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実は効率の悪い日本の働き方

2015.02.11

Updated by Mayumi Tanimoto on February 11, 2015, 07:48 am JST

日本と欧州の違いの一つにサービス提供のあり方というものがあります。

このブログでも何回か書いていますが、基本的に欧州ではサービス提供側と顧客が対等です。サービスというのは支払われた対価に沿って提供される労働にすぎず、商取引に過ぎません。安ければ安いなりのサービスであり、高ければ素晴らしいサービスを受けることが可能です。

しかし日本の場合は、サービス提供側と顧客の立場は取引関係にはなく従属関係にあります。サービス提供者は対価以上の労働を提供するのが当たり前だと思い込んでおり、また顧客側も、支払った以上のサービスを要求するのが当たり前です。

サービス提供側は対価以上のサービスを提供しなければという脅迫概念にとらわれているので、実は顧客は期待していない様なサービスも提供していることもあります。

例えばレジで物の値段を復唱する、分業制にせず各自が幅広いサービスを担当する、顧客の購入した物を勝手に移動する、頼んでいないのに何か提案してくる、顧客が記入すべき申込書に担当者が記入する、などです。

結果何が発生しているかというと、壮大なる無駄です。

顧客が頼んでもいないサービスや「おもてなし」をしてしまうために、サービスのプロセシングタイムやコストがかかり、待ち時間が長かったり、包括的なサービス品質は実は高くなかったりします。例えば日本だとスーパーや服屋の清算、金融サービスの申し込み、通信サービスの変更、官公庁のサービスは、ものによっては欧州よりも遥かに手間と時間がかかることがあります。間違いはあまりないのですが、無駄なプロセスや「おもてなし」があまりにも多いのです。

欧州の方はサービスが悪いというのは良く言われることです。担当者の態度が横柄だったり気が利かなかったり間違いが多かったりします。日本の場合は、期待する返答が迅速に得られたり、担当者個々は熱心に対応してくれますが、プロセスの設計が非効率的だったり、間に無駄な「おもてなし」が含まれるために、期待される結果にたどり着くには、実は欧州よりも時間がかかったりすることがあります。

大変不思議なのは、プロセス改善や効率化は日本のお家芸であり、その骨子を作り上げたのは日本です。しかし、サービス業やIT業界では、オペレーションの現場をみていると、欧州の方がプロセス改善や効率化の理論を真面目に守っており、日本の方は根本的な設計を見直さず、ルールを無視して現場の力技で何とかしているというのを見かけます。

些末な部分には注力するが、根本的な設計や無駄を見直さないという矛盾が蔓延しているのが、日本が停滞している原因の一つなのではないでしょうか。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。