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ネット接続テレビ

2011.12.26

Updated by Kazutaka Shimura on December 26, 2011, 16:00 pm JST

今までテレビを買うといえば、家電メーカーの製品しか思い浮かばなかった。しかし、Google TVやApple TVといったIT企業も「テレビ」と名のつく製品を生み出している。

その背景には2つの技術革新が起きた点が挙げられるだろう。第一にインターネットで送信できるデータ量が増えた点だ。ブロードバンドの普及で、画像やテキストよりも量が多い映像のインターネット配信が可能になったのだ。

もう一点は、放送を受信する「テレビ受像機」以外でも、映像を再生可能になったことだ。パソコンやスマートフォンをインターネットに接続すれば、昨晩放送されていたテレビ番組を楽しむことができる。その結果、GoogleやAppleなど今まで「テレビ」とは関係のなかった企業が映像を再生する機器やサービスを生み出しているのだ。

それでもApple TVは、テレビに付ける「外付け」の機器だった。 インターネットに接続されたApple TVを「テレビ受像機」につなげると映画をレンタルできたり、ポッドキャストやユーチューブを楽しめる。つまり、Apple TVはテレビ受像機の補完機器であり、Appleと家電メーカーは共存関係にあった。

そのAppleが、モニター付きのApple TVを2012年中に販売開始するという噂が飛び交っている。映像サービスに関しては、27インチ画面のパソコンとテレビ受像機の違いは、「放送」を受信できるか「インターネット」が配信できるかどうかだけだ。Appleが、コンテンツ配信プラットフォームのiTunesと放送チューナーを搭載し、ユーザーに使いやすいインターフェースを持った機器をApple TVとして発表するのは、自然な流れだろう。

既に米国にはビジオ(Vizio)社がデジタルテレビ受像機のベンチャー企業として活躍している。自社工場を持たない同社は、低価格とネット接続サービスを充実させたテレビを開発し、米国デジタルテレビ市場のシェアトップを獲得してしまった。Apple TVもビジオ社と同じ成功を収める可能性を十分秘めている。

Google TVはプラットフォームで、Google TVを利用するメーカーが各々自分の製品を販売する。2011年11月には、ソニーとIT周辺機器を製造販売するロジテックの2社の製品が発表された。そして、2012年1月には、サムスンとLGからGoogle TVを利用したテレビ受像機の発表があると言われている。

サムスンやLGは既にインターネット接続を簡単にした「SMART TV」を販売している。米国やイギリス、それにシンガポールの家電量販店でも、サムスンとLGの「SMART TV」は目立つ場所に展示されている。Google TVは大手家電メーカーのブランドで発売されながらシェアを伸ばすだろう。

Apple TVはアップル社の製品で、Google TVはプラットフォームだから、店頭では各家電メーカーのブランドとして陳列される。それは、スマートフォン市場におけるiPhoneとアンドロイド端末の競争と似ている。スマートフォン市場では、アンドロイド端末のシェアは、約1年でiPhoneを抜き1位になった。また、上位10位の家電メーカーのシェアは1年で約15%低下した。これは、無料のアンドロイドOSを利用し中国や台湾などの無名メーカーが安価な機器を販売しているからだ。

モニター付きのApple TVが発売されたり、Google TVの本格的な展開が始まる2012年は、こうしたスマートフォンの競争構造が、テレビ市場にも持ち込まれる。スマートフォンが、今までのケータイ端末にないツイッターやゲームなどのソーシャルコンテンツを楽しむ機器として普及したように、こうしたApple TVやGoogle TVもリビングのテレビ受像機とは違うコンテンツ配信事業者が新たなコンテンツ配信を行う。たとえば、Apple TVにはiTunesが配信されるし、テレビ番組を配信するHulu(フールー)やAmazonもGoogle TVやサムスンやLGのSMART TVと提携している。テレビ受像機におけるテレビ局の役割を彼らが担うのだ。

大手家電メーカーのシェアが大きい日本でも、2012年の年末商戦では家電メーカーのネット接続テレビが大きな目玉商品となり、IT企業の販売するテレビと競合する姿が見られるだろう。

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志村 一隆(しむら・かずたか)

情報通信総合研究所主任研究員。1991年早稲田大学卒業、WOWOW入社。2001年ケータイWOWOW設立、代表取締役就任。2007年より情報通信総合研究所で、メディア、インターネットの海外動向の研究に従事。2000年エモリー大学でMBA、2005年高知工科大学で博士号を取得。文系・理系に通じ、さらには国内外のメディア事情、コンテンツ産業に精通。著書に『ネットテレビの衝撃―20XX年のテレビビジネス』(東洋経済新報社)『明日のテレビ チャンネルが消える日』(朝日新書)がある。