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2016年までに携帯のトラフィックは15倍--グローバルの通信事情を日本エリクソンが解説

2011.05.25

Updated by Naohisa Iwamoto on May 25, 2011, 18:21 pm JST

2011年5月25日、日本エリクソンは東京ビッグサイトで開催中のWireless Japan 2011の会場で報道関係者に向けたプレスセミナーを実施した。世界でのHSPA+およびLTEの現状、無線ネットワークの進化などをエリクソンの施策とともに解説するもの。登壇した同社チーフ・テクノロジー・オフィサーの藤岡雅宣氏は、まず数字を繰り出しながらHSPAやLTEなどの現状について説明を始めた。

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藤岡氏は「モバイルブロードバンドでは、高速パケット通信方式のHSPAがカバレッジを広げている。すでに160カ国、398の商用ネットワークがある」と言う。グローバルでは現時点でも2.5GのGSMの加入者数が圧倒的多数を占めるが、今後はHSPAをテコにして3Gが急速に伸びると予測。2015年ころには3GがGSMを逆転する。HSPA+では、現在84Mbpsと168Mbpsが標準として出来上がり、84Mbpsの方式から導入の検討段階に入っているという。

一方のLTEは始まったばかりだが、「急速に幅が広がっていく」(藤岡氏)との見方だ。LTEの導入をコミットしている事業者は80カ国の208事業者にもなる。すでに商用化した事業者は17事業者で、サービスエリアがカバーする人口は1.5億人に上るという。2012年末までにLTE商用化を目論んでいる事業者は81事業者に上り、今後も着実に普及するとの見方だ。ただし、商用化済みおよび商用間近の事業者の動向を見ると「いろいろな周波数帯が使われている。コアバンドを使うのが理想的だが、現時点では周波数帯はバラバラ」(藤岡氏)という現状だ。エリクソンはその中で「メジャーな事業者のLTEサービスにはエリクソンの機器が使われ、そのカバー人口は1億人に上る」と、グローバルでの位置付けをアピールした。また、TD-TLEも中国、インドで状況が進展しているという。商用化の時期としては、インドで2011年後半~2012年前半、中国では2012年後半を見込んでいる。

▼今後のモバイルのデータトラフィック予測
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モバイルのトラフィックに目を向けると、「音声・データを含めたモバイルの全トラフィックは、2016年までの5年間で15倍に増加する」と藤岡氏。中でもモバイルデータのトラフィックは音声の10倍の速度で増加しており、全トラフィックの増加を牽引する。爆発的に増加するトラフィックに耐えるためには、周波数の確保が重要になる。藤岡氏は、「日本が独自周波数を割り当てることには問題がある。日本固有の機器開発による追加コストの発生、対応ベンダーが少なくなることによる選択肢の制限、国内市場向けに開発した機器がグローバルで販売できないことによる国内ベンダーの国際競争力の阻害--といった点だ。こうした視点からも今後は国際協調が重要になる」と指摘する。

さらに、無線ネットワークの進化について、世界の現状とエリクソンの取り組みを紹介した。LTEの次世代技術「LTE-Advanced」では、エリアの拡張やエリア内の実効通信速度の確保に役立てる「リレー機能」、リレー機能を含む階層型のセル構造をとる「ヘテロジーニアスネットワーク配置」(HetNet)、機能のモジュラー化やベースバンドモジュールの小型化による無線基地局の進化などによって、効果的なエリア構築が可能になるという。また、増え続ける携帯電話のトラフィック増に対応するため、無線LANにトラフィックを逃がす「無線LANオフロード」についても、携帯電話と無線LANの間でのセッションの継続や、シームレスなハンドオーバーなどの検討課題を示した。

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。