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通信産業の裏を読むには地政学を学べ

2012.09.12

Updated by Mayumi Tanimoto on September 12, 2012, 07:16 am JST

イギリスとフランスは永遠のライバルでございます。イギリス人はフランス人を「このニンニク野郎!」と罵倒し(注:フランス人はニンニク入り料理が大好きですがイギリスではあまりニンニクを使いません)、フランス人は「このイギリスの豚野郎!お前の飯は茶色い汁がかかっていてまるで豚飯だ!」(注:イギリスでは焼いた物にグレービーという茶色いタレをドバドバかけて食べるのです)と罵倒いたします。

さて、この両国、通信業界においても、100年戦争真っ青の逃走を繰り広げておりますが、それは国際展開に関しても同じでございます。100年ほど前、両国はまだ各国に植民地をもっており、「ここ俺のだもんね!」と中東やアフリカや北米を「俺の物」にしておりました。しかし、両国の通信事業者が展開している国を見ますと、21世紀の今日も、やっていることは変わらないなあ、ということがわかります。

例えば、イギリスを代表するVodafoneが国際展開している国は、大英帝国の旧植民地が中心です。フランスのOrangeの場合も、はやり、フランスの旧植民地が中心になっています。

このように両者がサービス展開する国々においては、現地のエリートは英語もしくはフランス語で教育を受け、お金があったり優秀な人はイギリスやフランス、北米などで教育を受けます。そして、現地で就職してVodafoneやOrangeに就職して海外向けサービスに従事したり、母国に戻って「優秀な植民地官僚」として旧宗主国の会社が儲かる様にせっせと働いているわけです。

つまり、通信業界であっても、国々の力関係というのは、100年ぐらい前とあまり変わっていないわけです。イギリスとフランスは、自国だけではなく海外を舞台に闘争を繰り広げ、両国に支配されて来た国というのは、一応は独立国ではあるわけですが、宗主国との力関係はほとんど変わっていない、というわけです。

通信事業者がどのような方向に進んでいくか、国際展開はどうなのか、現地エリートや官庁と旧宗主国の誰が繋がっているか、というのを読み解くにあたっては、歴史学、政治経済学、地政学の理解が重要になってくるわけです。

日本の通信事業者やメーカーが中東、南米、アフリカ、欧州、北米でサービス展開するにあたって不利なのは、イギリスやフランスの様に、植民地という遺産を介したつながりや知識の蓄積がない、という点であります。現地の人は日本では教育を受けませんし、日本に親戚や知人がいるということはまれですので、「優秀な植民地官僚」を雇うのにあたり不利になります。言語の障壁もあります。

しかし、一方で、日本の様に植民地という遺産がない韓国や中国の事業者は、アフリカインドに進出して現地に食い込んでいたりします。韓国や中国の事業者の動きには参考になる点もあるかもしれません。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。