decline in Voice & SMS ARPU)
  • 通常は利益率の低いブロードバンドトラフィックの爆発的増加(Explosive growth in typically lower margin broadband)
  • 長期的にみて、データサービスからの収入増加のレベルは不確実(Uncertain level of data services upside, long-term)

そして、これら3点を踏まえ、現在のキャリア各社に突きつけられた課題として「モバイル・ブロードバンド主流時代に、どうすれば長期にわたって利益率を確保することができるか」という点を同氏は挙げた。

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3. TCO削減がネットワーク効率性向上の鍵

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この課題に答えるための指針として、マーフィー氏は次の3つのヒントを示す。

  1. 乱用者の防止
  2. トラフィックのマネタイズ
  3. ネットワーク効率性の劇的向上

1については、「5%のヘビーユーザーが、トラフィック全体の80%を占有している」というデータを挙げながら、具体的にはデータ利用量の上限設定(「キャッピング」)などの施策を含む「フェア・ユース」の実現を目指すもので、キャリア自身の投資負担を抑えるだけでなく、他のユーザーへのメリット提供も可能になるというもの。

2については、具体的にはサービスレベルに応じた課金体系の導入などが含まれるが、ただし「サービスの質をどう定義し、それを顧客に伝えて納得させるか」などの点で難しい部分もあるという。

それに対して、3つめの「ネットワーク効率性の劇的向上」はTCO(Total Cost of Ownership)に重点を置いたもので、従来は別々に考えられていたインフラ投資のためのコスト(capital expenditure: CAPEX)とオペレーションコストを合わせて考えることを通じて、効率の劇的改善を図るというもの。とくに賃料・土地代や電気料金、人件費の高い日本市場では有効な施策になり得るという。

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ノキア シーメンスではこのために以下のようなオプションを提供可能だと同氏は説明した。

  1. 基地局の共有(Passive Sharing)
  2. 通信機器単位での共有(Active Sharing)
  3. オペレーションのアウトソーシング(Managed Service)

なお、3については同社は世界ですでに3億5000万ユーザー分に相当するサービスを手がける実績を積んでいるという。

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4. シグナルコントロールにまで踏み込んで省電力によるコスト削減を実現

また、これとは別に、通信機器等の省電力性向上を通じた電力料金削減も効果的で、同社では3年前の機器と比較して、80%以上も電力削減が可能な機器を用意しているという。さらに、これらの諸施策を組み合わせることで、「携帯通信キャリアは、最大で40%を超えるコスト削減が可能になり、それを通じて利益率を大幅に向上させることが可能だと考えている」とマーフィー氏は述べた。

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またこれに派生する事柄として、シグナルコントロール(の効率改善)を通じたスマートフォンの電力消費量の削減についてもマーフィー氏は触れた。現在高性能化が著しい各社のスマートフォンについては、それがやりとりするデータ量の増大とともに、いわゆる「バッテリーの持ち時間」もますます重要になってきている。

この2つの課題に同時に対処する方法の1つとして、同氏はシグナルコントロールの問題を挙げた。「より賢いシグナルコントロールを行うことで、シグナルのトラフィック削減を通じたネットワークへの負荷軽減とともに、端末の電力消費量も大幅に減らすことができる」と説明し、この技術がノキア シーメンスの強みであることを強調した。

ノキア シーメンスがカナダで実施した実験では、20%を超える消費電力の削減を実現した例もあるという。

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5. キャリア顧客に対するソリューション提案でキャリアの新規収入源を創出

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マーフィー氏が「ノキア シーメンスの強み」としてもうひとつ強調したのが、キャリアの新規収入源創出施策である。主に中規模〜小規模向けのサービスで、各キャリアの顧客企業に対し、それぞれに最適なIT関連サービスの組み合わせを提案するというものだ。

ウェブアプリケーションやセキュリティなどさまざまなサービスがすでに存在する中で最適なものを選択することは、人手の限られる中・小企業にとってはなかなか難しいことだが、この問題を解決する「パッケージ」をキャリアを通じて提供することで、顧客には最適なITソリューションをもたらし、またキャリアには新たな高付加価値の収入源を提供できると同氏は述べた。なお、ノキア シーメンスでは近日中に複数のキャリアと同サービスのトライアルを実施する予定だという。

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[文責:三国大洋]

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