[2012年第22週]WIRELESS JAPANの見所は? 放射線センサースマホ、KDDIがSON導入
2012.06.04
Updated by Naohisa Iwamoto on June 4, 2012, 10:00 am JST
2012.06.04
Updated by Naohisa Iwamoto on June 4, 2012, 10:00 am JST
ワイヤレス関連の一大イベントである「WIRELESS JAPAN 2012」が、5月30日〜6月1日に開催された。イベントと前後して、ソフトバンクやウィルコム、イー・アクセスも2012年夏モデルを発表するなど、話題が盛りだくさんの1週間だった。モバイルまずWIRELESS JAPAN 2012の展示や基調講演からトピックを紹介していこう。
まず、NTTドコモのブース。ここでは、省電力化と災害対策を兼ね備えたグリーン基地局や、裏表両面をタッチできる透過型液晶の展示、ネットワーククラウドの各種のデモなどが行われている。グリーン基地局はモックアップを展示。ソーラーパネルによる太陽光発電と、リチウムイオン電池による蓄電池を使い、環境負荷削減や災害時の対策につなげる。
ユーザーインタフェースとしての新しい試みが、表裏両面タッチが可能な透過型液晶。透過型液晶の両面にタッチパネルを貼り、表面からのタッチに加えて背面タッチによる操作も可能にした。透過型液晶なので、裏からも指で操作するポイントが見えるところが特徴だ(関連記事:【WIRELESS JAPAN 2012】NTTドコモ、グリーン基地局や両面タッチの透過液晶などを展示)。
KDDIのブースで注目されていたのは、異なる種類の通信手段をまとめて高速化する技術や、HTML5を使った車載インフォテインメントなどである。前者は、データ通信の高速化と3Gからのデータオフロードに寄与する新しい技術で、「リンクアグリゲーション無線技術」と呼ぶもの。3GやWiMAX、LTE、Wi-Fiなど、複数の通信手段を組み合わせて利用することで、スループットを高めることを狙う。
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車載インフォテインメントのデモは、スマートフォンと車載のディスプレイを連携させて新しい価値を生み出そうとするもの。車載ディスプレイは、HTML5のエンジンを搭載し、HTML5のコンテンツを実行できる。スマートフォンが、クラウドサービスと車載ディスプレイの中継端末との位置付けになり、車載端末の利用の幅を大きく広げることになりそうだ(関連記事:【WIRELESS JAPAN 2012】KDDI、異種通信をまとめて高速化する技術や車載ソリューションをデモ)。
M2Mのソリューションも複数のブースで見られた。アプローチは異なるが、多くの機器を手軽にM2Mのソリューションに取り込んだり、得られた情報をさらに活用するような、M2Mの拡大に向けた展示が見られた。KDDIのブースでは家庭内のセンサーから標準化されたZigBeeの規格で情報を収集する「センサゲートウェイ」を利用したシステムの展示があった。アプリックスのブースでは家庭内やオフィスの機器をM2M対応にできる通信モジュールのデモが行われ、来場者の関心を集めていた(関連記事:【WIRELESS JAPAN 2012】M2Mの拡大に向けた各社のアプローチ)。
このほかにも、電気興業のLTE-Advancedの基地局用アンテナの展示や、エリクソンのVoLTEのデモ、手元のiPhoneを防水対応にしてしまうFOXの新サービスまで、さまざまな展示があった(関連記事:【WIRELESS JAPAN 2012】LTE-AdvancedのアンテナからiPhone防水サービスまで展示)。
基調講演では、「アジアの移動通信サービス、現状と将来像」と題したパネルディスカッションが行われた。登壇者はインド・Tata Teleservices(以下タタ)の大野弘司氏、韓国・KTのキム・ソクジュン氏、ベトナム・Nam Post and Telecommunications Group(以下VNPT)のトラン・ビン・プック氏、そして日本からはNTTドコモの辻村清行氏。モデレーターは、国際電気通信連合(ITU)の無線通信規則委員会(RRB)委員の伊藤泰彦氏(関連記事:【WIRELESS JAPAN 2012】急速に成長するアジアのモバイル市場を各国のオペレーターが語る)。
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2012年夏モデルでは、すでに発表を終えて商戦に突入しているNTTドコモとKDDIに次いで、ソフトバンクモバイルとウィルコム、イー・アクセスが新製品を発表した。
