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[Xi Watching Report #7]Xiの加入者計画に対する月次進捗確認・Xiルータ使用雑感とLTE時代の定額制のあり方について考察

2011.08.01

Updated by WirelessWire News編集部 on August 1, 2011, 16:30 pm JST

今月のXi Watching Reportは、引き続きXiの月次契約動向と会社計画に対する進捗状況を確認すると共に、筆者も6月30日に発売されたXiルータL-09Cを購入したので、その使用雑感を報告すると共に、LTE時代の定額制のあり方についての考察をしたい。

Xi純増数は5月比1.5倍の純増数、契約者数が12万件を突破

少し遅くなったが、7月7日にTCA及び各社より公表された、6月のXi純増数は5月比1.5倍の4万8,800件と引き続き好調な様子。今年度ドコモは、年間で概ね100万件のXi純増を会社計画として公表しているが、4-6月の第1四半期での純増は9万6,000件と概ね10%程度の進捗。

▼表1:Xi契約数、純増数、データカード契約純増数などの推移
201108011630-1.jpg(出所):会社資料、取材などから筆者作成

会社計画達成には残り9ヶ月で約90万件の獲得が必要とされ、1ヶ月あたり約10万件の獲得が必要な計算となるが、7月の上旬にドコモ山田社長が各メディアへのインタビューに応じた際のコメントでは、秋にタブレット型のLTE端末を2機種、冬にスマートフォン型端末を4機種発売するとの事。これらが所謂、「2011-2012秋冬春モデル」を想定したものであるという前提に立つと、第3四半期以降にXiの純増数に更なる上積みを会社としては期待しているのであろう。

昨年12月以降、PCデータカード2機種、Wi-Fiルータ1機種と合計3機種発売して来ているが、いずれも、PCやiPod、iPadなどのデバイスと接続することが前提でドコモは単なる土管とISPの提供に留まっている。タブレット型、スマートフォン型の市場投入により、先にワイヤレスジャパンなどで紹介された「通訳電話」のようなに、LTEの高速・大容量・低遅延という特徴を生かしたサービスの提供にも期待したい所だが、エリアが限定されている(ドコモからの公式発表では、2011年度内に全国の県庁所在地級の都市でエリア整備)状況下、LTEの特徴に過度に依存したサービスを提供することで、現実的には大半のエリアを3G(W-CDMA)に依存しなければならない為、サービス品質を維持することの難しさも露呈する可能性がある。秋冬以降のタブレット・スマートフォンのLTE端末の見せ方をどのようにするのか、期待したいところだ。

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基地局建設は引き続き高い進捗、7月1日以降は全国主要都市へ拡大

表2で示すとおり、Xi対応基地局の建設は至って良好に進捗している印象。5月比で500局程度基地が増加している様子だ。

▼表2:Xi対応基地局数の推移
201108011630-2.jpg(出所):ドコモLTE基地局については総務省無線局情報検索にて電波形式「5M00X7W」を集計し、会社資料を参考にしながら、筆者作成
(注):ドコモ公表値と総務省無線局情報検索との差分は、ドコモ公表値は基地局設置場所数であり、免許数ではない事に起因すると想定している

今年度末5,000局の基地局設置目標に対して6月末時点で2,780局と第1四半期の進捗は既に50%超と純増進捗とは対照的だ。既に、5月30日
(http://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2011/05/30_00.html)
にドコモから発表があったように7月1日からはXi対応エリアが拡大、札幌市、仙台市、金沢市、広島市、高松市、福岡市の一部においてXiが利用可能。
例えば、図1の札幌市内におけるXiの対応エリアは札幌駅を中心に半径7-8km程度である程度エリア化が進んでいる様子。

▼図1:札幌市内のXiエリア
201108011630-3.jpg(出所)会社資料

筆者も何度か旅行や出張などで札幌を訪れたことがあるが、観光客や地元の方の日常の足として利用されている札幌市電に乗っていても半分程度が既にXiエリア化されており、藻岩山の麓でも使うことが出来るようだ。

総務省が提供する無線局情報検索(最新のデータは6月25日時点のものが公開されている)を見ていても、札幌市内には既に30局近いXi基地局が免許申請されているようだ。図1のエリアのおける黄色部のような9月以降のエリア化がなされる予定の場所も含んでいるのだろうが、30局という数だけ見ると、都内千代田区内にあるXi基地局とほぼ同数。秋冬以降のタブレット・スマートフォン型の販売を控え、全国で販売することを前提としているのであろう。地方都市でも急ピッチでエリア化が進んでいるようだ。

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Xiルータ使用雑感とLTE時代の定額制のあり方について考察

