少し前のエントリーで、携帯電話端末市場のベンダー別利益の変化について触れていた。下のグラフはその時に使ったものである。
[端末ベンダー別営業利益の割合比較/(左)2007年第2四半期、(右)2011年第3四半期]
あの比較の狙いは「破壊的な変化がどういうものか」を示すことにあった。先行組が持つようなアドバンテージがひとつもない新規参入者が、市場へのアクセスや知識の点で理想的な条件に恵まれた企業から利益を奪い取る、という現象がどんなものかを示そうとした。
利益分配の変化を眺めてみることは、こうした現象を理解するためのうってつけのやり方といえる。「最終的な利益」への影響の大きさや結果が実感でき、細かい点にわずらわされずに済むからだ。しかし、いつもああした利益率を示すデータが入手できるとは限らない。たとえば売上の推定額しか手に入らない場合もある。
幸いなことに、売上の変化から、利益のそれと似た傾向が読み取れる場合があり、しかもそれが十分代替手段となることも少なくない。下のグラフは、携帯電話端末市場でのメーカー別の売上シェアを比較したものである。
[端末ベンダー別売上比率の推移、2009〜2011年各第3四半期]
アップルとHTCの売上の合計額は2009年には全体の17%に過ぎなかった。それが2年後の今年第3四半期には33%まで増加した。わずか2年で倍増したことになる。
こうした変化は、実は携帯ゲーム端末の市場でも起こっている。(下記の円グラフは、Flurryのデータをつかって作成)
[携帯ゲーム端末プラットフォーム別売上比率の推移、2009〜2011年]
iOSおよびAndroid向けゲームのシェアは、この2年で3倍近く増えている。携帯電話端末の市場とゲーム機市場の利益の推移について一概に「似たような変化がみられる」ということはできない。ただ、それでもiOSのほうが任天堂のプラットフォームよりもはるかに大きな価値をもたらす原動力となっている、ということはできそうだ。
ソニーと任天堂にはそれぞれ(据え置き型の)ゲーム端末ビジネスもあるので、「新規参入組」の影響は携帯電話端末市場ほど大きくないかも知れない。しかし、両者のビジネスがこの先どれほど長く持ち堪えられるか、という疑問も浮かんでくる。実際に、iPadと接続したテレビの大画面でゲームを楽しむという有望な選択肢がすでに存在しているのだから。
(執筆:Horace Dediu / 抄訳:三国大洋)
【原文】
・Pac-Man
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