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iPadを使ったインタラクティブ電子教科書のInkling、Sequoiaなどから資金調達

2010.08.24

Updated by WirelessWire News編集部 on August 24, 2010, 15:00 pm JST

Inkling社サイト
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2009年創業のInkling社(サンフランシスコ)がSequoia Capitalなど有力なベンチャーキャピタルから資金調達を行った。同社はiPadを使って電子教科書のプラットフォームを開発・提供するベンチャーで、創業者は元アップル(Apple)の従業員であるMatt Mac Innis氏。

同社はすでに大手教科書出版社McGraw-Hillと共同で、インタラクティブでマルチメディアな4タイトル(生物学、マーケティング、心理学、経済学の教科書のベストセラー)を販売している。現在は1章2.99ドル(1ドル=85.28円換算で約255円)、本全体では69.99ドル(約5,968円)だが、今後「出版」されるものは1章3.99ドル(340円)、1冊84.99ドル(約7,248円)となるそうだ。McGraw-Hillのほか、Cengage Learning、John Wiley & Sons、Wolters Kluwerの計4社の教科書をiPad化しているとのこと。

アメリカの大学の、特にハードカバーの教科書は分厚くて重く、バックパックに3冊も詰め込めば背負うのも厭になるほどだから、1学期分のテキストだけでもiPadに入ってくれれば自転車通学も相当楽になるに違いない。しかも、教科書は半期(セメスター)制であれば18週間程度しか使わないし、ある1日を考えれば、持ち歩いて読むページの数はかなり限定される。電車やバスで通学していなければ、移動中に教科書を開くこともない。

単に持ち運びが楽になるだけでなく、InklingはiPadの機能を活用することを主眼に置いているらしく、図表が喋ったり、3D化されたり、ビデオが再生できたり、双方向のクイズ、さらにはソーシャル機能も持たせて、教科書に新しい地平を切り拓こうとしているようだ。

教科書を読みながらWikipediaを調べ、Google Scholarで文献を検索することは当然あるだろうし、レポートの執筆や提出にiPadを使うこともできるだろう。「先輩」の書き込みやアンダーラインが同じ教授の試験準備に役立つとあって、アメリカの大学周辺には教科書の古書市場(書店や生協)が形成されていることが多い。価格から考えて、電子教科書が容易にコピーできるとは思えないが、調査対象へのリンクや「つぶやき」など、上の学年が過去に行った学習過程を学生の「資産」として下の学年に継承することは容易になったはずだ。

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Kno社サイト
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Inkling以外にも電子教科書市場の覇権を狙う会社は存在する。同じ北カリフォルニアSanta Claraのベンチャー、Knoは見開きの2画面タブレットを使い、アメリカ教科書市場の90%に当たる「コンテンツ」を集めていると言っており、3大学で学生100人にタブレットを貸し出して秋の新学期からテストを開始するそうだ。結果が良好なら今年のクリスマス商戦までには市場投入する予定だという。

こちらの陣営にもCengage、McGraw-Hill、Pearson、Wileyと、Inklingと同じ教科書出版社が名を連ねている。出版社からすると、現段階では電子書籍のプラットフォーム争いの行方も見えず、どこか1社に賭けることができないフェーズにあるというところなのだろうか。

上記2社以外にも多くのプレイヤーが電子教科書市場にチャレンジしている。

  • CourseSmart社(2007年創業:カリフォルニア州San Mateo)は端末側プラットフォームにはiPadとiPhoneを使っている。こちらも出版7社と提携し、教科書の90%(Inc.comの記事によれば2010年4月時点で10,000タイトル)を集めていると言っている。
  • CafeScribeは2007年にFourteen40が開始し、オンライン教科書販売(リアルの教科書)のFollettに買収されたPC用のeテキストブック。CafeScribeもiPad版、iPhone版の提供を予定しており、Follett社の方は全米860キャンパスの書店に教科書を卸しており、同じくInc.com記事では8,000タイトル程度を集めている模様。
  • ScrollMotion社(ニューヨーク州New York City)は教科書専業ではなく、雑誌や児童書などもiPhone、iPadアプリケーション(Icebergリーダー)向けに販売している。
  • enTourage Systems社(バージニア州McLean)は、enTourage EDGEという2画面の549ドル(約46,189円)の専用タブレットに教科書などの書籍を提供しようとしている。

この分野、当分は覇権争いが続くものと見られる。

【参照情報】
Textbooks Up Their Game (WSJ.com)
Inkling brings textbooks to Apple's iPad, wins funding from Sequoia (San Jose Mercury News)
電子教科書プラットフォームの提供を行うInkling、Sequoia Capital主導によるシリーズAを完了 (TechCrunch Japan)
The Race for E-textbook Readers (Inc.com)
Inkling社サイト
Inkling (iTunes)
Kno社サイト
Some Colleges to Test Dual-Screen E-Reader Devices (The Chronicle of Higher Education)
CourseSmart社サイト
CafeScribe社サイト
Follett Corp. Acquires Fourteen40 and Its CafeScribe Site (Information Today)
ScrollMotion社サイト
Iceberg BookShelf (iTunes)
enTourage Systems社サイト

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