HP、PC事業切り離しとWebOS部門閉鎖を発表 -「ビッグデータ」分野に重点シフト
2011.08.19
Updated by WirelessWire News編集部 on August 19, 2011, 09:53 am JST
2011.08.19
Updated by WirelessWire News編集部 on August 19, 2011, 09:53 am JST
昨年の経営トップの交代以来、新たな成長戦略に関して注目を集めていたヒューレット・パッカード(Hewlett-Packard:以下、HP)で、PCやタブレットなどのハードウェア事業に見切りをつけ、いわゆる「ビッグデータ」関連のソフトウェア/サービスに賭けるという決断が下されたようだ。
HPのレオ・アポテカー(Leo Apotheker)CEOは米国時間18日に行った四半期決算発表のなかで、PC事業の切り離し、WebOS関連部門の閉鎖、ならびに英オートノミー(Autonomy)との間で同社の買収について協議中であることを明らかにしたと、主要な経済ニュースサイトなどが伝えている。
今回の発表の背景には、HPに対して業績向上を求め、利益率の低いPC事業からの撤退を要求する株主からの圧力が高まっていたことなどがあるという。法人顧客との取引が大きな比重を占めるIT企業が、PCなどのハードウェア分野から手を引き、ソフトウェアやサービス分野に事業の重点をシフトさせたケースとしては、2005年にPC事業をレノボに売却したIBMの例などがある。
また、前CEOのマーク・ハード(Mark Hurd)氏のスキャンダルによる辞任を受けて、昨年HPの経営トップに就任したアポテカー現CEOは、長年独SAPに在籍し、HPへの移籍前にはSAPでCEOも務めていた人物ということもあり、同氏としてはオートノミーの買収を通じて、今のところHPの売上全体の約2.4%を占めるにすぎないソフトウェア部門を強化することで更なる成長を狙いたいとの思惑があるという。
個人向けハードウェア事業からの撤退
HPでは、2002年に当時CEOを務めていたカーリー・フィオリーナ(Carly Fiorina)氏がコンパック(Compaq)を176億ドルで買収。その後HPのPC事業は、競合するデル(Dell)を抜いて、出荷台数で世界首位の座を維持してきている。同部門の売上はいまでもHP全体の約3分の1を占めるという。だが、消費者や法人の需要がスマートフォンやタブレット端末に流れるなかで、PC市場全体の成長が頭打ちとなっており、HPでも第3四半期にはPC部門の売上が前年同期比3%減となったという。
HPではPC事業の切り離しについて、他社への売却も含む複数の選択肢を検討したうで、今後12-18ヶ月でこの作業を完了させる予定。
また今回の発表では、HPが昨年約12億ドルをかけて買収したPalmを母体とするWebOS関連部門についても閉鎖することを明らかにした。同社ではこのための特損費用として約10億円を第4四半期に計上予定だという。
HPでは、急成長が期待できる携帯端末(スマートフォンおよびタブレット)分野への足がかりとしてPalmを獲得、ハードウェアとソフトウェアの両方を自社でコントロールする「統合型モデル」の採用を通じて、アップルなどへの対抗を目論んでいたとされるが、肝心の製品については、第一弾となる「TouchPad」がこの7月に(オリジナルiPad発売から約15ヶ月遅れで)ようやく発売されたものの、小売店等での動きが極めて鈍いことなどが伝えられており、同社ではいまからの挽回は難しいとの判断が働いたと見られる。
いっぽう、HPの稼ぎ頭のひとつであるプリンター事業、それにストレージ機器や通信機器事業、旧EDSの買収を通じて獲得した法人向けサービス事業などについては、今後も継続していくという。
HPが約103億ドルで買収オファーを提示している英オートノミーは、1996年創業のソフトウェア企業で、同社の2010年度の売上は前年比18%増の8億7000万ドルで、今年度は10億ドルを超える見通しだという。
オートノミーが強みをもつのは、いわゆる「非構造化データ」(unstructured data)の処理・分析の分野で、同社では主として大手企業向けに、電子メールやボイスメールなどの管理・分析製品などを提供、これらの製品はコカコーラ(Coca-Cola)、ネスレ(Nestle)、米証券取引委員会(Securities and Exchange Commission:SEC)などでも導入されているという。
なお、この日発表されたHPの5-7月期の業績については、売上が前年同期比1.5%増の312億ドルとなり、利益も前年同期の17億7000万ドル(一株あたり75セント)から19億3000万ドル(同93セント)で、特殊な項目を除いた一株あたり利益は1ドル10セントと、いずれもほぼ予想通りの結果になった。しかし、8-10月期と通年の業績見通しについては、いずれもアナリストらの予想を下回るものとなっている。
【参照情報】
・H-P to Spin Off PCs, Bids for Autonomy - WSJ.com
・H-P Follows in IBM's Footsteps - WSJ.com
・HP to Pay $10.3B for Autonomy, May Spin Off PCs - Bloomberg
・HP stuns with Autonomy offer, spinoff plans - Reuters
・HP plans to buy Autonomy for $10bn - FT.com
・HP looks to spin off PC unit - FT.com
・HP's reported $10B bet on big data - GigaOM
・HP「TouchPad」が売れ行き不振 - 小売大手のベストバイから在庫の引き取り要求も
・「PC時代はすでにたそがれ」- IBM技術担当幹部が見据える「次の中心分野」とは
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