○"山寨(さんざい)携帯"という言葉は最近日本のニュースサイトや記事でも様々に取り上げられているため、皆さんも耳にしたことはあるのではないだろうか。多くのニュースサイトや記事では"山寨携帯=コピー製品またはパクリ製品"と紹介されていることが多いが、現在の定義から言えばノンブランドな独自製品まで含めた言葉である。
○では、その山寨携帯が世界の携帯電話市場で非常に大きな比重を占めているということはご存知であろうか?
下図は米国の市場調査会社iSuppli社が発表した山寨携帯の発売台数である。
▼山寨携帯発売数推移(単位:億台)
同社のレポートによると2009年の発売数は1.5億台弱、2010年には1.75億台の発売数にもなることが見込まれている。
Gartner社が2009年12月に発表したレポート「Gartner Says Worldwide Mobile Device Sales on Pace for Flat Growth in 2009」では、2009年の世界の携帯電話総販売数は12億1,400万台であると発表している。これを先の山寨携帯販売数1.5億台と比較すると、実に山寨携帯の市場規模は世界の携帯電話販売総数の8分の1弱の規模にものぼることになる。さらに、ガートナーの予測によれば2010年の世界の携帯電話販売総数は13億2,200万台であるという。つまり、山寨携帯の1.75億台は8分の1を超えると予測できるのだ。
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日本では馴染みのない、山寨携帯がどこにそれほど販売されているのであろうか? 次は先の販売推移の図を中国国内と国外にわけて見てみたいと思う。
▼山寨携帯発売数推移(中国国内外内訳、単位:億台)
上の図から一目瞭然な通り、現在の山寨携帯販売の大半は中国国外販売が占めている。特に2008年からは急増と呼べる伸びである。これはインドや東南アジア諸国、アフリカ諸国などの発展途上国に発売されているケースが多い。
中国国外向け販売は2012年頃までは順調に今後も伸びていくことが予想されている。
しかし今、この予測を大きく下回る可能性が顕在化しつつある。
その最たる例が2009年7月にインド政府が発令したIMEI番号(15桁の端末識別番号)未登録携帯電話の輸入禁止措置である。中国で生産される山寨携帯はこのIMEI番号を持たないケースが多いため、携帯電話端末の特定が難しく、犯罪などに利用されるケースが多発したための措置である。
インドは中国製山寨携帯の最大の輸出国とも言われており、2,500万人ほどの利用者がいるという。各社山寨携帯メーカーに取っては大きな痛手であろう。
このような動きに追従する国が出てくることは十分に考えられる。また、安価な山寨携帯が出まわってしまっては自国内の携帯メーカーが育たない、という理由から山寨携帯の輸入禁止や制限を発令してくる国が出てくる可能性も否めない。
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では、山寨携帯の中国国内市場はどのような状況であろうか?
現在、中国では山寨携帯はインターネットショッピングサイト最大手のタオバオや、メーカーに直接電話で注文して購入することもできるが、上海・南京・深センなどの都市圏はもとより筆者の地元にもある、山寨携帯専門店街とも呼べるエリアで購入することも可能である。
▼茂源携帯スーパーマーケット
この手のエリアは例外なく、その敷地内に所狭しと小さいなお店が並んでおり、模倣品も販売されているが、非常にユニークな携帯電話やノンブランドの製品が数多く展示されている。
▼店内の様子
▼ショーケースに並んだ山寨携帯。価格は100〜300元(1,200円〜3,600円)と低価格。
先述の販売推移の図からは2007年を境にその市場規模は縮小傾向にあるとも言える。これは、ノキアやHTC、レノボなどの中国国内外のブランド携帯電話が低価格化されていることと、中国の人々自身の生活も豊かになりiPhoneやAndroidに代表されるスマートフォンの人気が高まってきていることが原因であろう。
今後、中国国内に限らず国外においても、これらブランド携帯との競争、差別化が生き残りを左右することになるのかもしれない。
次回は、これら山寨携帯メーカーの対策やそれを支えるチップメーカーのMediatek社、Rockchip社などの概要、動向などをお伝えしたいと思う。
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