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体験型ゲームの提供や国際会計基準対応にも照準──アプリプラットフォーム「aima」の新戦略とは

2012.09.25

Updated by Naohisa Iwamoto on September 25, 2012, 17:30 pm JST

Android向けの独自のマーケット「Tapnow」や、動画検索サービス「Woopie」(ウーピー)を提供するACCESSPORT。WoopieはYahoo! JAPANなどのポータルで動画検索エンジンとして使われ、日本のWebサービスを支える存在だ。そのACCESSPORTが力を入れているのがソーシャルアプリのプラットフォーム「aima」(アイマ)だ。パソコンやスマートフォンユーザーにゲームなどのエンターテインメント系のコンテンツを提供するプラットフォームである。ところが、その展開には体験型ゲームの提供や国際会計基準の「IFRS」への対応など、特徴的なキーワードが目に付く。ACCESSPORTでゲームプラットフォーム事業部を統括する藤原一成部長に、事業の目指すところを尋ねた。

ACCESSPORTは2006年に設立され、動画検索エンジン「Woopie」の提供から事業を開始した。現在までに独自のAndroidマーケット「Tapnow」やソーシャルアプリプラットフォーム「aima」などを提供する。ACCESSPORTの名前を直接は知らなくても、Yahoo!JapanやBIGLOBEの動画検索エンジンを提供しているとなると、どこかでご縁があるユーザーは少なくないだろう。それでは、ソーシャルアプリプラットフォームのaimaは、ACCESSPORTの中でどのようにして生まれてきたのだろうか。

▼ACCESSPORT ゲームプラットフォーム事業部の藤原一成部長
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ACCESSPORT ゲームプラットフォーム事業部部長を務める藤原一成氏は、2009年ごろを振り返る。「動画検索サービスWoopieには、当時で600万を超える登録ユーザーがありました。このユーザー層を使って新しいサービスを展開しようというのが、発想の始まりでした。キーワードは『ライトエンターテインメント』。ちょっとした時間に動画を見て楽しむように、すき間の時間に繰り返し楽しんでもらえるサービスを提供しようと考えました」。まずはWoopieのユーザーに対して、新しいサービスを提供することを念頭に置いたというのだ。

独自サービスを断念しアライアンスへ

そのころ、mixiのオープン化やソーシャルゲームの盛り上がりといったトレンドがあった。中国では農場経営を楽しむソーシャルゲーム「農場パラダイス」の人気が高まっていた。「そうした中で、Woopieのユーザーに対してソーシャルゲームを提供しよう、という方向性が見えてきました。動画検索サービスのWoopieに、ゲームが動くアプリケーション基盤のシステムと、コミュニケーションができるSNS機能、課金システムなどを付け加えて新サービスを提供しようと考えました」(藤原氏)。当初はWoopieの中でのソーシャルゲームのプラットフォームを用意する計画だった。

システムの構築に走りながら、ACCESSPORTではソーシャルゲームのコンテンツ集めを始めた。しかし、ここには高いハードルがあった。同社がSAPと呼ぶソーシャルゲームのアプリケーションプロバイダーが、新サービスに見向いてくれなかったのだ。藤原氏はこう語る。「当時、Woopieには600万のユーザーがありました。当時のグリーやモバゲー、mixiなどが1000万〜1500万ユーザーぐらいのころの600万ユーザーです。しかし、Woopieのユーザーは動画を楽しむユーザーではあっても、グリーなどのユーザーのようにソーシャルゲームが目的ではありません。SAPにユーザー基盤が弱いと二の足を踏まれてしまったのです」。

とは言え、すでにシステム構築は進めている。なんとか事業を軌道に乗せなければならない。そこで新しい発想が生まれてくる。「Woopieだけでダメなら、ほかのメディアと共同で利用するプラットフォームを作ればいいのではないかと気付きました。そこでWoopieを利用しているポータルサイト運営企業などに声をかけて、アライアンスとしてプラットフォーム事業を立ち上げることにしました。ACCESSPORTはその共同事業の事務局を引き受けるような形です」(藤原氏)。2010年7月、ACCESSPORTと、ECナビ、NECビッグローブなど10社は、共同利用するプラットフォームとして、「aima」(Alliance of Internet Media for Applications)を立ち上げた。aimaの読み「あいま」には、「合い間の時間を楽しんで欲しい」という意味合いも込められている。

aimaは、アプリを提供するSAPと、ポータルサイトやポイントサイトなどのメディアの間をつなぐ共同の場となる。メディアが共同で利用することで、当初から4,000万ユーザーといった大規模の母集団へのアプローチ経路を確保でき、SAPがアプリ提供に興味を示しやすくなる。一方で、各メディアには独自性を担保する。メディアごとのIDやパスワードを使えるようにすることで、それぞれのメディアのユーザーはaimaを利用していることを意識せずにコンテンツを楽しめる。決済も、それぞれのメディアのサービスに対応できるように、クレジットカードやWebマネー、各サービスのポイントの利用などの機能を用意した。インターネットサービス事業者(ISP)の場合は、月額回線料金とまとめて決済することもできる。

