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急拡大するM2M市場に通信事業者はどう斬り込むか──標準対応とクラウド利用で低コストのサービス提供へ

2011.10.06

Updated by WirelessWire News編集部 on October 6, 2011, 12:00 pm JST Sponsored by NOKIA

携帯電話の契約数が人口を上回るようになると、人間が利用する端末だけを提供していても利用の大きな伸びは期待できない。そこで以前から、機器や装置が自動的に通信する「マシンツーマシン」(M2M)と呼ぶ通信のジャンルに期待が持たれてきた。さらなる利益を確保するために、通信事業者はM2Mを成長源の1つと認識している。それではM2Mを取り巻く環境や、今後の展望はどうなっているのか。ノキア シーメンス ネットワークスでM2Mソリューションのアジア地域担当責任者を務めるサイモン・マッケイ氏に、最新動向を尋ねた。

成長するM2Mマーケット

マシンツーマシン(M2M)とは、簡単に言えば「人間の手によらず、機械や装置が広域ネットワークを介して通信する」ソリューションである。国内を見ても、プロパンガスのメーターや自動販売機にPHS/携帯電話の通信機器を備え付け、残量などの情報をセンターに送るといった事例はこれまでにあった。これらもM2Mの1つの形態であり、すでに実用化されている。

マッケイ氏はグローバルのマーケットの状況をこう説明する。「モバイル市場にはスマートフォンやスマートデバイスなど、たくさんの端末がある。それらは一般コンシューマ向けの"B2C"のコンセプトでデザインされている。そこに新しい市場を開拓する端末として、スマートオブジェクトが登場してきた。スマートオブジェクトは、人の手を介さずにスマートなソリューションを提供する。そこが今までのコンシューマ向けの端末と大きく異なるところだ」。

市場規模の予測を見ていこう。マッケイ氏によれば、スマートフォンやスマートデバイス、そしてM2Mを実現するスマートオブジェクトを合わせたスマートシステムの市場規模は、2014年に接続ベースで2180億ユーロという予測があるという。そのうち、携帯電話の技術を使って接続するM2Mのソリューションは350億ユーロを占める(図A)。これは通信事業者にとって侮れない大きなマーケットになる。

▼図A スマートオブジェクトをネットワークで結ぶM2Mが持つ可能性
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既存のビジネスモデルと大きな相違

M2Mがこれまでのコンシューマ向けのマーケットとどう違うか、マッケイ氏はこう説明する。

「M2Mでは、新規のお客様からの収入は下がる。携帯電話やスマートフォンならば50ドルの月額収入があるとしても、M2Mだと例えば3ドルの月額収入しか得られない。しかし、端末当たりの利益は少なくても、一方で端末数が非常に大きくなることで全体としての利益を確保するビジネスモデルが成り立つ。M2Mは、従来のマーケットよりも端末台数の規模が100倍、1000倍に広がる。ここが一番の違いだろう」(図B)。

▼図B 単価は安くても規模が大きいM2Mマーケット
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数が多くなること以外にも、従来のコンシューマ向けビジネスモデルとは異なる部分もある。例えば、M2Mでは「お客様=マシン」であるということ。このことが、「お客様=人間」の従来モデルとは大きく異なる効果をもたらす。移り気な人間と違って、機械は頻繁に利用するサービスを変えたがったりしない。解約して事業者を次々と乗り換えていく「チャーン」なユーザーの率をとても低くできる。

M2Mマーケットでは、通信事業者はチャーンのユーザー率を下げられるだけでなく、新規加入やアフターケアのコストを下げることもできる。M2Mのビジネスモデルで利益を最大にするためには、「通信事業者は既存のビジネスプロセスは変えないで、ターゲットが人間からマシンに変わるだけだということを認識することが、とても重要だ」とマッケイ氏は指摘する。逆に言えば、既存のビジネスプロセスをいかに流用しながらM2Mの新しいビジネスモデルを構築するかが、通信事業者の考えるポイントになる。

M2Mマーケットへのアプローチ方法は、大きく2つに分けられる。1つは、特定の業種の特定ソリューションに特化した、垂直統合にフォーカスする方法。もう1つは、業種やソリューションを問わずに利用できるサービスを水平展開的に提供していく方法である。

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M2Mに大きな変化、端末とアプリケーションを分離

ここで、マッケイ氏は、M2Mサービスを提供するネットワークに根本的な変化が求められていると指摘する。

「従来のマーケットでは、M2Mで通信するデバイスと、それを利用するビジネスアプリケーションは1対1の対応にあった。例えば家庭に設置して電力消費情報を収集するスマートメーターは、アプリケーションとしてMDM(Meter Data Management)と直結している。ネットワークシステムも、スマートメーターとMDMが1対1の対応を取るように構成されてきた。ここで課題が生じる。通信事業者はこれから先、同じインフラを使い、料金・価格体系は変えずに、いかにしてコストを下げて利益を上げるか。

それには、M2Mのサービスの構成要素である、端末とアプリケーションを分離する必要があるとマッケイ氏は説く。1対1の関係を切り離し、ネットワークサービス側が標準的なインターフェースを提供することで、複数の端末やアプリケーションを1つのネットワークサービスで利用できるようにすればいいというのだ(図C)。

▼図C アプリケーションと端末の関係を切り離し、さらに低コストでサービスを提供
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ネットワークのインフラは、各種のアプリケーションとそれを利用する端末で共用する。スマートメーターとMDM、健康管理のためのセンサーと病院のアプリケーションなど、これまで1対1だった関係を解き放ち、1つのM2M専用のネットワークサービスにつないで利用する形態である。いわば、M2Mのためのクラウドサービスがあり、それに各種の端末やアプリケーションが接続するといったイメージだ。

