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メダリストは外国人

2012.08.06

Updated by Mayumi Tanimoto on August 6, 2012, 07:42 am JST

イギリスではオリンピックの1万メートルで金メダルを取ったMo Farah
さんが話題を集めております。陸上競技でイギリスが金メダルを取ったというのだけが理由ではなく、この方が、イギリス生まれのイギリス人ではないという点です。

この方、ソマリア生まれで8歳の時にイギリスに移民し、学校で陸上競技の才能を見いだされメダリストになりました。ソマリア生まれなのでイスラム教徒です。

ソマリアといえば、毎年難民がイギリスや他の先進国で流出している所であります。実質的な無政府状態のため、生活に困った漁民が海賊化し、時々ヨットでお気楽に旅行しているイギリス人や欧州人お金持ちが誘拐されたりしています。

イギリスは植民地を持っていた元大帝国で、世界中を引っ掻き回してきましたので、毎年3500人ぐらいの難民を受け入れています。(申請者は1万7千人ぐらい)ソマリアからイギリスにやってくる方も少なくなく、現在10万人ほどのソマリア人がイギリス在住です。この方、イギリスにやってきた難民や外国人の「成功事例」として、テレビや雑誌に取り上げられることが多いです。

オリンピック前には、Daily Mailが Plastic Brits
なるキャンペーンを繰り広げました。オリンピックのイギリスチーム542人のうち約11%にあたる60人が外国生まれなので「オリンピックチームって偽イギリス人ばっかりじゃない?」と議論になっているわけです。

三段跳び選手の Yamile Aldama さんはキューバ人、アマチュアレスラーの Olga Butkevych さんはウクライナ人ですが、二人ともオリンピック直前にイギリス国籍を取得。自転車のトライアル競技で金メダルを取った上、今年のツールドフランスの優勝者である Bradley Wiggins さんはベルギー生まれでお父さんはオーストラリア人であります。

イギリスチームは日本よりもメダルの数が多く、あらゆる分野でやる気がない割には頑張っております。外国生まれの選手の数がイギリスチームの成績に貢献しているのかどうかはわかりませんが(ワタクシはスポーツは詳しくないので)、イギリスの多文化化は、スポーツの世界でもイギリスに刺激を与えているといえるのではないでしょうか。

これはスポーツに限らず、ビジネスの世界でも同じであります。特にロンドンの金融業界や通信業界、携帯電話業界、ネットビジネス業界は外国人ばかりであります。

人を採用する時に、何人か、性別は何か、ではなく「あなたって何ができるのかしら?実績は何?」とスキルベースで採用するので、結果さえ出せるなら、何人でもいい訳です。従って、ワタクシが在籍するITや通信の世界では、管理職や幹部が外国人、経営者が外国人というのがちっとも珍しくありません。

ちなみに国際展開や、海外拠点の運営、海外事情調査やマーケやるには外国人やその二世や三世、ハーフの方などを雇います。現地語ができるし、現地事情を深く理解しています。翻訳いりません。ですからかなり精度の高い仕事が高速で可能な訳です。

人を捜してくるにも、わざわざ外国に行く必要ありません。イギリス国内に多様な人がいるので、国内で調達が可能な訳です。これってビジネスの高速展開にすごく有利です。

日本はいまだに外国人社員をいれたらどういう問題がある、社内公用語を英語にすべきかどうかなんてことで揉めてますが、いまだに石器時代やってんですか?という感じですね。

イギリス人の多くは外国人選手が活躍することに特に違和感はないようです。Twitterユーザの反応を見てみましょう。

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先日オリンピックの開会式で「この開会式って多文化主義のゴミ!」とTwitterで全世界に発信してしまったイギリス国会議員のAdrian Burley 様(@AidanBurley)にとって大変な皮肉となってしまったようです。このtweetの件で、スイスの某所でナチの格好でスタッグパーティーにでていたことがばれてしまい政務秘書官を首になった件がぶり返しており、保守党のイメージがますます悪くなるという悲惨なことになっております。

この方、ちょっとネットの使い方がよくわかっていないようです。33歳と若くオクスフォードをでておりますが、政治活動が忙しすぎるのかもしれません。

ワタクシにも毎日のように「俺は高学歴で一流企業勤務!お前はクソ!師ね!謝れ!!」という怪電波tweetが飛んでくるのですが、どうも学歴とか仕事がすごいというのと、ネットの使い方の理解というのには、必ずしも相関性がないようでありますね。(Twitterでも個人情報特定は簡単なのですが、その東大で一流企業の方は暴言垂れ流しでいいんでしょうかね)

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ちなみにスタッグパーティーとは結婚式の直前に独身の男性が集まって、外国に行って飲んだくれて立ちション便をしたり(なぜかイギリスの酔っぱらいはすぐに外で放尿したがるのであります。特に外国で)、このようにナチの扮装でばか騒ぎをするという行事でありまして、イギリス国内でもこの集団を見かけることがあるのでございます。

そういえばこの国の某王子様もパーティーでナチの扮装をしてしまって、えらくたたかれたことがございました。この国のやんごとなき方々や金持ちの方々はこんな調子な訳です。

まあこれって日本だったら、やんごとなき方々とか、東大でている有名な政治家が、戦時中の特高警察のコスプレしてばか騒ぎするというとんでもない状況なわけですね。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。