▼ポータルサイトやポイントサイトなどの各種のメディアが共同で利用できるプラットフォーム「aima」。アプリのプロバイダー(SAP)は一括して各メディアにコンテンツを提供できる。(※画像をクリックして拡大)
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収益モデルは、売上の70%をSAPが取り、残る利益をaimaと各メディアが折半する形となる。「ACCESSPORTの名前は表に出ませんから、ユーザーには認知されにくいのですが、名前よりも実利を取る事業だと考えています。これまでにパソコン向けで50タイトルのソーシャルゲームを提供し、2012年7月からはスマートフォン向けのゲームも提供を開始しました。スマートフォン向けも、提供中タイトルも含め、今秋までに計約10タイトルを提供予定です」(藤原氏)。SAPは、ゲームに触れるユーザーを増やして収益増につなげられる。メディアは、設備やコンテンツに直接投資することなく、新しいソーシャルゲームのサービスを提供できる。ユーザーは、利用しているポータルサイトなどで新しい楽しみ方を見つけることができる。どのプレーヤーも、リスクを最小にしながらメリットを得る可能性がある新しいモデルが構築できたのだ。

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ゲームをしないユーザーにも楽しんでもらうゲームとは

2011年1月から本格稼働したaimaは、順調に成長を続けている。当初10社から始まった参加も、2012年夏には80社以上に膨らんだ。「OCN」「So-net」「Ponta」「千趣会」「永久不滅.com」など、名だたるサービスの運営企業がアライアンスに参加し、ソーシャルゲームアプリを提供している。ユーザーは、aimaを利用しているとは知らずに、このプラットフォームを使ってゲームを楽しんでいるのだ。

aimaで提供しているアプリには、農場ゲームの「農場パラダイス」、西遊記のロールプレイングゲーム「ブラウザ西遊記」、ラブストーリーを体験できる「ラブコレ!」などがある。スマートフォン向けには、ギルドを発展させる「MIDLANDSTORY」、日本一のキャバ嬢を目指す「あしたのキャバクイーン」などが提供されている。これらをaimaに参加する各メディアがサイト上でゲームコンテンツとして提供している。

▼aimaで提供しているソーシャルゲームなどのコンテンツ。スマートフォン向けのコンテンツの提供も始めた。(※画像をクリックして拡大)
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運営していくうちに、あることがわかってきた。それは、ソーシャルゲームを利用するユーザーの比率だ。藤原氏は、「統計を取ってみると、ソーシャルゲームで遊ぶユーザーは、各メディアの登録ユーザーのうち8〜10%で頭打ちになることがわかってきました。ソーシャルゲーム専門のサイトではなく、一般のユーザーが集まる場では、残りの90%のユーザーはゲームのエリアにすら来てもらえていないのが現状です」と、1つの限界を意識した。

ゲームを楽しんでもらう比率をもっと増やすには、良いゲームを作るといった施策では対応できない。元々「ゲーム」をしない人に、ゲームのエリアに来てもらう必要がある。そこで残りの90%の人を取り込むコンテンツとして考えたものが2種類ある。「1つは、1分以内といった短時間で楽しめるカジュアルゲーム。もう1つが、物販などと連携した体験型のゲームです」(藤原氏)。これらには、これまでゲームそのものに興味を持たなかった人たちをフックする仕掛けがある。

まず、カジュアルゲームでは、抽選などと組み合わせて「お得感」をアピールする。ゲームそのものは、宝箱やダーツ、おみくじ、コインゲームといったシンプルなもの。そこに、ゲームをクリアすると抽選に応募できる権利を付加したり、コインゲームでアマゾンギフト券をもらえるコインが登場したりといった、仕掛けを組み込む。時間的には、ほんの少し。でも1日1回の抽選を楽しめるようなリピート性の高いゲームを提供していく。楽しんだ上に、抽選で何かがもらえるといったメリットがあれば、「ゲームそのものを楽しむ」こととは違う視点で、カジュアルゲームを楽しむユーザーが増える可能性がある。

もう1つは、ゲームと物販を通じて、疑似体験を提供する試みだ。ここに考えが至るには、1つの経験があった。それは、aimaのユーザーに提供したキャンペーンでのこと。aimaを利用しているある企業サイト内で、宅配ラーメンの試食を無償提供するキャンペーンを実施したが、当初、ユーザーの反応が芳しくなくaimaのゲーム内で何か施策が実施できないかという相談があった。そこで、農場ゲームの「農場パラダイス」を使って、その中でラーメンを作ったユーザーにだけラーメンが届くようにキャンペーンの内容を変更した。すると、障壁が高くなったにもかかわらず、応募は2倍にもなったという。「すでに、モノが欲しい時代は終わったのかもしれません。体験やそれに付随する『ごほうび感』が重要なのだと気付いたのです。そこで、物販もただモノを売るのではなく、ゲームの成果としてモノが手に入るといった『体験』を同時に提供しようと考えました」(藤原氏)。