マッケイ氏は、こうした新しいM2Mソリューションを構築できるようにするため、ノキア シーメンス ネットワークスは「Cumulocity」(キュミロシティ)と呼ぶアプリケーションプラットフォームを用意していると言う。これは、M2Mのサービスをクラウドによってスピード感を持って提供できるようにするプラットフォームだ。

Cumulocityでは、さまざまな端末(スマートオブジェクト)に対しては、それぞれの標準に準拠したAPIを用意する。スマートメーターやセンサーネットワーク、RFID、POS端末など、利用する業種もソリューションも異なる端末をクラウドに接続できる。こうすることで、通信事業者もユーザー企業も現在持っている資産をそのまま生かして、新しいM2Mソリューションに移行できる。また一方で、それぞれに必要なアプリケーションの作成には、SDKを提供。エンドユーザーやアプリケーション開発者が、それぞれのソリューションで必要な機能を作り込むことが可能だ。

他方で、デバイスメーカーやアプリケーションの開発者にとってもメリットがある。センサーやスマートメーターなどのスマートオブジェクトや、対応するアプリケーションをグローバルマーケットに展開できる可能性が広がるからだ。プラットフォームとしてCumulocityを利用していれば、どこの国であっても端末やアプリケーションが流用でき、グローバル展開のスピード感を高められるのである。

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世界標準に合わせることが重要

M2Mの新しいマーケットでは、顧客がいま持っている資産を活用して新しいアプリケーションが作れるアプローチの仕方が重要だとマッケイ氏は言う。こうすることによって、マルチデバイスシステムの構築、マルチテナント化、システム管理が簡単に早くできるようになると言う。

そうした中で、マッケイ氏は「ノキア シーメンス ネットワークスの考え方として、世界標準のプロトコルに合わせていくことがスタンダードになっている。グローバルエコシステムの一部を担っていきたいなら、スタンダードに合わせなさいと説明している。これが、私たちのお客様である通信事業者様に提案している概念だ」と言う。Cumulocityのアーキテクチャには、その考えが反映されている(図D)。

▼図D Cumulocityが提供するクラウド型のM2Mのプラットフォーム
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Cumulocityのプラットフォームでは、Webサービス、SOAP、DLMS、MultiSpeakといった世界標準を利用していることがその一例になる。また、Cumulocityはクラウドサービスとして提供するので、顧客はハードウエアを所有してメンテナンスする必要はなく、スケーラビリティも確保できる。M2Mが個別の事例に閉じたものから、広がりを持ったサービスへと展開できるようになるわけだ。

エンドツーエンドのネットワークの設計がしっかりしていることも重要である。ノキア シーメンス ネットワークスではネットワーク構築にもフィーチャーしている。

マッケイ氏はこう続ける。「例えば、スマートフォンならではのトラブルというものがある。通信するデータ量が既存の携帯電話に比べて多いため、通信に時間がかかるといったものだ。その上、多くのスマートフォン上のアプリケーションが通信を要求するため、通信制御のための信号が非常に多くなる。例えばニュージーランドでは制御信号が増えすぎて通信できなくなるというトラブルがあった。データの量が多くなったためではなくて、制御信号が増えすぎたためである。データに対して制御信号が多いのは、M2Mでも同様。こうした事象が起こらないように、端末がどこにあるかを認識して全体のネットワークリソースを使わずに済むような仕組みを提供する。品質の高いサービスを提供できるネットワーク、すなわち"スマートモバイルネットワーク"が必要になる」。

通信するネットワークには、いろいろな技術が使われている。3Gや4Gのモバイルネットワークはもちろん、固定電話などのネットワークにも対応できる。M2Mでは、アプリケーションの要求に従って、ネットワークプラットフォームは柔軟に構成できることも重要なポイントになる。

M2Mで利用するネットワーク自体はLTE、2G、3Gなど何でもいい。M2Mのアプリケーションの多くはノンクリティカルインフォメーションであり、スピードがいるわけではないので、方式にはあまりが関係ないと言う。ただし、「M2Mの中でもクリティカルな情報を扱うもの、例えば警察などのアプリケーションでは低遅延が要求されることもある。そうした場合は、今後LTEが必要になっていく」(マッケイ氏)。

インフラとしてのネットワークは、適材適所の技術を用いる。そしてその上で、通信事業者はマルチデバイス、マルチテナント、マルチアプリケーションで使えるM2Mサービスを構築する。ノキア シーメンス ネットワークスは、そのために世界標準に則り、グローバル展開が可能なクラウド型のサービスとしてアプリケーションプラットフォームを提供する。通信事業者がM2Mのマーケットに向けて、低コストかつ高付加価値なサービスを提供するための1つの構図がここにある。

201110061200-5.jpgSimon Mackey氏(サイモン・マッケイ)
ノキア シーメンス ネットワークス ビジネス・ベンチャー部門アジア地域担当
通信業界において19年以上の国際的な経験を持つ。大学院卒業前からTelstraの研修エンジニアとしてキャリアをスタートさせ、同社で多様な職務を経験。1996年、ノキアに入社し、セールス部門において伝送ソリューションの市場開拓を推進した後、6年以上にわたりアジア太平洋地域および欧州のマーケティングを担当。2004年、アジア太平洋地域のブロードバンド・セールスの責任者としてオーストラリアに戻り、オーストラリア・ニュージーランド・および太平洋地域の国々で販路拡大の活動に重点を置いている。

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