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スマホ視聴やTwitter連動などネットサービスとの連携を推進する「ひかりTV」

2011.09.27

Updated by Naohisa Iwamoto on September 27, 2011, 12:00 pm JST

NTTぷららは、2008年3月から光ファイバー回線(FTTH:Fiber To The Home)を利用した映像配信サービス「ひかりTV」を展開している。通信と放送の融合の1つの形を示す"スマートテレビ"サービスの国内における先駆け的存在といえる。これまでひかりTVでどのようなサービス展開してきたか、今後どのように新しいサービスを提供していくのかをNTTぷららの担当者に聞いた。

VODと多チャンネル放送の両面でサービス提供

ひかりTVサービスは、NTT東西が提供する光回線を介してテレビ番組や動画コンテンツを視聴するIPTVサービスである。光回線としては、NTT東日本の「フレッツ 光」/NTT西日本の「フレッツ・光プレミアム」、および次世代ネットワーク(NGN)サービス「フレッツ 光ネクスト」を利用する。また、ひかりTV用STB(セットトップボックス)か、ひかりTV仕様をサポートしたデジタルテレビが必要になる。

「ひかりTV」と一口に言うが、サービスには大きく2つの柱がある。1つはNTTぷららが提供する「VOD(ビデオオンデマンド)サービス」。もう1つはNTTぷららが出資しているアイキャストの提供による「多チャンネルデジタル放送(IPTV)サービス」である

▼NTTぷらら サービス本部の安江サービス企画部長
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「VODサービス」では、総本数で2万本以上のビデオコンテンツを提供している。そのうち約7000本は見放題のコンテンツである。「IPTVサービス」では、2011年10月1日のチャンネルラインアップ改変後、最大96チャンネルの多チャンネルデジタル放送サービスを提供する。その内訳は、基本放送チャンネルが9、ベーシックチャンネルが47、プレミアムチャンネルが31の合計87チャンネルに加えて、NTTのNGN回線商用サービス「フレッツ 光ネクスト」向けの地上デジタル放送のIP再送信9チャンネル(東京の場合)となる。地上デジタル放送への切り替えにより家庭のテレビ受像機がハイビジョン(HD画質)対応のデジタルテレビに置き換わったことから、ハイビジョンへの対応も進めている。IPTVサービスでは全体の8割に相当する73チャンネルでハイビジョンによる番組を提供する。

地上デジタル放送のIP再送信サービスは、2011年8月末時点で視聴できるエリアが、北海道・宮城・新潟・栃木・群馬・茨城・東京・神奈川・千葉・埼玉・石川・静岡・愛知・大阪・京都・兵庫・広島・福岡・熊本・沖縄の20都道府県となっている。また国内のIPTVでは初めて、BSデジタル放送のIP再送信サービスも行っている。NHK BSデジタル放送(BS1、BSプレミアム)を2010年12月から、WOWOWを2010年10月から提供している。地上デジタル放送やBSデジタル放送に対応したアンテナを立てなくても、光回線があればデジタル放送を楽しめる。

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プラットフォームは日本版IPTV技術仕様に準拠

「ひかりTV」サービスは、「一般社団法人 IPTVフォーラム」で策定した「IPTVフォーラム技術仕様」に準拠している。IPTVフォーラムは家電メーカー、通信事業者、放送事業者などによって構成されている。

コンテンツの著作権管理を行うDRM(Digital Rights Management:デジタル著作権管理)機能は、「Marlin Developer Community」の家電機器向けDRM「Marlin」を利用している。Marlin Developer Community は、DRMの標準技術仕様を策定する団体で、ソニー、インタートラスト、パナソニック、フィリップス、サムスン電子の5社が設立した。

NTTぷららが提供するIPTVサービスは、IPマルチキャスト方式を利用して番組を配信するサービスである。このため法制度上は、電気通信役務利用放送として位置づけられている(コラム「IPTVサービスとは」参照)。また、「ひかりTV」が提供する地上デジタル放送/BSデジタル放送のIP再送信は、デジタル放送を電波で送り届けることが困難な"条件不利地域"でもデジタル放送が視聴できるように検討されてきた技術であり、地上デジタル放送補完再送信審査会が作成した「地上デジタル放送IP再送信方式審査ガイドライン」に準拠している。