201209251730-4.jpg例えば、と藤原氏は続ける。「準備中なのは、農場ゲーム内で農作物を育てると、育てた作物が自宅に届くといったゲームです。ゲーム内で農作物を育てて収穫できるようにするには、肥料や防虫剤などの有料アイテムが必要になります。そして、その有料アイテムの合計額は、作物の市販価格よりも安く設定する予定です。ACCESSPORTが農家と直接契約することで、中間マージンをカットして市販価格よりも安く農作物を販売する。これは実際には、ユーザーからすると市場より安く品物を購入することと同じなのです。でも、ただ販売するのではなくて、ゲームで一生懸命水をやり、肥料をやり、虫がつかないようにして育てた結果として、実際の収穫物を手にできる体験を提供するのです」。これは、ゲームでありながら、買い物でもある。日々食べる食材を購入する手段の1つとして、ゲームで自ら農作物を生産して入手する方法が加わるのだ。だから、ターゲットユーザーはゲームユーザーだけでなく、多くの消費者にまで広がる。

さらなる思慮もある。「例えば、パイナップルがどのように実っているか、知らずに食べている人は多いと思います。ゲームを通して自分で生育するプロセスに参加すれば、どのように育っていくのかを体験できます。さらに、ピーマンが嫌いなお子さんでも、自分たちで育てたピーマンなら食べてみようと思うでしょう。体験型ゲームは、こうした食育にもつながると考えています」と藤原氏。そして、ソーシャルゲームの側面も忘れてはいない。その1つが、高価な肥料を使うとより多くの収穫が得られるようなプログラムだ。そして、たくさん収穫できた農作物は、ソーシャルグラフ内の知人に実際に送り届けることができる。ネット発の"おすそ分け"だ。リアルとバーチャルの融合がここにはある。

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IFRS対策としても注目

もう1つ、ゲームを配信するプラットフォームとしては異色のキーワードが登場する。それはIFRS(International Financial Reporting Standards)、すなわち国際会計基準のことだ。ゲームと会計基準の間には開きがあるように感じるのだが...。

藤原氏はこう言う。「IFRSは日本でも2015年から適用が開始されます。こうなると、これまでの日本基準とは変わってくる部分があります。その1つが、さまざまな企業などが提供している『ポイント』です。会計上のポイントの計上タイミングが変わるのです。これまで、日本基準では、ポイント還元分はすぐに売上として計上できるのですが、国際会計基準ではポイントは使われないと負債のままの扱いになります。国際会計基準に移行すると、事業者から見たらポイントは早く消費してもらいたい存在に変わるのです。そこで、少額のポイントでも気軽に使ってもらえて、なおかつ原価が低い『ゲーム』に白羽の矢が立ったのです」。

▼会計基準がIFRSに移行する影響。消費されていないポイント付与分が売上から負債に変わるため、ポイントの消費促進のための仕組みが必要になる。
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ポイントの利用促進にゲームアプリを活用できれば、商品購入などに使った後の端数のポイントや少しだけ貯まったポイントでも、ユーザーに無駄なく使ってもらえる。そうすることで、会計上の負債を減らして売上に移行できるというわけだ。10%といったポイントが売上から負債になったら、その分だけ利益が減少してしまう。ゲームアプリで少額のポイントの消費を促進できれば、IFRS対策になるというわけだ。またユーザー側も、ポイントで購入するのならば有料ゲームを利用する障壁も下がり、結果としてゲームのリピーターを増やすことにもつながる可能性は高い。

aimaで提供するサービスが、IFRS対策になるのではという話はサービス開始当初からしていたという。現状ではネット上のポイントサービスとの連携が主流のaimaだが、クレディセゾンの永久不滅ポイントや、ローソンなどで使えるPontaとの連携も始まっている。「オンラインのポイントは、ポイントの市場の1%程度です。リアルのポイントとの連携が進むと、aimaのマーケットはぐっと大きくなると考えています」(藤原氏)。

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産直の農産物の販売やリアルの店舗で使えるポイントとの連携。ソーシャルアプリなどのコンテンツを、ゲーム好きの人たち以外にも受け入れてもらう方策を練っていったaimaが行き着くところは、リアルとオンラインの垣根が低くなった未来だ。リアルの体験とネットの利便性や楽しさを融合させることで、ゲームの価値や存在意義を高め、さらに多くの人たちに「ゲーム」を楽しんでもらう好循環を生む。そんなプラットフォームの実現をaimaに託せるのかもしれない。

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。