携帯電話端末市場と、その一部であるスマートフォン市場の状況を推測できるだけの情報が集まったので、いくつかのグラフにまとめてみた。
まず左のグラフは、携帯電話端末市場の全体の様子を示したもの。この図の通り、スマートフォンの出荷台数はすでに携帯電話全体の30%以上に達している(非スマートフォンの割合は69%)。そのなかで、スマートフォンOS別のシェアは次のようになっている。
直近の四半期(7-9月期)には、先行各社が提供するプラットフォームのシェアが、季節要因とは関係なく低下するというできごとがあったが、これは初めてのこと。BlackBerryとSymbianはいずれも2四半期連続で大幅な減少となり、iPhoneも季節要因による減少(もっと正確にいうと、新モデルへの移行を控えた減少)が見られた。Windows Phoneのシェアはわずかながら増加したが(1.3%から1.7% )、これは誤差の範囲内ともいえる。
Android(Androidモドキを含む)搭載のスマートフォン出荷台数は7000万台近くまで急増しているが、ただし実際の販売台数(セールスルー)はこれより約1000万台ほど少ない可能性がある。それでも、同期に販売された携帯電話端末の「5台に1台がAndroidスマートフォン」という状況になっており、3年前にはそのシェアがほぼゼロに等しかったことを考えると、これは大した成功といえる。
端末ベンダー別のシェアの推移は下のグラフの通り。
サムスン("Sam")のシェアは26%に達し、1年前のノキアと立ち場が入れ替わった格好。そのノキアではシェアが14%を下回り、またアップルは14%強のシェアを維持したが、前四半期の19%からは減少となった。HTCは11%のシェアを押さえて、RIM(9%)を追い抜いた。ソニーエリクソン("SE")は6%前後、モトローラは約4%までシェアを落とし、LG電子(5%)に追い越されている。
ベンダー別ならびにOSプラットフォーム別の出荷台数の推移は下のグラフのようになった。
これらのグラフのなかで、緑系統で示しているのはOSとハードウェアを同一企業が提供するもの、それに対して茶系統のものはOSメーカーとハードウェアメーカーが異なるものである。こうすることで、それぞれのバリューチェーンの変化がはっきりすると思う。ノキアが自社のSymbianからマイクロソフトのWindows Phoneに主力OSを切り替えたため、前者の割合は今後さらに少なくなるだろう。
さて。このグラフが示唆しているのは「携帯電話機メーカーが、OSとハードウェアの両方を提供する『統合型モデル』が終わりに近づきつつある」ということだろうか。あるいは、それは「携帯電話機市場における技術革新の終わり」を示唆するのだろうか。
大半の携帯電話機メーカーが、携帯端末(のビジネス)から「並外れた」("extraordinary")額の利益を得ようという野心をいまにも手放す用意があるようにように見える[*]。アップルを別にすれば、どのベンダーもOSプラットフォームを押さえる指揮者役のソフトウェアメーカーに「完全降伏」し、彼らの思いのままに操られているかのようだ。ただし、そうしたソフトウェアメーカーがどんな意図を持ち合わせているかは予想もつかない(あるいは「不透明」というべきかもしれない)。
しかし、「技術革新が絶え間なく起こり続ける」という仮説が正しいとすれば、この可能性--つまり、OSベンダー側が影響力をさらに強め、ずっと主導権を握り続けるという可能性は排除される。アップルの「Siri」のような新たな入力方法の登場は、「従来の視覚的なインタラクションやそれに依存したプラットフォームが、今後もずっと主流であり続けるとは限らない」ことを示す手がかりといえる。そして、クラウドコンピューティングとそれに付随するインテリジェントな仕組みが、新しい形でのハードとソフトの統合を可能にするという点は変わっていない。
これからもモバイル・コンピューティングの未来について話をしていくので、どうかお見逃しなく。
注[*]
『並外れた』(利益)というのはつまり、単なる「部品の組み立て」や「製品の流通」だけでは得られないマージンという意味だ--PC業界のことを思い出してみよう。
(執筆:Horace Dediu / 抄訳:三国大洋)
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