6月30日に発売された、XiのWi-FiルータL-09Cを発売当日に購入し、使い始めた。主な用途としては、外出先でのノートPCやiPadとの接続、通勤時の往復でiPodに接続といった使い方。ノートPCで使った際は、Gmailなどブラウジングが主な用途だが、PCのiTunesのダウンロード、ウィルススキャンソフトの更新データのダウンロードとAdobe PDFリーダの更新など行った。iPadもメールのチェックとブラウジングが主たる用途だが、カーナビ代わりとして土日のうち3時間程度×3日間程度使った。iPodでは、通勤時の往復1時間程度、電車が地上にいる間、毎日(20日程度)Radikoのラジオストリーミングとtwitterやfacebook・mixiへの投稿、GREEのオセロゲームやYouTubeでの動画閲覧など行った。

以上のような使い方で、本稿執筆時点での使用したデータ量は4GB弱。1日平均で130Mbyte程度であった。なるべく、LTE圏内では使わなくても良い状況でも意識的にパケットが飛ぶように使っていたので、比較的ハードに使ったつもりだが、5GBを超えることは無さそうだ。現状、Xiでは3日間の使用したデータ量が380MB超となった場合は、速度制限をすることがあるようだが、特に遅くなったと感じることも無かった。

Xi圏内の各所でWeb上のスループット測定サイトやiPhoneやiPod向けに提供されているスループット測定アプリを用いて、速度を計測してみたが、時間帯や場所により当然まちまちであり、1Mbps程度の時もあれば、最大で10Mbps近く計測したこともあった。ただ、Xi利用可能スポットとドコモが呼んでいる、帯域幅10Mhz幅・理論速度75Mbpsのサービスエリア内では、明らかに速い、と感じ平均的に5Mbps以上計測したことが多かった。

L-09Cを使用した雑感としては、上記のような使い方をしていても、電池が概ね1日は持続する。充電器を持ち運ぶのが面倒であるので、使わない時や圏外の時はなるべく電源を落として、電池が持続するよう心がけていたが、2700mAhという大容量の電池を用いているだけの事はあるなと感じた次第だ。

Xiは現在上限が4,935円となるキャンペーンを実施しているが、私の場合は、キャンペーンが終わっても上限の範囲内で十分だとの印象だ。ただ、キャンペーン終了後の完全定額制で無くなる、料金のあり方については、会社側も色々と検討しているようで、7月上旬の各メディアへのドコモ山田社長へのインタビュー記事(参考記事)を見ていると、Xiの上限については、PCやスマートフォンの利用実態を考慮したものとすることを検討している他、完全定額にする代わりに5GBを超えたらスループットを低下させる案や、5GBという閾値自体を見直すことを考えているようだ。

定額制の見直しについては、ソフトバンクも7月28日に行われた決算説明会にて、時期や対象とするベアラには言及しなかったものの、見直す時期がいずれ来るとの見方を示しており、(参考記事)ドコモのLTEやVerizon、AT&Tで先に実施しているような、料金のあり方へ追随する可能性を示した。

各国、各通信事業者が相次いでこのような料金プランを導入し、また、導入可能性について言及するのは、トラヒックの急拡大もさることながら、利用者間の不公平感を解消したいという思いが強く、特に、2-3%の極端に利用するユーザが、全体のトラヒックの数割を占めているような状況下、同じ定額料金を支払って、通常の使い方をしているユーザに不便を掛けたることを避けたいということであろう。LTE時代は、ほぼ定額に近い、従量制となることが、少しずつ既成事実化されてきている。通信事業者の立場に立てば、際限なく設備投資をしなければならない状況を避け、極端に使うユーザへの抑止力として、半従量的料金へ戻したいということであろうと推測される。

10年ほど前のドコモがW-CDMAを導入したときのことを思い起こすと、当初は、パケットパック10・30・60・90と、予め定額料金が1,000円から9,000円で定められており、それぞれ、1万パケット(1.2Mbyte程度)から最大200万パケット(240Mbyte程度)包含されており、当該包含されるパケットを超えたら、従量制になるという料金プランであった。しかし後にKDDIがダブル定額を導入した為、それに追随する形でドコモもパケ・ホーダイを導入し、完全定額を提供することとなった。

競争環境や置かれているポジショニングによって、大胆な価格戦略を仕掛けて来る事業者が現れてきた場合、LTEでの半定額制は夢となってしまう可能性があるが、ソフトバンクの今回の発言は、彼らとしても無駄な安売りをする意思は無いというメッセージとして大いに好感できるものといえる。

 
文・梶本 浩平(金融機関にてアナリストとして通信セクターを担当)

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