2011年度の目標を190万会員に設定

NTTぷららとアイキャストが提供する「ひかりTV」サービスの加入者数は、地デジ化特需も加わり2011年3月末には目標としていた140万会員を上回る141万会員を達成した。さらに2011年6月末時点で151万に達している(図1)。これは、NTT東西の光回線契約数の1割に相当する。

▼図1 「ひかりTV」会員数推移(11年度は目標値) 出典:NTTぷらら 会社説明資料より
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NTTぷらら 広報部 広報室長の川上久直氏は、「地デジ化に伴うテレビ買い替えの需要増の影響もあり、会員数は順調に伸びてきた。それだけでなく、天候が悪い日にはVODの視聴数が増えるという傾向もあるようにVODの認知も進んでいる」と分析する。2011年度末の目標は190万会員。目標達成に向けて、「現状は光回線加入者の1割強であるが、さらに既存の光回線ユーザーに対してVODを訴求すれば会員を獲得できると見ている」と説明する。

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Twitter連動やモバイル端末で視聴できるサービスも

基本的なVODサービスやIPTVサービスで地歩を固めるだけでなく、NTTぷららおよびアイキャストは2010年度から新たな施策を展開している。例えば、IPTVならではのサービスとして、テレビサービスで放送中の番組を、番組の最初からさかのぼって再生できる「さいしょから機能」のトライアル提供を2010年10月に実施した。番組開始から12時間以内ならば最初からの再生が可能なもの。これは、ひかりTVの独自編成チャンネル「ひかりTV STYLE1 ハイビジョン(現 ひかりTVチャンネル)」で放送した、日本のプロ野球のパシフィック・リーグ クライマックスシリーズ ファイナルステージ全試合で提供した。

2011年度からは、さらに展開の幅を広げている。NTTぷらら サービス本部 サービス企画部長の安江律文氏は、「マルチスクリーン化と、ソーシャルメディアやショッピングとの連携に取り組んでいる」とその方向性を示す。

まず、2011年4月にジャパネットたかたのテレビショッピング「ジャパネットチャンネルDX」と連携した「ジャパネット楽々リモコンショッピング」サービスを開始した。次いで2011年8月に、スマートフォンやタブレット端末で、ひかりTVのビデオ作品を視聴できる「ひかりTVどこでも」サービスを開始した。これはWi-Fiや3Gなどのモバイルインターネット環境を介してビデオを視聴できるサービス。Android端末の一部機種とiPhone/iPadで利用できる。さらに、放送中の番組画面上でTwitter のツイートを表示する「Twitter連動機能」も2011年8月に試験提供している。これは8月27日、28日に独自編成チャンネル「ひかりTVチャンネル」で放送したプロ野球「埼玉西武ライオンズ 対 北海道日本ハムファイターズ」の試合中継で実施した(図2)。

▼図2 Twitter連動機能の「応援合戦モード」では、両チームの応援ツイートが画面両側に流れる
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その中でも、スマートフォンやタブレット端末でビデオ作品を視聴できる「ひかりTVどこでも」は、スマートテレビ時代を先取りしたものとも言える。専用の無料アプリケーションを端末にインストールして利用する。対象は、ひかりTVの「お値うちプラン」「ビデオざんまいプラン」に契約しているユーザーで、約3000本のビデオ作品を追加料金なしで視聴できる(図3)。

▼図3 「ひかりTVどこでも」はスマートフォンやタブレット端末をビデオ観賞用スクリーンに変える
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マルチスクリーンに対応した便利な機能も備えている。番組の視聴を途中で止めたとき、次に続きから再生できる「レジューム機能」を、「ひかりTVどこでも」にも拡張したことだ。自宅で見ていたビデオの続きを外出先のスマートフォンで、また外出先のスマートフォンで視聴していたビデオの続きを家庭のテレビで、シームレスに視聴するといったことが可能だ。さらに、スマートフォンが利用しているモバイルインターネット環境(Wi-Fiや3G)の通信速度に応じて、最適な画質を自動で判別して配信する仕組みも備える。

