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緊急特集:ファーストサーバ社データ消失事故の教訓

2012.07.06

Updated by Satoshi Watanabe on July 6, 2012, 19:33 pm JST

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(CC) image by IntelFreePress
6月下旬に発生したファーストサーバ社による大規模データ消失事故は、「組織の生命線ともいえるシステムやデータを外部に預ける」ことのリスクと課題を顕在化させました。この事故を踏まえて、「我々はこれからクラウドサービスといかにつきあえばよいのか」を考える、緊急特集企画(全5回予定)をお届けします。(編集部)

特定事業者の障害を越えた重大トラブル

ファーストサーバ社による大規模なデータ消失問題が発生してから2週間ほど経つ。トラブルに見舞われた各社への対応窓口の整備、原因については中間報告を出しつつも、第三者委員会を設置しての調査を始めるなど、当初の騒動についてはひとまず収まったように見える。メディアの報道も一通りの事態整理が終わりニュースバリューを失ったためか、頻繁に目にすることは無くなった。

インターネット関連事業者でもトップクラスの事業信用を持つYahoo!社の直接子会社ということもあり、本件は大きな衝撃と影響を残した。潜在的な被害の広さ、事の重さの割には起きている事態がはっきりせず、一般ユーザーから「結局どういうことなの」と疑問を投げかける声も少なからずあり、業界の中で閉じて済ませて良いトラブルの枠を超えた事案であるとの印象を受けている。

実際、内閣官房情報セキュリティセンター(NISC)が中央省庁に対して、クラウドサービスやホスティングサービスなどの運用状況について再度確認の上、同種のリスクを抱えていないか安全確認をするよう注意喚起を促した文章が出されるなど、やや異例の動きを見せた。単純に特定の事業者においてシステム運用トラブルが起きた以上の意味合いを同センターが見出していると解釈される。

「バックアップは取りましょう」では解決にならない

本件を利用者の立場から解釈すると、一般的なITプロフェッショナルの意見としては「まぁ、バックアップは取ろうね」との声がまず出てくる。筆者も基本は同感であり、正論である。

しかし、スマートフォンも似た問題構図を抱えているのだが、一般ユーザーが技術のことを気にすることなく、良い意味でカジュアルに使えるサービスがクラウド、あるいは各種のASPサービスであるの趣旨を考えると、「技術対応をしっかりしよう」という解決アプローチを提示して済ませてしまうのは話がねじ曲がっておりしっくり来ない。そのような心配をしなくても情報サービスを利用できるのが売り文句の根っこにあったはずである。

このあたりのねじれの整理も含めて、クラウドサービスとの付き合い方を如何にしていくと良いものか、良い機会なので本件を題材としつつ、整理してみるシリーズを立ち上げることとした。

ファーストサーバ社の引き起こした本事案がどのように推移収束していくかの報道はこれからも適時各所で為されることだろう。よって、本シリーズは事態の推移そのものは対象とせず、約款解釈や株主代表訴訟などの経営責任との関連などユーザー企業が本件を教訓としてどのような対策を打っていけばいいのかの経営課題との目線を大事にして取り上げたい。

※お詫び
当初掲載しておりましたイメージ画像につきまして、事実誤認の可能性があるとのご指摘を受け、差替えをいたしました。詳しい経緯は「編集部からのお知らせ」にてご説明しております。皆様にはご迷惑をおかけいたしましたことをお詫び致します。

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渡辺 聡(わたなべ・さとし)

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任助教。神戸大学法学部(行政学・法社会学専攻)卒。NECソフトを経てインターネットビジネスの世界へ。独立後、個人事務所を設立を経て、08年にクロサカタツヤ氏と共同で株式会社企(くわだて)を設立。大手事業会社からインターネット企業までの事業戦略、経営の立て直し、テクノロジー課題の解決、マーケティング全般の見直しなど幅広くコンサルティングサービスを提供している。主な著書・監修に『マーケティング2.0』『アルファブロガー』(ともに翔泳社)など多数。