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ノキア シーメンス、「Liquid Net」技術を発表 - 携帯通信網を「クラウド」化

2011.09.21

Updated by WirelessWire News編集部 on September 21, 2011, 09:06 am JST

通信機器業界第2位のノキア シーメンス ネットワークス(Nokia Siemens Networks:以下、NSN)は欧州時間20日、「Liquid Net」というモバイルネットワーク向けの新しいアーキテクチャーを発表。コンピュータの世界における仮想化・クラウド化と類似する考えを携帯通信網に適用し、ネットワークトラフィックの変化にあわせて通信インフラの自動最適化を図ることで、ネットワークキャパシティの有効活用やインフラへの投資を抑えることを狙ったものだという。

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[出典:Mobile networks are learning how to be webscaleGigaOM]

現在のネットワークでは、たとえば平日の日中に比較的稼働率が高いオフィス街のネットワークも夜間や週末には稼働率が下がるが、それに対して隣接する住宅地ではこれと反比例するようなトラフィック負荷の変動パターンがみられる場合に、地域全体での最適化を通じてボトルネックの解消などを図ろうとしていても難しい。このため通信事業者はピーク時を想定したネットワークの設計・構築を行わなければならないものの、これを実現するためには高額な投資が必要になってしまう。また不測の事態などでネットワークトラフィックが想定したピークを越えてしまった際にも稼働率の低い部分のインフラリソースを融通することができず、利用者にとっては「つながらなさ」「つながりにくさ」の原因のひとつとなっていることも少なくない。NSNによれば、従来の中核ネットワークではキャパシティの最大50%が有効活用されずにいる例もみられるという。

Liquid Netはこうした従来型ネットワークの問題を解決するためのものとなるが、この話題を伝えたReutersでは「通信ネットワークの混雑緩和が期待でき、通信機器市場の様相を一変させる可能性もある技術」と記している。

携帯通信網を仮想化・クラウド化する技術については、NSNと競合するアルカテル・ルーセント(Alcatel-Lucent)でも「LightRadio」というソリューションを発表しているものの、すでに一部の顧客に関連製品の納入を開始しているNSNに対して、アルカテル・ルーセントではまだ製品の出荷段階に至っていないという。

いっぽう、この話題を採り上げたGigaOMでは、Liquid NetやLightRaidoが対応する通信インフラがそれぞれのベンダーが提供する製品を採用して構築されたネットワークに限られる点に言及。コンピュータの仮想化が進んだ背景には、ヴイエムウェア(VMware)やシトリクス(Citrix)、マイクロソフト(Microsoft)などのベンダーからハードウェアやOSの違いに関係なく利用できる製品が出されているのに加え、オープンソースのOpenStackなども入手可能であることも理由のひとつであるとし、それに対して携帯通信網の分野では、OpenFlowのような技術も存在するものの現時点ではまだ実験段階にすぎないと指摘。Liquid Netのような技術が通信事業者間で広汎に採用されていくには、コンピュータの仮想化・クラウド化で生じたような、よりオープンな環境がつくられる必要があるとの考えを記している。

【参照情報】
Mobile networks are learning how to be webscale - GigaOM
NSN to push cloud computing to telco gear market - Reuters

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