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BMLを使い双方向機能を実現

「ひかりTV」サービスで試験提供した「Twitter連動機能」や、サービス提供中の「ジャパネット楽々リモコンショッピング」サービスは、地上デジタル放送やBSデジタル放送で利用しているデータ放送記述言語であるBML(Broadcast Markup Language:データ放送記述言語)を利用した双方向番組である。この2つの番組に連動したデータ放送は、通常のデジタル放送のように映像・音声信号に重ねて配信されるのではなく、インターネット経由でBMLサーバーから受信する。デジタル放送視聴時と同様に、ユーザーはリモコンの"d"ボタンを押すことでデータを閲覧できる。Twitter連動番組の場合はパソコンや携帯電話、スマートフォンなどからツイートしたコメントや応援メッセージが、ショッピング番組の場合は放送中の商品詳細情報がそれぞれ表示される。

ひかりTVのショッピング番組連動サービスは、ユーザーにもメリットをもたらす(図4)。一般的なテレビショッピングやネットショッピングでは、届け先住所の入力などの手間がかかる。一方、ひかりTVサービスのショッピングならば、基本情報を入力する必要はない。もう1つは、VODの活用。その時に放送していない商品についても、VOD機能を利用して好きな時間に見たい商品の紹介番組を見てショッピングができる。

▼図4 ジャパネット楽々リモコンショッピングの商品紹介画面。ひかりTVの登録情報を使って簡単に購入手続きができる
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テレビもその他の端末も単なる「スクリーン」

今後に向けて、NTTぷららはさまざまな方策に取り組んでいく。安江氏は、「スマートテレビ時代のテレビは、単なるスクリーンになるのではないか。つまり、地上デジタル放送、BSデジタル放送、CSデジタル放送、VODが視聴でき、SNSなどのソーシャルメディアが利用できるスクリーンを持った端末がすべて"スマートテレビ"の一種になると思う」と前置いたうえで、「スマートフォンを含め、テレビ以外のデバイスに向けたサービスに力を入れていきたい」と説明した。

例えば、ひかりTVのスマートフォン向けサービスのさらなる展開や、テレビとソーシャルネットワークとの連携、双方向機能を利用したレコメンドサービスなどを検討していると言う。特に、ひかりTVで提供しているコンテンツをスマートフォンやタブレット端末と連携させることで、サービスの見せ方やユーザーの使い方が大きく拡がる。マルチスクリーンのサービスでVODのメリットを訴求できれば、さらなる加入者の獲得にもつながる。今後のNTTぷららが提供するサービスの展開に注目していきたい。

■コラム「IPTVサービスとは」

IPTVとは、一般的にはIP(Internet Protocol)ネットワークを用いたテレビ放送や映像配信サービスの総称である。例えば、オープンなインターネット経由でパソコン向けにビデオオンデマンドサービス提供するYouTubeやニコニコ動画、Yahoo!動画がある。一方で、テレビ向けにビデオオンデマンドサービスを提供するひかりTV、ひかりone TV、アクトビラ、U NEXT、BBTVなどもある。その中には特定の通信事業者が提供するクローズドなIP網経由で、IPマルチキャストによるテレビ向け多チャンネル放送サービスもある。一般的には、これらをすべてIPTVサービスと呼ぶことが多い。

しかし、IPTVは、国際標準化団体であるITU-T(国際電気通信連合 電気通信標準化部門)では、「管理され、かつ閉じられた(クローズドな)IP網上で提供されるテレビ、ビデオなどのマルチメディア・サービス」と定義されている。また、IPTVは専用端末(STB:セットトップボックス)やIPTV機能を搭載したテレビを用いて映像を楽しむことを前提としている。なお、国内においては法制度上、IPTVはIPマルチキャスト放送を行う電気通信役務利用放送として位置づけられている。

総務省の「ケーブルテレビの現状」2011年6月によると、有線による電気通信役務利用放送事業者(有線役務利用放送事業者)の登録数は26社で、多くの事業者が有線テレビジョン放送と同様の方式(RF)で放送サービスを行っている。IPマルチキャスト方式による放送サービスを提供している事業者は、アイキャスト(ひかりTV)、KDDI(ひかりone TV)、ビー・ビー・ケーブル(BBTV)、クーレボ(クレアトゥール)、U-NEXT(U-NEXT)の5社である。

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。