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「Androidユーザーの急増で一番わりを食ったのは・・・?」 - Asymco

2011.09.16

Updated by on September 16, 2011, 13:40 pm JST

昨日、市場調査会社のコムスコア(comScore)が欧州5ヵ国 -- フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、イギリスでのスマートフォン普及動向やメーカー/OS別の導入台数シェアなどに関する調査の結果を発表していた。このレポートの見出しは「Androidが過去12ヶ月間でものすごい成長(phenominal growth)を遂げた」というもので、おそらく米国での調査でも似たようなものになっただろうと思わせるものだった。またこの調査結果では、グーグル(=Android)の明らかな増加(16.2%増)に反比例する形で、Symbianのシェアが減少(16.1%減)している点も目を惹いた。ただし、コムスコアが発表したこのデータが伝えているのは、実はそれほどシンプルなものではない。

市場でこの1年間にどんなことが起こっていたかを理解するためには、特定部分のシェアの変化を見るよりも、消費(=販売)台数と実際のユーザーの数の変化に目を向けるほうがはるかに価値がある。たとえば下記の2つのグラフは何を示しているのだろうか?

201109161340.png
[上の棒グラフは、OS別ユーザー数の変化 - EU5カ国 - 2010年8月〜2011年7月、横軸は新規ユーザーの数(単位:百万人)/ 下の円グラフは、OS別シェア(非スマートフォンを含む)。左:2010年7月末時点, 右:2011年7月末時点]

新規ユーザー数の増減を示した棒グラフからは、この1年間に3つのOS -- (グーグルの)Android、RIMのBlackberry、アップルのiPhone (iOS)のユーザーが増えたことがわかる。またマイクロソフト(Microsoft)、(ノキアの)Symbian、その他(Other)には無視できる程度の変動しかなかったことも読み取れる。いっぽう、なんと約2900万人も非スマートフォン(従来型携帯電話)ユーザーがスマートフォンに乗り換えている。この新規スマホ組の内訳は、Android端末に乗り換えた者が1600万人、iPhoneには630万人、そしてRIMのBlackberryには340万人となっている。さらに、あのSymbianでさえ33万人の新規ユーザーが生まれたが、その一方でWindows mobile/Windows Phoneのユーザーは100万人減少となったことも見てとれる(ただし、この期間中にはWindowプラットフォームの積極的なプロモーションが行われなかったことを考え合わせると、この数字は妥当なものかもしれない)。

さらに、このデータを下の円グラフに置き直してみると、コムスコアのレポートではわかりにくかった点がずっとはっきりと見えてくる。ここ1年間にあったモバイルOSシェア変動の最大の要因は、非スマートフォン利用者によるスマートフォンへの乗り換えであること、またAndroidがSymbianからシェアを奪ったようにはまったく見えないこと、などだ。このグラフからわかるのは、Androidのシェアを押し上げたのがそれまでスマートフォンを使っていなかった人たちだったということで、comScoreのレポートとは異なる結論に行き着く。

201109161343.png

これと同じやり方で米国市場についてのデータをグラフにしてみたのが下の棒グラフと円グラフで、いずれもやはりcomSoreのデータを利用している。米国でも欧州の場合と似たような流れがあることが読み取れる。

200109161341.png
[上の棒グラフは、OS別ユーザー数の変化 - 米国 - 2010年8月〜2011年7月、横軸は新規ユーザーの数(単位:百万人)/ 下の円グラフは、OS別シェア(非スマートフォンを含む)、左:2010年7月末時点, 右:2011年7月末時点]

米市場では、RIMのユーザー増減数がマイナスになっているものの、非スマートフォン利用者のマイナス幅に比べれば、はるかに少ないことがわかる。全体のパターンは欧州5カ国の場合とよく似ている。

さらに、この米国のデータと上記の欧州のデータを組み合わせてみたのが、次ページのグラフである(横軸の単位が2倍になっている点に注意)。

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201109161342.png
[上の棒グラフは、OS別ユーザー数の変化 - 米国+欧州5カ国 - 2010年8月〜2011年7月/横軸は新規ユーザーの数(単位:百万人)/ 下の円グラフは、OS別シェア(非スマートフォンを含む)。左:2010年7月末時点, 右:2011年7月末時点]

この2つのグラフからは、過去12ヶ月の間に初めてスマートフォンを手にした携帯電話ユーザーのほとんどが、AndroidもしくはiPhoneに流れたことが読み取れる。また、米国とEU5カ国の人口をあわせると約4億7000万人だから、そのなかの6000万人弱がこの1年間で新たにスマートフォンを購入・契約した(=非スマートフォン利用者が減少した)というのは、けっして小さな出来事とはいえない。6000万人弱という数は、先進国市場でこの1年に記録したスマートフォン新規購入者の約12%にあたる。スマートフォン利用者の増加がこのペースで続けば、いわゆる「ティッピングポイント」ーースマートフォン・ユーザーの数が従来型携帯電話の利用者数を追い抜く時は、あと1年ほどで来ることになる。

このティッピングポイントだが、売上金額でみた場合は、実はすでに超えてしまっている。米国や欧州の市場ではしばらく前(欧州5カ国の場合は2010年11月)にスマートフォンの売上合計金額が従来型携帯電話機のそれを上回り、現在この流れはさらに加速している。さらに、もし過去20年間にわたってみられたモバイルテクノロジーの普及パターンが繰り返されるとすると、世界各地の新興市場でも、2〜3年以内にこのティッピングポイントが来ることになるだろう。

本ブログでは、これまで米国市場のデータを採り上げた際に、何度もこのティッピングポイントについて説明してきた。そして、いま明らかになりつつあるのは、米国で起こったのと同様のスマートフォンへの乗り換えブームが、現在欧州でも進行中である、ということだ。

このcomScoreの調査データからは、スマートフォンに対していかに大きな需要があるかという、その需要の大きさがわかる。各々の市場シェアの増加という点では、他のOSに比べて得られるメリットが少ないOSプラットフォームもあるかもしれない。しかしこの大きなトレンドから、もっとも大きなマイナスの影響を受けているのは、明らかに従来型の携帯電話機である。どの端末メーカーにとっても儲からない(利益が残らない)だけでなく、こうした製品が消費者から見放されることもますます増えているからだ。

同時に、いまわれわれが問題にしているのは、米国+欧州5カ国であわせて4億5000万人の携帯電話利用者のうち、全体の10%にも満たない部分であることは付け加えておきたい。スマートフォンへのシフトという流れが世界的に広がるなかで、われわれはいずれ十億単位で普及台数の話をすることになろう。

(執筆:Dirk Schmidt / 抄訳:三国大洋)

【原文】
Biggest mobile loser? The non-smart phone

【参照情報】
Android Captures #2 Ranking Among Smartphone Platforms in EU5 - comScore

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