ソフトバンクモバイルはプラチナバンド(900MHz帯)に対応したスマートフォン4機種と携帯電話3機種に加え、モバイルWi-Fiルーターを2機種ラインアップする。ソフトバンクの「PANTONE 5 107SH」はカラフルな普及モデルのスマートフォンで、世界で初めて放射線測定機能を搭載した。ウィルコムはAndroid搭載で3GとPHSに対応するスマートフォンなど3機種を発表した。ウィルコムの「DIGNO DUAL WX04K」は、PHSと3Gの双方に対応するスマートフォン。ウィルコムとしては初めてのAndroidスマートフォンとなる(関連記事:ソフトバンクとウィルコムが夏モデルを合計12機種発表、スマホは5機種)。
イー・アクセスは、Android 4.0を搭載したスマートフォン「GS03」を発売する。高い処理能力の1.5GHzのデュアルコアCPUを搭載し、Android 4.0の最新機能を利用できる。ディスプレイには4.3インチ大画面スーパー有機ELを搭載しながら、薄さ7.9mm、軽量110gのスタイリッシュボディを実現した(報道発表資料:Android 4.0搭載、薄さ7.9mm・軽量110gのスタイリッシュスマートフォン「GS03」を発売)。
LTEに対応した新しいデータ通信サービス製品がAmazon.co.jpから購入できるように。日本通信が提供する「日本通信 bモバイル4G Amazon.co.jp限定販売 高速定額(500MB/1ヶ月)」で、標準SIM版とmicroSIM版の2種類を提供する。パッケージをAmazon.co.jpから3150円で購入、1カ月以内に500MBを利用できる権利を1980円でチャージして利用する(関連記事:日本通信、Amazon.co.jp限定のLTE対応定額データ通信提供 500MBが月額1980円)。
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このほかのトピックを紹介する。まず、次世代インフラへの進捗から。ノキア シーメンス ネットワークス(以下ノキアシーメンス)は、KDDI向けに、自己管理ネットワーク技術「iSON(intelligent Self Organizing Networks)ソリューション」を提供したと発表した。これにより、CDMA2000およびLTEネットワーク間での安定した音声とデータサービスの提供を実現する(関連記事:ノキアシーメンス、KDDI向けに3GとLTEネットワーク運用を自動化するSONを提供)。
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル、イー・アクセスの各社は、大阪市営地下鉄御堂筋線の「淀屋橋〜本町」区間で携帯電話サービスを5月30日に開始した。淀屋橋と本町は隣接する駅で、駅間のトンネル内でもメールやインターネットといった携帯電話サービスが利用できるようになる。大阪市営地下鉄では、4月25日に中央線の「本町〜堺筋本町」の間で携帯電話サービスが始まっており、これに次ぐサービスエリアとなる(関連記事:大阪市営地下鉄の御堂筋線「淀屋橋〜本町」で携帯電話が利用可能に)。
法人のタブレット端末利用の幅が広がるかもしれない。インターネットイニシアティブ(IIJ)は、iPadを利用したSaaS型POSシステム「IIJ Smart POSサービス」の提供を開始する。最大の特徴は、狭い店舗でも使えるように省スペース性を追及し、POS端末としてiPadを使うこと。キャッシュドロアーとレシートプリンタを組み合わせて利用する。1端末あたりの月額費用が2万円から(報道発表資料:IIJ、iPadを活用したクラウド型の低価格POSサービス「IIJ Smart POSサービス」を提供開始)。
街のオープンスペースがWi-Fiサービスのエリアに。KDDIとワイヤ・アンド・ワイヤレスは、西新宿エリアで利用できる公衆Wi-Fi(無線LAN)サービスを開始したと発表した。公衆Wi-Fiサービスが利用できるようになったのは、西新宿の高層ビル街の一角でオープンスペースでもインターネットに接続できるようになる。KDDIの「au Wi-Fi SPOT」、ワイヤ・アンド・ワイヤレスの「Wi2 300」契約者が利用できるほか、1時間に限り利用できる「ゲストサービス」も提供する(関連記事:KDDI、西新宿のオープンスペースで公衆Wi-Fiサービス)。
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